採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥

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第2章 現実と仮想現実

第161話 ウッディーマウンテン

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 とりあえず窓のそばにお皿を置いて、薬草を干していく。
 ラミナさんが言うには、現実だと1週間とかかかるみたいなんだよね……。
 さすがに、そこに関してはゲームっぽく短くなってくれたら嬉しいけど。

「さてと……それじゃ、ささっとお薬を作ってしまおうかな!」
「手伝う」
「ん? 手伝ってくれる? それだったら、このお鍋に水を入れてもらえる?」

 僕のお願いに小さく頷いてから、彼女はお鍋を持って水を入れにいく。
 あー……こういう作業も、シルフがいてくれたら気を利かしてくれてたんだよねぇ……。
 知らない間に、結構依存しちゃってるかも。

「アキ、なんだか寂しそう」
「え? そう?」
「今も、昨日も」

 あー……そういえば、昨日もシルフのことを考えてた時に、声をかけられたんだっけ?
 ラミナさん、よく見てるなぁ……。
 本人はほとんど表情変わらないのに。

「ちょっとね。ライフを始めて、ずっと一緒だった友達がいたんだけど、イベントには参加できなかったみたいで」
「そう」
「うん。だから、少し寂しいのは寂しいかな。こうして、お薬を作るときも手伝ってくれてたからね」

 そう言いながらも、少し恥ずかしくて……つい笑いながら頬を指で掻いてしまう。
 シルフも寂しがってくれてるかな……。
 街で帰りを待ってくれてるかな?
 むしろ、彼女のことだから、繋がってる契約のパスを辿ってこっちに来たりして……。

「それはないか」
「……?」
「なんでもないよ。お水、ありがとうね」

 ラミナさんからお鍋を受け取り、火にかける。
 さっきお水を入れてもらってる間に薬草は切ったし、とりあえず沸くまで待つかな。
 そういえば、ハスタさんがいないけど……?

「ラミナさん。ハスタさんは? 一緒じゃないの?」
「姉さんは森」
「森……? あぁ、先に伐採場所に行ってるってこと?」
「そう」

 まぁ、ハスタさんの性格的に、お薬作ってるところとか見ても楽しくないだろうしね。
 それだったら、森にいって魔物倒したり、体動かしてる方が良いってなるかな……。

「あ」
「……?」
「そういえば今日……アルさん達も行ってるんだった」

 まぁ、オリオンさんがいるし、大丈夫だよね……?
 僕の方に念話も来てないし、きっと大丈夫。
 ……たぶん。

「っと、そろそろ薬草を入れないと……」

 切っておいた薬草を、ドバドバとお湯が跳ねない程度に入れていく。
 少ししたら灰汁が出るだろうし、お玉の準備をしてっと……。

「アキ」
「ん?」

 僕の隣で、ラミナさんが両手を差し出してくる。
 なにかを渡せってことかな……?
 でも、何を……?

「えっと?」
「まな板と包丁」
「あぁ、洗ってくれるの?」
「そう」

 小さく頷きながらも、変わらず両手を差し出してくるラミナさんに、まな板を渡し、包丁は作業台の上へと置いた。
 直接渡すのは危険だしね!
 たぶん彼女もそれはわかってるみたいで、特に異も唱えず包丁を掴み、水場へと持っていった。

「すごい手伝ってくれるけど……なんでだろ……」

 手伝ったところで、ラミナさんには特に利点もないはずなんだけど……。
 ただ待ってるのが悪い気がするのかな?
 まぁ、いいや。

「ほいほいっと」

 浮いてきた灰汁をお玉で集めて、空瓶の中に入れていく。
 おばちゃんの作業場みたいに、水場が近ければそのままぽいっと捨てちゃうんだけど……。
 さすがに、まだそこまで水も引けてないからね……。

「っと、そろそろ大丈夫かな」

 鍋の中身が、ほどよく緑色になったところで、火を切り、冷ましていく。
 この冷ます作業も、シルフがいれば風で冷ましてくれるんだけど……。
 今回は仕方ない、自然に冷めるのを待つしかないか。

「アキ」
「ん? あぁ、おかえり。洗ってくれてありがとう」
「大丈夫」

 洗ってきたものを作業台の上に置き、ラミナさんは1歩下がる。
 多分、さっき僕が包丁を渡したときと同じで、危険だから置いたってことなんだろうな。

「アキさーん! お待たせしましたー!」

 まな板と包丁をインベントリにしまって、空瓶を取り出していると、遠くから声が聞こえた。
 まぁ、多分さっき言ってた拠点の施設設営の件についてかな。
 作業的にも待たないといけないところだし、ちょうどいいタイミング。

「アキさん! 作業お疲れさまです! 先程お話しした、拠点の施設設営のリーダーを連れて来ました!」
「あ、ありがとうございます。えっと、ご存じ……ですかね? 私はアキです」
「おう! 噂は聞いてるぜい! 俺はウッディーマウンテン! 人呼んで、大工の木山きやまよ!」

 そう言って、作業服みたいな青一色の服を着たおじさんが、大きな声で笑った。
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