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第2章 現実と仮想現実
第138話 ここだったのに
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「あっ、もうこんな時間!?」
あの後も図書館の隅で本を読んでいた僕は、窓から見える空が茜色になっているのを見て、慌てて席を立った。
でも、本はどうしよう……。
途中やめになっちゃうし、借りて帰る?
「でも、またこれを返しに来るのも……」
外、暑いし。
そう思って窓の外を見れば、暑さで景色が空気が揺らめいているような気もしてくる。
……うん、また今度にしよう。
「そうと決まれば、返して早く帰んないと」
母さんが怒ったら怖いしね。
こう……淡々と、私怒ってますって雰囲気を出してくる感じで……。
「うう、怖い。怒られたくないなぁ……あれ? ここだったのに埋まってる……」
元の場所に返そうと本棚の前に来てみれば、本の隙間が無くなっていた。
多分、誰かが隙間に本を入れちゃったんだろうけど……。
んー、他の隙間は……。
「あ、あった」
元の段より2段上。
少し高い気がするけど、あのぐらいの高さなら背伸びすれば……。
「ほっ! ふっ……! んぎ、ぎ……!」
もうちょっと……あと、すこ……し……!
そう思って力を入れた瞬間、手から本が滑り落ちる。
「あだっ!?」
ゴッ! と、鈍い音を立てながら、本は綺麗に僕の頭の上に落ちた。
しかも背表紙がまっすぐ!
硬いところ!
「ぐぅう……」
痛い……いたい……!
そんな痛みに頭を押さえて唸ってる僕の上に影が差して、落ちた本が拾い上げられる。
呻きながらも、かろうじてそれに気づいた僕は、まだ痛む頭を押さえつつ顔を上げた。
「……大丈夫か?」
声とともに、僕の前に手が差し伸べられる。
顔は逆光になっていてよくわからないけれど、たぶん茶色だろう髪が光に当たって、なんだか金色っぽい……。
「……」
「おーい、大丈夫なんかー?」
「はっ! だ、大丈夫です!」
ぼーっとしていた僕に、再度声がかかる。
その声にハッと意識を戻し、僕は慌てるように返事をして男性の手を取った。
パシッと音が出る勢いで取った手は、僕の手よりも大きくて、太さもある。
「……あれ?」
というか、僕の手ってこんなに小さくはなかったと思うんだけど……。
まぁ、見る感じ彼の方が背も高いし、体格もいいから仕方ない……んだよね?
「なんや、元気や……、ん?」
「ありがとうござ……どうかしました?」
僕を引っ張り上げてくれた彼は、呆れ半分に僕の顔を見て、その表情を一変させる。
困惑した顔で、何かを確認するみたいに僕の顔を何度も見て――
「君……、ちょっとすまん」
その言葉と共に、繋いだままだった僕の手を離して、両手で顔を抱えるように僕の横髪を後ろに引っ張る。
力づくじゃないから痛くはないんだけど、ちょっと急には……!
「あ、あの……」
「……アキ、か?」
「……え?」
僕がその声に困惑した声を返すと同時に、彼はその手を髪から離し一歩後ろに退がる。
そのまま、有無を言わせない速度で背を向け歩いて行ってしまった。
「え、え?」
いや、ちょっと……なに?
えっと、誰……?
困惑から落ち着くまでの数分間、僕の頭にはそんな感想しかでてこなかった。
落ち着いてから確認したけれど、本は仕舞っててくれたみたい。
そこに関しては、ありがとう……?
あの後も図書館の隅で本を読んでいた僕は、窓から見える空が茜色になっているのを見て、慌てて席を立った。
でも、本はどうしよう……。
途中やめになっちゃうし、借りて帰る?
「でも、またこれを返しに来るのも……」
外、暑いし。
そう思って窓の外を見れば、暑さで景色が空気が揺らめいているような気もしてくる。
……うん、また今度にしよう。
「そうと決まれば、返して早く帰んないと」
母さんが怒ったら怖いしね。
こう……淡々と、私怒ってますって雰囲気を出してくる感じで……。
「うう、怖い。怒られたくないなぁ……あれ? ここだったのに埋まってる……」
元の場所に返そうと本棚の前に来てみれば、本の隙間が無くなっていた。
多分、誰かが隙間に本を入れちゃったんだろうけど……。
んー、他の隙間は……。
「あ、あった」
元の段より2段上。
少し高い気がするけど、あのぐらいの高さなら背伸びすれば……。
「ほっ! ふっ……! んぎ、ぎ……!」
もうちょっと……あと、すこ……し……!
そう思って力を入れた瞬間、手から本が滑り落ちる。
「あだっ!?」
ゴッ! と、鈍い音を立てながら、本は綺麗に僕の頭の上に落ちた。
しかも背表紙がまっすぐ!
硬いところ!
「ぐぅう……」
痛い……いたい……!
そんな痛みに頭を押さえて唸ってる僕の上に影が差して、落ちた本が拾い上げられる。
呻きながらも、かろうじてそれに気づいた僕は、まだ痛む頭を押さえつつ顔を上げた。
「……大丈夫か?」
声とともに、僕の前に手が差し伸べられる。
顔は逆光になっていてよくわからないけれど、たぶん茶色だろう髪が光に当たって、なんだか金色っぽい……。
「……」
「おーい、大丈夫なんかー?」
「はっ! だ、大丈夫です!」
ぼーっとしていた僕に、再度声がかかる。
その声にハッと意識を戻し、僕は慌てるように返事をして男性の手を取った。
パシッと音が出る勢いで取った手は、僕の手よりも大きくて、太さもある。
「……あれ?」
というか、僕の手ってこんなに小さくはなかったと思うんだけど……。
まぁ、見る感じ彼の方が背も高いし、体格もいいから仕方ない……んだよね?
「なんや、元気や……、ん?」
「ありがとうござ……どうかしました?」
僕を引っ張り上げてくれた彼は、呆れ半分に僕の顔を見て、その表情を一変させる。
困惑した顔で、何かを確認するみたいに僕の顔を何度も見て――
「君……、ちょっとすまん」
その言葉と共に、繋いだままだった僕の手を離して、両手で顔を抱えるように僕の横髪を後ろに引っ張る。
力づくじゃないから痛くはないんだけど、ちょっと急には……!
「あ、あの……」
「……アキ、か?」
「……え?」
僕がその声に困惑した声を返すと同時に、彼はその手を髪から離し一歩後ろに退がる。
そのまま、有無を言わせない速度で背を向け歩いて行ってしまった。
「え、え?」
いや、ちょっと……なに?
えっと、誰……?
困惑から落ち着くまでの数分間、僕の頭にはそんな感想しかでてこなかった。
落ち着いてから確認したけれど、本は仕舞っててくれたみたい。
そこに関しては、ありがとう……?
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