採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥

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第2章 現実と仮想現実

第163話 見せたよね?

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「それじゃ、その流れでお願いします」
「あいよ! 任せときな!」

 木板を譲渡した後、細かな流れの確認を行い、ひとまず話し合いは終了。
 このあと、僕は木を伐採してどんどん材料を作ればいいってことだ。

「あぁ、そうそうアキさん」
「ん? なんです?」
「俺の同盟メンバーから聞いた話なんだが、ここの拠点以外を拠点にしてる集団がいるって話だ。PKの可能性もあっから、気を付けてくれぃ!」
「ふむ……」

 この拠点以外で……?
 確かに地図を見た限り、この島は森のエリアが広くて、身を隠しやすい……。

「アキ。狙いは初心者、かも」
「あぁ、なるほど」

 今回のイベントは、ラミナさん達みたいに、この間の第2生産版で開始した人も参加してる。
 つまり、戦闘に慣れてない初心者プレイヤーも多い。
 だから、PKプレイヤーはそういった人を狙えば、簡単にPKできるってことかな……。

「でも、そもそもPKって何が目的なの?」

 というか、PKっていうのがよくわかんないんだけど。
 いや、プレイヤーを殺すキルする人っていうのはわかるんだけど……。
 それが、なんのためにとか、なんで、とか知らないんだよね。

「あー、俺もよくは知らないんで……。人を相手にするってのが楽しいとかじゃねぇかな」
「すみません、私もあまり……」
「あー、いいですよ。詳しい人もいそうなんで、私の方で調べてみます」

 ……まぁ、トーマ君なら知ってそうだし。
 あと、フェンさんとかリュンさんとか。
 みんな僕よりも、ゲームの経験が多いみたいだしね……

「それじゃ、俺は現場に戻りやす! アキさん達もお気をつけて!」
「あ、はい。頑張ってください」
「ありがてぇ! その言葉だけでも、4日は寝ずに働けらぁ!」
「あ、あはは……」

 来たときと同じように大きな声で笑いながら、木山さんは作業場を出ていく。
 直後、外から「棟梁! お帰りなさい!」と声が響いてきたし、変な人ではあるけど、慕われてはいるのかな……。

「アキさん、少しいいですか?」

 話も終わり、作業に戻ろうとしたところで、緑の髪の女性――レニーさんが話しかけてくる。
 拠点の話は終わったと思うんだけど……?

「その、調薬チームの方でも増産体制に入ろうかと思っておりまして」
「調薬チーム……?」
「あ、アキさんを筆頭に据えた、調薬専門の生産グループです。別にパーティーを組む訳ではないのですが、調薬をメインに行っているプレイヤーを中心に、拠点のポーションなどの生産を重点的に行うグループです」
「……知らない間にリーダーにされてる」
「そこは、アキさんですから」

 何を当たり前のことを、と言わんばかりの表情で、レニーさんは言い切る。
 というか、僕も調薬ばっかりやってるわけじゃないんだけど……。
 採取も好きだから、伐採とかも行くし。

「あ、別にアキさんにずっと調薬して欲しいわけではないです。ただ、調薬のリーダーとしては、アキさんが良い、と一致したものですから……」
「そ、そう……。それで?」
「それでですね。増産体制に入りますが、サンプルとしてアキさんのポーション各種をひとつと、最下級ポーションでいいので、作ってるところをご見学させていただければ……」
「ん? 渡すのは構わないけど、作ってるところは前に一度見せたよね?」
「そうなんですが……。今回は、手順レシピを作成しようと思っておりまして、まずはアキさんのやり方を元に進めて、改良を加えていこうかと」

 なるほど……。
 レシピを作ることで、まだ最下級の良品が作れていない人にも作れるようになってもらうってことかな?
 あと、それ以外のポーションは『こういったポーションは作成できる』という見本にするのかも。
 実際、アイテムの説明文章には、大雑把に何が抑えられて、とか書いてあるし。

「わかりました。ただ、ちょっと待ってもらって良いですか? とりあえず、今作ってるお薬を瓶に入れてしまいたいので」
「はい、大丈夫です。その間に私も他のメンバーを召集したり、メモの準備をしておきますので」

 「では!」と、レニーさんは駆けるように僕の前から離れていく。
 見た目的には仕事ができる落ち着いてるお姉さんなだけに、ハスタさんと同じくらい勢いがあるから、なんだろう……変な感じ。
 いや、残念って意味じゃないよ!?
 ハスタさんも、残念な子ってわけじゃないよ!?

「アキ」
「はっ! ……片付けよっか」
「手伝う」

 ラミナさんに空瓶を押さえてもらい、鍋から完成したお薬を移し替える。
 目の前で青い髪が揺れる、いつもとは少し違う作業風景。
 そのことになんだか少しだけ……僕は寂しさを感じた。
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