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第2章 現実と仮想現実
第142話 すごく難しい
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「えっと、最下級ポーションだけど……」
「ええ、言われた通りの最下級ね。何か違う?」
「あー、その……。最下級ポーションだと他には何か作れますか?」
「え? ええ、作れるわ。即効性ね」
「だけ、ですか?」
僕の確認に、少し押され気味になりながらも、緑色の髪の女性は「ええ」と、頷いた。
周りの人達も同意見見たいで、各々で頷いたり……。
それに、僕は少しだけ驚きつつ、インベントリを操作する。
そして中から1本の瓶を取り出した。
「これはまた少し違うんですけど……。どうぞ」
「……? なんだか色味が綺麗ね……え!? これって!?」
「できればあまり大きい声で驚かないで欲しいんですが……」
「あ、ごめんなさい。でも、これ……どういうこと?」
彼女は僕が出した瓶を片手で持ちながら、僕と瓶とで視線を何度も動かす。
彼女からしてみれば、見たこともないアイテムになるんだろうし……その反応もわからなくはないんだけどね。
「どういうこと、と言われても……。[最下級ポーション]の良品に対して、味を調整したもの……としか」
「そんなことはテキストを見ればわかります! そうではなくて、どうやってこれを作ったのか、を聞いているのです!」
「えっと、味の調整に関してはお伝えはできないです」
「なぜですか!?」
「これは、僕……いえ、私が何度も試行錯誤した結果たどり着いた完成品、です。そのため、それをそのままお伝えすることはしたくないんです」
「なっ!」
「ごめんなさい」と、謝りを入れ、頭を下げる。
でも、あの時……オリオンさんは――
「けど、お詫びとして。いえ、もっと楽しい……調薬の世界を体験するためのお手伝いなら、できます」
あの時のオリオンさんだけじゃない。
ルコの実に繋がるヒントをくれた、カナエさんだってそうだ。
最初に味について教えてくれた、アルさんだってそうだ。
僕に出したあの依頼がなければ、僕は味なんて気にもしなかっただろうし、気にしたとしてももっとずっと後のことだったはずだ。
「教えてもらえば、出来るようになるのは……簡単です。でも、調薬……いやお薬は、作るだけじゃない。使う人のことを考えなきゃダメなんです。だからすごく難しいです。でも、喜んでくれた時は、すごく……嬉しくて、それを考えるだけでも、なんだかワクワクして楽しくなるんです!」
ガラッドさんのお子さんが、お薬を飲んでくれた時もそうだ。
飲んでくれたって聞いたときは、すごく嬉しかった!
力が抜けてしまって、とても噛み締めるほどの余裕はなかったんだけどね……。
「ええっと……、だから、僕はお手伝いはしたいです。皆さんがお薬を作ったことで、嬉しいとか難しいとかいっぱい体験して、この世界をもっともっと楽しんでもらえるような、そんなお手伝いがしたいです」
もちろん僕だってまだまだ全然だけど……。
おばちゃんや、ジェルビンさんのように、誰かを支えられたら……。
「……」
「あ、あの……」
なぜか妙に熱が入ってしまって、気づいたら周りのみんなが僕の方を見ていた。
あぁぁ……、穴があったら入りたい……!
気まずくて、どうすればいいのかわからなくなってきた僕の耳に、ぱちぱちと小さな音が聞こえた。
それが次第に、だんだんと大きくなって――
「え? えっ!?」
まるで作業場全体が震えてるような、拍手の音と歓声に包まれる。
よくよく耳をすましてみれば、なんだかスミスさんの声が聞こえ……あの人なんであんなにテンション高いんだろう。
僕がそんな現実逃避に似た何かをしていると、すぐそばにいた緑色の髪の女性が僕の右手を掴み……。
「あなた、名前は?」
「あ、アキだけど……」
「そう。それじゃあ今日から、あなたココを任せるわね?」
「え?」
突然言われたことに、間抜けな返事しかできなかった僕を置いて、彼女は僕の右手を高く持ち上げた。
そして、よく通る声で――
「みんな、今日からココのリーダーはアキ! いいわね!」
なんて、高らかに宣言したのだ。
「ええ、言われた通りの最下級ね。何か違う?」
「あー、その……。最下級ポーションだと他には何か作れますか?」
「え? ええ、作れるわ。即効性ね」
「だけ、ですか?」
僕の確認に、少し押され気味になりながらも、緑色の髪の女性は「ええ」と、頷いた。
周りの人達も同意見見たいで、各々で頷いたり……。
それに、僕は少しだけ驚きつつ、インベントリを操作する。
そして中から1本の瓶を取り出した。
「これはまた少し違うんですけど……。どうぞ」
「……? なんだか色味が綺麗ね……え!? これって!?」
「できればあまり大きい声で驚かないで欲しいんですが……」
「あ、ごめんなさい。でも、これ……どういうこと?」
彼女は僕が出した瓶を片手で持ちながら、僕と瓶とで視線を何度も動かす。
彼女からしてみれば、見たこともないアイテムになるんだろうし……その反応もわからなくはないんだけどね。
「どういうこと、と言われても……。[最下級ポーション]の良品に対して、味を調整したもの……としか」
「そんなことはテキストを見ればわかります! そうではなくて、どうやってこれを作ったのか、を聞いているのです!」
「えっと、味の調整に関してはお伝えはできないです」
「なぜですか!?」
「これは、僕……いえ、私が何度も試行錯誤した結果たどり着いた完成品、です。そのため、それをそのままお伝えすることはしたくないんです」
「なっ!」
「ごめんなさい」と、謝りを入れ、頭を下げる。
でも、あの時……オリオンさんは――
「けど、お詫びとして。いえ、もっと楽しい……調薬の世界を体験するためのお手伝いなら、できます」
あの時のオリオンさんだけじゃない。
ルコの実に繋がるヒントをくれた、カナエさんだってそうだ。
最初に味について教えてくれた、アルさんだってそうだ。
僕に出したあの依頼がなければ、僕は味なんて気にもしなかっただろうし、気にしたとしてももっとずっと後のことだったはずだ。
「教えてもらえば、出来るようになるのは……簡単です。でも、調薬……いやお薬は、作るだけじゃない。使う人のことを考えなきゃダメなんです。だからすごく難しいです。でも、喜んでくれた時は、すごく……嬉しくて、それを考えるだけでも、なんだかワクワクして楽しくなるんです!」
ガラッドさんのお子さんが、お薬を飲んでくれた時もそうだ。
飲んでくれたって聞いたときは、すごく嬉しかった!
力が抜けてしまって、とても噛み締めるほどの余裕はなかったんだけどね……。
「ええっと……、だから、僕はお手伝いはしたいです。皆さんがお薬を作ったことで、嬉しいとか難しいとかいっぱい体験して、この世界をもっともっと楽しんでもらえるような、そんなお手伝いがしたいです」
もちろん僕だってまだまだ全然だけど……。
おばちゃんや、ジェルビンさんのように、誰かを支えられたら……。
「……」
「あ、あの……」
なぜか妙に熱が入ってしまって、気づいたら周りのみんなが僕の方を見ていた。
あぁぁ……、穴があったら入りたい……!
気まずくて、どうすればいいのかわからなくなってきた僕の耳に、ぱちぱちと小さな音が聞こえた。
それが次第に、だんだんと大きくなって――
「え? えっ!?」
まるで作業場全体が震えてるような、拍手の音と歓声に包まれる。
よくよく耳をすましてみれば、なんだかスミスさんの声が聞こえ……あの人なんであんなにテンション高いんだろう。
僕がそんな現実逃避に似た何かをしていると、すぐそばにいた緑色の髪の女性が僕の右手を掴み……。
「あなた、名前は?」
「あ、アキだけど……」
「そう。それじゃあ今日から、あなたココを任せるわね?」
「え?」
突然言われたことに、間抜けな返事しかできなかった僕を置いて、彼女は僕の右手を高く持ち上げた。
そして、よく通る声で――
「みんな、今日からココのリーダーはアキ! いいわね!」
なんて、高らかに宣言したのだ。
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