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第2章 現実と仮想現実

第182話 心配したぜ

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 今回の話は、トーマ視点となります。

――――――――――――――――

 ふっと、眠りから覚めるように、頭から手足へと感覚が戻る。
 少しだけ光が差し込む、半ば崩壊した家屋の中で、俺は布団代わりの土塊を剥いだ。

「こ、こは……?」

 声に出すことで、ようやく完全に意識が戻ったのか……痛みと共に、自意識的には数分前のことを思い出す。
 確か……PK共に対抗するべく、指示を出していた時、生産職ヤカタのやつに殴られ……その後どうにか逃げた先で身を潜め、アキの念話に気づいた瞬間……逃げ場を塞ぐように、ここが崩壊したんだ。
 俺としたことが……失態の繰り返し、だな。

「はっ……」

 声が乗るように、自然と息が漏れる。
 HPはそこまで残ってないが……死んでないだけマシだ。
 あいにく、回復はアキが持たせてくれた分、まるまる残ってる。
 ひとまず、身を起こして……。

「ッ!? 誰だ!」

 身を起こそうと腕に力を入れた直後、死角になっている暗闇の方から音が聞こえた。
 木片が動くような軽くて、乾いた音。
 風じゃない……少し意識を傾ければわかる。
 あそこには、誰かがいる、ことが。

「その声……! トーマ! 無事だったか!」
「――ッ!? ウォン!? どうしてここに!?」
「俺の仕事が早くに終わったからさ。急いで戻ってきたんだ。そうしたら、トーマ……お前が襲撃されたって聞いてさ。心配したぜ」
「……」

 俺に話しかけながら、崩れた家屋がまるで関係無いみたいに、軽々とウォンが近づいてくる。
 ……それにしても、心配した、か。

「ウォン。外はどうなってる」
「あぁ、酷いもんだぜ? ほとんどの建物が壊れて、ものによっちゃ燃えてさえもいる。こりゃ負けたかもな」
「……そうか」
「それよりトーマ、とりあえずお前のことだ。ひとまずコレでも飲んで回復しようぜ」

 そう言われながら差し出された瓶を口に咥え……飲もうと息を吸い込んだ瞬間。
 鋭い痛みと共に、俺の脳裏になぜかウォンが見えた。

「グ……!?」
「お、おい大丈夫か!」
「わ、悪い……」

 脳裏に浮かんだウォンが、笑っているような気がして……一瞬力が抜けてしまう。
 その結果、口に咥えていた瓶が落ち、俺から少し離れた所へと転がっていった。

「ったく、取ってくるからちょっと待ってろ」
「すまん」

 困ったような顔でウォンが離れていく。
 すまんな……心配かけて……。

「……? 心配……?」

 なんだ、なにか引っかかる……。
 ……心配した?
 ウォンが……俺を……?

「違うだろ……確か……あいつは……」

 ――トーマ、お前だから任せれるんだぜ。
 そう、俺に言ったはずだ。

「任せる……か」
「おーい、トーマ。中身は大丈夫そうだ。すぐ持って行く」
「いや、その必要は無いねぇ。それより、ひとつだけ聞きたいことがある」
「あん? なんだよ」

 ――こっちは任せたぜ。
 ――分かってる。あっちは俺らに任せろ。

「なぁ、お前……誰だ?」
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