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第2章 現実と仮想現実
第156話 意味がある
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「アキさん、どうした! なにかあったか!?」
僕の声に反応して、アルさんだけじゃない……トーマ君やリアさん、カナエさんも僕のそばに来てくれた。
むしろ、アルさんよりもトーマ君の方が早くて、びっくりしたけど。
「アルさん。この葉、見覚えがありませんか?」
「葉、か? すまない、俺はそっちの方はあんまり……」
「よーく見てください。ほら、2人で森に行ったときに」
「森に……? そう言われると、どこかで……」
祭壇のように作られた石造りの床。
そこに掘られていた溝の中から、僕は1枚の葉をアルさんに見せる。
アルさんはちゃんと覚えていないかもしれないけど、これは以前一緒に見た素材なんだ。
「……浮木草」
「あぁ、そうだ! これはあの時、アキさんが俺に教えてくれた草の葉じゃないか!」
「思い出してもらえたみたいで良かった……。そうなんです、これ浮木草の葉なんですよ」
アルさんだけじゃなくて、他のみんなにも見せるように葉を動かす。
浮木草の葉……つまり、水に浮いた木片のような見た目をした葉。
水辺に自生する草だと言うことも合わせて、説明をしていく。
つまり、これが何を意味するかっていうと……。
「アルさん、地図を見せてもらえますか?」
「あぁ、ちょっと待ってくれ」
呼応するように、リアさんがインベントリからテーブルを出し、アルさんは地図をテーブルの上に広げた。
アルさんはきっと、僕が何を言いたいのかはもうわかってるはずだ。
「アルさん、あの」
「地図上を見る限り、この付近には川も湖も無いな……。トーマ、調べられるか?」
「りょーかい。ちっと待っとれ」
言うが早いか、トーマ君は森へ飛び込み、木の天辺へと上っていく。
……やっぱりトーマ君は曲芸師かな。
「見える限り、聞こえる限りに水辺はない。反射も音も感じんわ」
「ふむ……。昨日今日と、魔物も生息を確認できない以上、付着したとも考えにくいな」
「あ、それは絶対無いです。実は浮木草だけじゃないんです。この辺り……ちょうど溝のある辺りの植物は、全部が水辺のモノですので」
「なるほど……な」
けど、僕がわかるのはそこまでだ。
この場所に、なんでそれらが自生しているのか、まではわからない。
やっぱり、僕じゃあんまり役には……。
「そう言われてみると、この溝……なにか意味があるんじゃない?」
「溝に、意味……?」
「だって、なんだか模様みたいじゃない? 石柱の立ち方も溝も、よく見たら左右対称みたいになってるし」
「確かにな。VR以前に流行ったRPGなんかでは、こういうところにワープの魔法陣があったりな」
「せやな。魔力やらが仕掛けで流れるようになっとるとかな」
模様……魔法陣?
リアさんや、アルさんの言葉が、なんだか……なんだろう……。
「水のそばで……。魔法……魔力……」
「あ、アキさん……?」
「仕掛け……魔力……発動……?」
そういえば、魔法は魔力と一緒に『火種』となる何かが必要って、ジェルビンさんが言ってた。
大元になる属性の力が込められた魔力。
それが『どう動くのか』という、指示を出すことが……火種……?
「魔力に、属性を足して、回路を通して……」
「アキ……お前……」
「……魔力の込められた……水? 精霊の泉……いや、それだと必要量が多すぎる」
瓶に入れて何本必要になるか……。
それに、仕掛けとしては手間がかかりすぎる。
このイベントは、ゲームを始めたてのプレイヤーでも楽しめるようになっているはず。
それならば……もっと手軽な……。
――周りを頼りなさい。アキちゃんの周りにはいろんな人がおるはずじゃ。
「……魔法。そうか、魔法だ!」
「お、おう!? どうした急に!」
「えっと……試してみたいことがあります!」
「あ、ああ」
「なので……カナエさん。手伝ってください!」
「私ですか? わかりました」
思い付いた内容は、至極簡単なことだ。
魔法で雨を降らせる、これだけのこと。
魔法を起こすためには、属性の込められた魔力を回路に流すことが必要だ。
つまり、人が魔法を発動するためには、魔力を『詠唱』という回路に乗せて流すことが必要なんだ。
そうして産み出された魔法には……魔力が込められてるはずなんだ。
……たぶんだけど。
「じゃあ、お願いします」
「はい、では……清らかなる、乙女の祈りはこの身と共に。清澄たる想いを以って、数多降り注ぐ光となれ。❲穢れを払う天の雫❳」
僕らの先頭に立ち、詠唱と共に、カナエさんは杖を掲げる。
すると、ポツリ……ポツリと雫が降り始め、数秒ほどで雨と言えるほどの量になった。
「でも、前見たときより穏やかな……?」
「込める魔力量を少し減らしましたので。急いでるときには出来ませんが、今みたいに落ち着いていれば多少は」
「なるほど……」
そんな話をしている間にも、雨は地面を濡らし、溝へ流れていく。
次第に溝へ溜まっていく……そして、その時はいきなり訪れた。
僕の声に反応して、アルさんだけじゃない……トーマ君やリアさん、カナエさんも僕のそばに来てくれた。
むしろ、アルさんよりもトーマ君の方が早くて、びっくりしたけど。
「アルさん。この葉、見覚えがありませんか?」
「葉、か? すまない、俺はそっちの方はあんまり……」
「よーく見てください。ほら、2人で森に行ったときに」
「森に……? そう言われると、どこかで……」
祭壇のように作られた石造りの床。
そこに掘られていた溝の中から、僕は1枚の葉をアルさんに見せる。
アルさんはちゃんと覚えていないかもしれないけど、これは以前一緒に見た素材なんだ。
「……浮木草」
「あぁ、そうだ! これはあの時、アキさんが俺に教えてくれた草の葉じゃないか!」
「思い出してもらえたみたいで良かった……。そうなんです、これ浮木草の葉なんですよ」
アルさんだけじゃなくて、他のみんなにも見せるように葉を動かす。
浮木草の葉……つまり、水に浮いた木片のような見た目をした葉。
水辺に自生する草だと言うことも合わせて、説明をしていく。
つまり、これが何を意味するかっていうと……。
「アルさん、地図を見せてもらえますか?」
「あぁ、ちょっと待ってくれ」
呼応するように、リアさんがインベントリからテーブルを出し、アルさんは地図をテーブルの上に広げた。
アルさんはきっと、僕が何を言いたいのかはもうわかってるはずだ。
「アルさん、あの」
「地図上を見る限り、この付近には川も湖も無いな……。トーマ、調べられるか?」
「りょーかい。ちっと待っとれ」
言うが早いか、トーマ君は森へ飛び込み、木の天辺へと上っていく。
……やっぱりトーマ君は曲芸師かな。
「見える限り、聞こえる限りに水辺はない。反射も音も感じんわ」
「ふむ……。昨日今日と、魔物も生息を確認できない以上、付着したとも考えにくいな」
「あ、それは絶対無いです。実は浮木草だけじゃないんです。この辺り……ちょうど溝のある辺りの植物は、全部が水辺のモノですので」
「なるほど……な」
けど、僕がわかるのはそこまでだ。
この場所に、なんでそれらが自生しているのか、まではわからない。
やっぱり、僕じゃあんまり役には……。
「そう言われてみると、この溝……なにか意味があるんじゃない?」
「溝に、意味……?」
「だって、なんだか模様みたいじゃない? 石柱の立ち方も溝も、よく見たら左右対称みたいになってるし」
「確かにな。VR以前に流行ったRPGなんかでは、こういうところにワープの魔法陣があったりな」
「せやな。魔力やらが仕掛けで流れるようになっとるとかな」
模様……魔法陣?
リアさんや、アルさんの言葉が、なんだか……なんだろう……。
「水のそばで……。魔法……魔力……」
「あ、アキさん……?」
「仕掛け……魔力……発動……?」
そういえば、魔法は魔力と一緒に『火種』となる何かが必要って、ジェルビンさんが言ってた。
大元になる属性の力が込められた魔力。
それが『どう動くのか』という、指示を出すことが……火種……?
「魔力に、属性を足して、回路を通して……」
「アキ……お前……」
「……魔力の込められた……水? 精霊の泉……いや、それだと必要量が多すぎる」
瓶に入れて何本必要になるか……。
それに、仕掛けとしては手間がかかりすぎる。
このイベントは、ゲームを始めたてのプレイヤーでも楽しめるようになっているはず。
それならば……もっと手軽な……。
――周りを頼りなさい。アキちゃんの周りにはいろんな人がおるはずじゃ。
「……魔法。そうか、魔法だ!」
「お、おう!? どうした急に!」
「えっと……試してみたいことがあります!」
「あ、ああ」
「なので……カナエさん。手伝ってください!」
「私ですか? わかりました」
思い付いた内容は、至極簡単なことだ。
魔法で雨を降らせる、これだけのこと。
魔法を起こすためには、属性の込められた魔力を回路に流すことが必要だ。
つまり、人が魔法を発動するためには、魔力を『詠唱』という回路に乗せて流すことが必要なんだ。
そうして産み出された魔法には……魔力が込められてるはずなんだ。
……たぶんだけど。
「じゃあ、お願いします」
「はい、では……清らかなる、乙女の祈りはこの身と共に。清澄たる想いを以って、数多降り注ぐ光となれ。❲穢れを払う天の雫❳」
僕らの先頭に立ち、詠唱と共に、カナエさんは杖を掲げる。
すると、ポツリ……ポツリと雫が降り始め、数秒ほどで雨と言えるほどの量になった。
「でも、前見たときより穏やかな……?」
「込める魔力量を少し減らしましたので。急いでるときには出来ませんが、今みたいに落ち着いていれば多少は」
「なるほど……」
そんな話をしている間にも、雨は地面を濡らし、溝へ流れていく。
次第に溝へ溜まっていく……そして、その時はいきなり訪れた。
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