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第2章 現実と仮想現実
第195話 触りたいの?
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「そ、そろそろ行こうか」
「ん」
時間にして数十秒。
しかし、抱きつかれたまま、両腕の行き場がなく、彷徨わせていた僕からすれば、数分以上の時間が経っているように感じられた。
「もう暗くなっちゃったね」
「好都合」
「紛れやすくなるから?」
「そう」
普段は夜の時間に町の外を歩くことは少ない。
僕もたしか……大蜘蛛と戦った時、あの1日だけのはずだ。
理由は大きく2つあって、1つは魔物の動きが活性化すること。
そして、もう1つは、視界が悪くなることだ。
魔物の活性化に関しては、今回はそんなに関係がない。
むしろ関係しているのは視界が悪くなる方で、これが結構厄介なんだ。
僕らみたいに、向かう方向が定まってるのなら、足下だけ見えてれば特に問題はなかったりする。
けれど、僕らを探す相手からすると、視界が悪くなるのは、中々に難しい。
視界を良くしようと、灯りを持つのも手なんだけど……そのために片手が塞がれたり……。
とにかく、結構厄介。
「止まって」
そんなことを考えてるうちに、拠点近くまで戻ってきていたらしい。
そのまま進もうとしていた僕を、ラミナさんが腕で止めてくれる。
僕の目には、まだ人影も見えないけど、ラミナさんには何か感じるモノがあったんだろうか……?
「ここから、走って5分くらい」
「拠点まで?」
「そう。だから、もう少し待つ」
「……なるほど。了解」
風向きも、幸いなことに拠点の方が風上だ。
だから、ここで隠れていても、臭いで気付かれる心配はそんなに無い。
空にはもう星が煌々と輝いていて、太陽の光はほとんどない。
けれど、あと10分もすれば……もっと暗くなるはず。
ラミナさんは、多分そのためにここで待つことにしたんだろう……。
「……」
チラリと、横に座るラミナさんへ視線を向ける。
青色の髪に青色の瞳、ツリ目でも、タレ目でもない、大きい目……だと思う。
断言出来ないのは、いつも無表情で、ぱっちりと言うよりも、ジトッとした感じに見えるからだ。
それでも、時折見せてくれる笑顔や、驚いた時の顔なんかは、ハスタさんとよく似ていて、やっぱり双子なんだなぁ……って感じがする。
そのまま視線を下ろしていけば、白くて細い首と、そこから繋がる鎖骨……そして、胸……。
胸のサイズは感触的に、ハスタさんの方が大きいみたいだ。
背中に当たる感じだけでも結構わかるのが、なんとも言えないけど……。
大きさ的には、ハスタさん、ラミナさん、僕の順に大きい……かな……?
「いや、別に僕はいらないけど」
「……?」
「なんでもないよ」
「そう。……アキ、触りたいの?」
「……いえ、別に」
「……そう」
僕の視線に、何を見ていたのか分かったのか、ラミナさんが僕の方へと向き直り、手を取る。
そして、その手を自らの手の中で弄りながら、笑った。
「……ッ、ら、ラミナさん! け、結構暗くなってきたよ!」
なんだかいつもと違う彼女に、少し緊張しながら、僕は慌てて話題を逸らす。
実際、隠れ始めた時よりは、だいぶ暗くなっていて、数歩先も見えにくくなってきていた。
「行く」
「う、うん。……ここからまっすぐ走ったらいいんだよね?」
「そう。でも気を付けて」
「ラミナさんもね」
「……ん」
彼女が頷いたのを見てから、僕らは音を立てないようにゆっくり立ち上がった。
そして、緊張をほぐすように、息を一度大きく吸って……駆け出した。
◇
駆け始めてからすぐに、人の声が聞こえ始めた。
最初は微かに耳に入る程度だった声が、次第に大きくなり……今となっては、前からも後ろからも聞こえるほど、僕らは集団の中に入って行っていた。
「おい! 走り抜けてくやつがいるぞ!」
「あっぶねぇなぁ!」
「拠点のやつらの仲間か? 誰か捕まえろよ!」
「暗くて見えねぇよ! あと、なんか臭ぇ!」
近くを走り抜けていく僕たちに気付いたのか、攻めあぐねている状況に愚痴っていた周囲の声は、だんだんと僕らを捕まえる方向に変わっていく。
しかし、夜闇で見えない状況に加え、僕らは走って抜けている。
気付いた時には、すでに離れて行っているという状態だ。
「……このまま行けば」
「……ん」
すでに数分は走った。
単純距離であれば5分ほどだったけど、人の間を抜けていくためか、少し時間がかかってる。
だけど、もう少し……もう少しで拠点に帰れる!
そう思った瞬間……急に視界が明るくなった。
「……は?」
自分の前に伸びる影。
何かで、後ろから照らされてる……?
「一体、なんで……?」
松明や、魔法程度の光じゃない……。
もっと……まるで太陽みたいな光……。
そう思って、後ろを振り返った僕の目に――
「なんだ、アレ……」
天に昇る、赤い光の柱が見えた。
「ん」
時間にして数十秒。
しかし、抱きつかれたまま、両腕の行き場がなく、彷徨わせていた僕からすれば、数分以上の時間が経っているように感じられた。
「もう暗くなっちゃったね」
「好都合」
「紛れやすくなるから?」
「そう」
普段は夜の時間に町の外を歩くことは少ない。
僕もたしか……大蜘蛛と戦った時、あの1日だけのはずだ。
理由は大きく2つあって、1つは魔物の動きが活性化すること。
そして、もう1つは、視界が悪くなることだ。
魔物の活性化に関しては、今回はそんなに関係がない。
むしろ関係しているのは視界が悪くなる方で、これが結構厄介なんだ。
僕らみたいに、向かう方向が定まってるのなら、足下だけ見えてれば特に問題はなかったりする。
けれど、僕らを探す相手からすると、視界が悪くなるのは、中々に難しい。
視界を良くしようと、灯りを持つのも手なんだけど……そのために片手が塞がれたり……。
とにかく、結構厄介。
「止まって」
そんなことを考えてるうちに、拠点近くまで戻ってきていたらしい。
そのまま進もうとしていた僕を、ラミナさんが腕で止めてくれる。
僕の目には、まだ人影も見えないけど、ラミナさんには何か感じるモノがあったんだろうか……?
「ここから、走って5分くらい」
「拠点まで?」
「そう。だから、もう少し待つ」
「……なるほど。了解」
風向きも、幸いなことに拠点の方が風上だ。
だから、ここで隠れていても、臭いで気付かれる心配はそんなに無い。
空にはもう星が煌々と輝いていて、太陽の光はほとんどない。
けれど、あと10分もすれば……もっと暗くなるはず。
ラミナさんは、多分そのためにここで待つことにしたんだろう……。
「……」
チラリと、横に座るラミナさんへ視線を向ける。
青色の髪に青色の瞳、ツリ目でも、タレ目でもない、大きい目……だと思う。
断言出来ないのは、いつも無表情で、ぱっちりと言うよりも、ジトッとした感じに見えるからだ。
それでも、時折見せてくれる笑顔や、驚いた時の顔なんかは、ハスタさんとよく似ていて、やっぱり双子なんだなぁ……って感じがする。
そのまま視線を下ろしていけば、白くて細い首と、そこから繋がる鎖骨……そして、胸……。
胸のサイズは感触的に、ハスタさんの方が大きいみたいだ。
背中に当たる感じだけでも結構わかるのが、なんとも言えないけど……。
大きさ的には、ハスタさん、ラミナさん、僕の順に大きい……かな……?
「いや、別に僕はいらないけど」
「……?」
「なんでもないよ」
「そう。……アキ、触りたいの?」
「……いえ、別に」
「……そう」
僕の視線に、何を見ていたのか分かったのか、ラミナさんが僕の方へと向き直り、手を取る。
そして、その手を自らの手の中で弄りながら、笑った。
「……ッ、ら、ラミナさん! け、結構暗くなってきたよ!」
なんだかいつもと違う彼女に、少し緊張しながら、僕は慌てて話題を逸らす。
実際、隠れ始めた時よりは、だいぶ暗くなっていて、数歩先も見えにくくなってきていた。
「行く」
「う、うん。……ここからまっすぐ走ったらいいんだよね?」
「そう。でも気を付けて」
「ラミナさんもね」
「……ん」
彼女が頷いたのを見てから、僕らは音を立てないようにゆっくり立ち上がった。
そして、緊張をほぐすように、息を一度大きく吸って……駆け出した。
◇
駆け始めてからすぐに、人の声が聞こえ始めた。
最初は微かに耳に入る程度だった声が、次第に大きくなり……今となっては、前からも後ろからも聞こえるほど、僕らは集団の中に入って行っていた。
「おい! 走り抜けてくやつがいるぞ!」
「あっぶねぇなぁ!」
「拠点のやつらの仲間か? 誰か捕まえろよ!」
「暗くて見えねぇよ! あと、なんか臭ぇ!」
近くを走り抜けていく僕たちに気付いたのか、攻めあぐねている状況に愚痴っていた周囲の声は、だんだんと僕らを捕まえる方向に変わっていく。
しかし、夜闇で見えない状況に加え、僕らは走って抜けている。
気付いた時には、すでに離れて行っているという状態だ。
「……このまま行けば」
「……ん」
すでに数分は走った。
単純距離であれば5分ほどだったけど、人の間を抜けていくためか、少し時間がかかってる。
だけど、もう少し……もう少しで拠点に帰れる!
そう思った瞬間……急に視界が明るくなった。
「……は?」
自分の前に伸びる影。
何かで、後ろから照らされてる……?
「一体、なんで……?」
松明や、魔法程度の光じゃない……。
もっと……まるで太陽みたいな光……。
そう思って、後ろを振り返った僕の目に――
「なんだ、アレ……」
天に昇る、赤い光の柱が見えた。
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