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第2章 現実と仮想現実
第144話 不満とか
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見送られるようにして出た作業場を後にしながら、のんびり拠点の中を見てまわる。
拠点自体は、そこまで大きくなく、30分もあれば全て見てまわれそうだ。
「んー、確かにまだ全然揃ってない感じがするね」
誰に言ったわけでもなく、ただ自分で確認するように言葉を出す。
作業場はあるけれど……例えばお薬を作っても、渡す場所が仕切られてなかったり、調査から帰ってきた人が休む場所や、アイテムを仕分けたりする場所もない。
ホントに最低限、雨風をしのげる程度って感じ。
「となると、急ピッチで揃えておきたいのは……」
やっぱり、調査から帰ってきた人が休める場所、だろうか?
僕たち拠点組は、いざとなったら幌で露店を開くこともできるけど……。
調査から帰ってきたのに、休めないってなるのはさすがに悪いし……。
その後に、アイテムを仕分ける場所と、補給のためのお店とかかな。
あ、休める場所なら少し軽食が食べれるとか……疲れたら甘いものって言うし?
「でもまぁ、僕は作れないからお願いすることになっちゃうし、みんなと話し合ってから、かなぁ……」
「そうなの……?」
「うん。一応道具にノミとか木槌持ってるけど、やったことはないからね」
「でも、早い方がいい」
「やっぱり? 不満とか出てるのかな?」
「少しだけ、だけど……」
やっぱり出てるんだね……。
まぁ、生産側としては生産用の道具とか設備を揃えたいけど、調査とかをメインでしてる人にはわかんないしね……。
「アキは、なにしてるの?」
「ん? 僕は、今拠点の中を確認してるんだ。昨日は早くに落ちちゃって、見れてなかったからね」
「そう」
「……普通に話してるけど、ラミナさんは何してるの?」
問いかけつつ、声のしていた方へ顔を向ければ、予想通りの無表情。
剣と盾はしまった状態のラミナさんがそこにいた。
「帰ってきたところ。調査」
「あ、そうなんだ。どうだった?」
「亀がいた」
「亀……?」
「すごく硬かった」
「あー……」
甲羅が硬かったってことなんだろうけど、守りに入られちゃったら大変そうだなぁ……。
魔法なんかも通さないのかなぁ……。
「姉さんが、甲羅の中に突き刺してた」
「うわぁ……」
まぁ、槍だし仕方ないんだけど……えげつない……。
亀も驚いただろうなぁ……。
「あれ? ハスタさんは? 一緒じゃないの?」
「姉さん、あそこ。疲れたって」
「あそこ?」
「そう」と、ラミナさんが指差した方を見てみれば、日差し避けの幌の下、簡易的に作られたベンチの上で項垂れてる赤い髪が見えた。
槍をしまうのも面倒なのか、垂らした右手に持ったまま、ピクりとも動かない……。
あれ、大丈夫なの……?
「あの、ハスタさん……。生きてる……?」
「HPあるから、大丈夫」
「うん、そうじゃなくてね?」
「……?」
よくわからない、と言わんばかりに彼女は首を傾げる。
無表情じゃなかったら、可愛い仕草なんだろうけど……無表情だから……。
まぁ、ハスタさんのことは、ラミナさんの方がよく知ってるよね。
「ラミナさんは休まなくていいの?」
「大丈夫。元々、そんなに遠くに行ってない」
「そっか。無理はしないようにね」
返事の代わりに小さく頷きつつ、歩き始めた僕の隣を一緒に歩く。
ハスタさんを一人にしちゃっても大丈夫なのかな?
槍を持ってるっていっても、放心してるみたいだし……無防備な気がするんだけど……。
「僕はそろそろ行くところあるから、行くんだけど……」
「そう」
「その、ハスタさんは……」
「大丈夫。姉さん、強い」
表情を変えないまま、彼女は僕の言葉を遮るように、そう断言する。
顔も声量もいつもと変わらないのに、なんだかすごく、ハスタさんへの信頼が感じられる気がする。
「アキは、どこいくの?」
「ん? 僕はこれから会議だよ。生産プレイヤーのね」
「そう」
僕の答えに、彼女は興味も無さそうに言葉だけ返す。
けれど、僕の隣から離れるわけでもなく、変わらずゆっくりとついてきていた。
「その、ついてくるのは構わないけど……。つまらないと思うよ?」
「大丈夫」
「ラミナさんがいいならいいけど……」
とりあえず、あと10分ほどで時間になるし、戻らないと……。
でも、ラミナさんのこと……どうやって説明しようかなぁ……。
拠点自体は、そこまで大きくなく、30分もあれば全て見てまわれそうだ。
「んー、確かにまだ全然揃ってない感じがするね」
誰に言ったわけでもなく、ただ自分で確認するように言葉を出す。
作業場はあるけれど……例えばお薬を作っても、渡す場所が仕切られてなかったり、調査から帰ってきた人が休む場所や、アイテムを仕分けたりする場所もない。
ホントに最低限、雨風をしのげる程度って感じ。
「となると、急ピッチで揃えておきたいのは……」
やっぱり、調査から帰ってきた人が休める場所、だろうか?
僕たち拠点組は、いざとなったら幌で露店を開くこともできるけど……。
調査から帰ってきたのに、休めないってなるのはさすがに悪いし……。
その後に、アイテムを仕分ける場所と、補給のためのお店とかかな。
あ、休める場所なら少し軽食が食べれるとか……疲れたら甘いものって言うし?
「でもまぁ、僕は作れないからお願いすることになっちゃうし、みんなと話し合ってから、かなぁ……」
「そうなの……?」
「うん。一応道具にノミとか木槌持ってるけど、やったことはないからね」
「でも、早い方がいい」
「やっぱり? 不満とか出てるのかな?」
「少しだけ、だけど……」
やっぱり出てるんだね……。
まぁ、生産側としては生産用の道具とか設備を揃えたいけど、調査とかをメインでしてる人にはわかんないしね……。
「アキは、なにしてるの?」
「ん? 僕は、今拠点の中を確認してるんだ。昨日は早くに落ちちゃって、見れてなかったからね」
「そう」
「……普通に話してるけど、ラミナさんは何してるの?」
問いかけつつ、声のしていた方へ顔を向ければ、予想通りの無表情。
剣と盾はしまった状態のラミナさんがそこにいた。
「帰ってきたところ。調査」
「あ、そうなんだ。どうだった?」
「亀がいた」
「亀……?」
「すごく硬かった」
「あー……」
甲羅が硬かったってことなんだろうけど、守りに入られちゃったら大変そうだなぁ……。
魔法なんかも通さないのかなぁ……。
「姉さんが、甲羅の中に突き刺してた」
「うわぁ……」
まぁ、槍だし仕方ないんだけど……えげつない……。
亀も驚いただろうなぁ……。
「あれ? ハスタさんは? 一緒じゃないの?」
「姉さん、あそこ。疲れたって」
「あそこ?」
「そう」と、ラミナさんが指差した方を見てみれば、日差し避けの幌の下、簡易的に作られたベンチの上で項垂れてる赤い髪が見えた。
槍をしまうのも面倒なのか、垂らした右手に持ったまま、ピクりとも動かない……。
あれ、大丈夫なの……?
「あの、ハスタさん……。生きてる……?」
「HPあるから、大丈夫」
「うん、そうじゃなくてね?」
「……?」
よくわからない、と言わんばかりに彼女は首を傾げる。
無表情じゃなかったら、可愛い仕草なんだろうけど……無表情だから……。
まぁ、ハスタさんのことは、ラミナさんの方がよく知ってるよね。
「ラミナさんは休まなくていいの?」
「大丈夫。元々、そんなに遠くに行ってない」
「そっか。無理はしないようにね」
返事の代わりに小さく頷きつつ、歩き始めた僕の隣を一緒に歩く。
ハスタさんを一人にしちゃっても大丈夫なのかな?
槍を持ってるっていっても、放心してるみたいだし……無防備な気がするんだけど……。
「僕はそろそろ行くところあるから、行くんだけど……」
「そう」
「その、ハスタさんは……」
「大丈夫。姉さん、強い」
表情を変えないまま、彼女は僕の言葉を遮るように、そう断言する。
顔も声量もいつもと変わらないのに、なんだかすごく、ハスタさんへの信頼が感じられる気がする。
「アキは、どこいくの?」
「ん? 僕はこれから会議だよ。生産プレイヤーのね」
「そう」
僕の答えに、彼女は興味も無さそうに言葉だけ返す。
けれど、僕の隣から離れるわけでもなく、変わらずゆっくりとついてきていた。
「その、ついてくるのは構わないけど……。つまらないと思うよ?」
「大丈夫」
「ラミナさんがいいならいいけど……」
とりあえず、あと10分ほどで時間になるし、戻らないと……。
でも、ラミナさんのこと……どうやって説明しようかなぁ……。
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