154 / 345
第2章 現実と仮想現実
第155話 強いて言えば
しおりを挟む
「遺跡、ですか……?」
「ああ。よくある中世ファンタジー世界の遺跡、という感じのものだな」
「つーことはあれか。割れた石柱やら、建物やらがゴロゴロしとるような」
「そういうことだ」
あー、なるほど……。
RPGのゲームにもよく出てくる、あんな感じの遺跡かぁ……。
ってことは、ゴーレムとかいるのかな?
「そんで、魔物はおったんか?」
「いや、全くいなかった。不自然なほどに、気配ひとつ感じられなかった」
「……キナ臭いな」
アルさんの報告に、笑い顔だったトーマ君の表情が、急に影を帯びる。
でも、僕でもわかる……。
それは、絶対なにかある、ってことが。
「しかし、ざっと辺りを調べて見たが……なにも見つけられなかった」
「……はぁ?」
「アルの言う通りだ。魔物の気配もないってことで、手分けして探したんだが、全く見つからなかった」
「でも、そこって絶対なにかありますよね? 見えない仕掛けとかがあるのかなぁ……」
アルさんだけじゃない、ジンさんも口を揃えてそう言うってことは、本当になにも見つからなかったんだろう。
けど、絶対なにかある……みんなそう思ってるのが、口にしなくても雰囲気でわかる。
そんな、重い空気が漂うなか、アルさんは少し口元を歪めながら、「そこで、だ」と言葉を紡いだ。
「明日、もう一度調査に向かおうと思う」
「あん? つーて、今日と変わらんのやったら、意味ないやろ?」
「あぁ、その通りだ。だからこそ、頼みがある。アキさん、トーマ。2人が一緒に来て欲しい」
「……え?」
「はぁ? 俺はわからんでもないが、アキもか?」
「そ、そうだよ! 僕が行ったところで……」
そう、行ったところで役に立てる気がしない。
ゲームの知識はアルさんの方があるし、情報や感覚はトーマ君がいれば問題ない。
僕が出来ることなんて、お薬を作ってみんなをサポートするくらいしか……。
「いや、そんなことはない。アキさんには、アキさんしかできないことがあると思ってる。他のみんなには無い力が」
「そ、そんなの、ないよ……」
「ま、別にええ。アキが一緒の方が面白いしな」
「あと、パーティーの制限が5人までだからな。明日はジンとティキが拠点に残ることで決定済みだ」
「わ、わかりました……」
そこまで決定してるなら、僕は行かないと……だよね。
ジンさんの武器が斧だし、明日はジンさんに木を伐ってもらうようにお願いしとかないと。
オリオンさんに場所教えてもらえば大丈夫だろうし……。
「それじゃあ、みんな。明日もよろしく頼む」
アルさんの言葉に、各々で頷いて僕らはこの日を終えることにした。
「到着、だな」
「ほんまに遺跡やなぁ……」
翌朝、拠点に集合した僕たちは、連絡事項だけ確認して、調査へと向かった。
拠点から歩いて数十分ほど、森の木々の間を抜けていくと……突然視界が晴れる。
そこには、僕のイメージ通りな遺跡が広がっていた。
「さて、見て分かるように、そんなに大きな遺跡じゃない。昼になって他のパーティーが来る前になにか見つけたいところだな」
「んー……アル。あそこの石柱の上まで俺を飛ばせるか? リアさんでもええけど」
「あ、あぁ、可能だと思うが……」
「そんじゃ頼むわ」
言うが早いか、アルさんが背中の大剣を構えると同時に、トーマ君は体を宙に浮かせる。
そして、押し出されるかのように空を飛んだ。
「……流石だな。俺の剣が離れる直前に自分でも跳躍をしたか」
「トーマ君って、なんなんでしょうね……」
「曲芸師じゃないか?」
真顔でそんなことを言うアルさんに、少し笑っていると、トーマ君は早々に石柱から降りてきた。
「上から見た感じ、なんや怪しい場所があるな」
「ほう」
「そこの奥やけど、祭壇みたいになっとるところがなんか妙や」
「根拠は?」
「無い。強いて言えば、勘や」
真剣な表情でそんなことを言うトーマ君に、首を傾げながらも、僕たちはその場所へと向かった。
どうせ何もなかったら全体を探すからね。
最初はトーマ君の勘を信じても、損はないし。
「それじゃこの辺りを手分けして探そう。くれぐれも足元の溝には気を付けてくれ。足を取られてコケたりなんかは恥ずかしいぞ」
「善処します……」
「常にアキが見えるようにしとかんとな。良い瞬間を見逃すかもしれんし」
「トーマ君!?」
「冗談や」
さっさと逃げるように背を向けたトーマ君を睨みつつ、気分を落ち着けるように息を吐く。
そんなことをしてる間に、他のメンバーはみんなそれぞれで行動を開始していた。
「んー、パッと見た感じ……なにも感じないなぁ」
正直、探索なんて素材を採取するときくらいなんだ。
だからこんな風に仕掛けを探すとか言われても……。
「うん! わかんない!」
としか言えないよね。
でも折角ここまで来たんだし……ちょっとくらい採取しても、大丈夫だよね?
見たことない素材、見つかるかもしれないし。
「お、言ってるそばから新素材だ! なんて草なんだ……ん?」
初めてみる草……しかし、それよりも僕が目に付いたのは……ひとつの葉。
これって確か、以前に。
そう思い、手にとって鑑定をかけ――
「……アルさん! すぐに来てください!」
「ああ。よくある中世ファンタジー世界の遺跡、という感じのものだな」
「つーことはあれか。割れた石柱やら、建物やらがゴロゴロしとるような」
「そういうことだ」
あー、なるほど……。
RPGのゲームにもよく出てくる、あんな感じの遺跡かぁ……。
ってことは、ゴーレムとかいるのかな?
「そんで、魔物はおったんか?」
「いや、全くいなかった。不自然なほどに、気配ひとつ感じられなかった」
「……キナ臭いな」
アルさんの報告に、笑い顔だったトーマ君の表情が、急に影を帯びる。
でも、僕でもわかる……。
それは、絶対なにかある、ってことが。
「しかし、ざっと辺りを調べて見たが……なにも見つけられなかった」
「……はぁ?」
「アルの言う通りだ。魔物の気配もないってことで、手分けして探したんだが、全く見つからなかった」
「でも、そこって絶対なにかありますよね? 見えない仕掛けとかがあるのかなぁ……」
アルさんだけじゃない、ジンさんも口を揃えてそう言うってことは、本当になにも見つからなかったんだろう。
けど、絶対なにかある……みんなそう思ってるのが、口にしなくても雰囲気でわかる。
そんな、重い空気が漂うなか、アルさんは少し口元を歪めながら、「そこで、だ」と言葉を紡いだ。
「明日、もう一度調査に向かおうと思う」
「あん? つーて、今日と変わらんのやったら、意味ないやろ?」
「あぁ、その通りだ。だからこそ、頼みがある。アキさん、トーマ。2人が一緒に来て欲しい」
「……え?」
「はぁ? 俺はわからんでもないが、アキもか?」
「そ、そうだよ! 僕が行ったところで……」
そう、行ったところで役に立てる気がしない。
ゲームの知識はアルさんの方があるし、情報や感覚はトーマ君がいれば問題ない。
僕が出来ることなんて、お薬を作ってみんなをサポートするくらいしか……。
「いや、そんなことはない。アキさんには、アキさんしかできないことがあると思ってる。他のみんなには無い力が」
「そ、そんなの、ないよ……」
「ま、別にええ。アキが一緒の方が面白いしな」
「あと、パーティーの制限が5人までだからな。明日はジンとティキが拠点に残ることで決定済みだ」
「わ、わかりました……」
そこまで決定してるなら、僕は行かないと……だよね。
ジンさんの武器が斧だし、明日はジンさんに木を伐ってもらうようにお願いしとかないと。
オリオンさんに場所教えてもらえば大丈夫だろうし……。
「それじゃあ、みんな。明日もよろしく頼む」
アルさんの言葉に、各々で頷いて僕らはこの日を終えることにした。
「到着、だな」
「ほんまに遺跡やなぁ……」
翌朝、拠点に集合した僕たちは、連絡事項だけ確認して、調査へと向かった。
拠点から歩いて数十分ほど、森の木々の間を抜けていくと……突然視界が晴れる。
そこには、僕のイメージ通りな遺跡が広がっていた。
「さて、見て分かるように、そんなに大きな遺跡じゃない。昼になって他のパーティーが来る前になにか見つけたいところだな」
「んー……アル。あそこの石柱の上まで俺を飛ばせるか? リアさんでもええけど」
「あ、あぁ、可能だと思うが……」
「そんじゃ頼むわ」
言うが早いか、アルさんが背中の大剣を構えると同時に、トーマ君は体を宙に浮かせる。
そして、押し出されるかのように空を飛んだ。
「……流石だな。俺の剣が離れる直前に自分でも跳躍をしたか」
「トーマ君って、なんなんでしょうね……」
「曲芸師じゃないか?」
真顔でそんなことを言うアルさんに、少し笑っていると、トーマ君は早々に石柱から降りてきた。
「上から見た感じ、なんや怪しい場所があるな」
「ほう」
「そこの奥やけど、祭壇みたいになっとるところがなんか妙や」
「根拠は?」
「無い。強いて言えば、勘や」
真剣な表情でそんなことを言うトーマ君に、首を傾げながらも、僕たちはその場所へと向かった。
どうせ何もなかったら全体を探すからね。
最初はトーマ君の勘を信じても、損はないし。
「それじゃこの辺りを手分けして探そう。くれぐれも足元の溝には気を付けてくれ。足を取られてコケたりなんかは恥ずかしいぞ」
「善処します……」
「常にアキが見えるようにしとかんとな。良い瞬間を見逃すかもしれんし」
「トーマ君!?」
「冗談や」
さっさと逃げるように背を向けたトーマ君を睨みつつ、気分を落ち着けるように息を吐く。
そんなことをしてる間に、他のメンバーはみんなそれぞれで行動を開始していた。
「んー、パッと見た感じ……なにも感じないなぁ」
正直、探索なんて素材を採取するときくらいなんだ。
だからこんな風に仕掛けを探すとか言われても……。
「うん! わかんない!」
としか言えないよね。
でも折角ここまで来たんだし……ちょっとくらい採取しても、大丈夫だよね?
見たことない素材、見つかるかもしれないし。
「お、言ってるそばから新素材だ! なんて草なんだ……ん?」
初めてみる草……しかし、それよりも僕が目に付いたのは……ひとつの葉。
これって確か、以前に。
そう思い、手にとって鑑定をかけ――
「……アルさん! すぐに来てください!」
0
お気に入りに追加
1,628
あなたにおすすめの小説
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~
黄舞
SF
無数にあるゲームの中でもβ版の完成度、自由度の高さから瞬く間に話題を総ナメにした「インフィニティ・オンライン」。
貧乏学生だった商山人志はゲームの中だけでも大金持ちになることを夢みてネタ職「商人」を選んでしまう。
攻撃スキルはゲーム内通貨を投げつける「銭投げ」だけ。
他の戦闘職のように強力なスキルや生産職のように戦闘に役立つアイテムや武具を作るスキルも無い。
見た目はせっかくゲームだからと選んだもふもふワンコの獣人姿。
これもモンスターと間違えられやすいため、PK回避で選ぶやつは少ない!
そんな中、人志は半ばやけくそ気味にこう言い放った。
「くそっ! 完全に騙された!! もういっその事お前らがバカにした『商人』で天下取ってやんよ!! 金の力を思い知れ!!」
一度完結させて頂きましたが、勝手ながら2章を始めさせていただきました
毎日更新は難しく、最長一週間に一回の更新頻度になると思います
また、1章でも試みた、読者参加型の物語としたいと思っています
具体的にはあとがき等で都度告知を行いますので奮ってご参加いただけたらと思います
イベントの有無によらず、ゲーム内(物語内)のシステムなどにご指摘を頂けましたら、運営チームの判断により緊急メンテナンスを実施させていただくことも考えています
皆様が楽しんで頂けるゲーム作りに邁進していきますので、変わらぬご愛顧をよろしくお願いしますm(*_ _)m
吉日
運営チーム
大変申し訳ありませんが、諸事情により、キリが一応いいということでここで再度完結にさせていただきます。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる