136 / 345
第2章 現実と仮想現実
第137話 活性化
しおりを挟む
あれから何分か経って少し落ち着いた僕は、タンスの中からTシャツとジーパンを取り出して、着替えていく。
なんだか微妙にジーパンが長い気がするけど、こんなもんだったかな?
「でも出かけるにしてもドコに行こう……」
正直な気持ちを言えば、暑いから出たくないんだけど。
母さんに言われたからには、少しは散歩でもしておかないとダメだよねぇ……。
「あ、そうだ。正直こっちは参考になるかわかんないけど」
行くだけ行ってみて、調べてみれば分かるかなぁ……。
あそこならクーラーも効いてるし、外を当てもなく散歩するよりは良いはず。
「そうと決まれば、善は急げだ!」
ささっと鞄に筆記用具や携帯なんかを入れて、僕は飛び出すように家を出た。
……この時に、もう少し自分の変化に気を付けていれば、これからの事が多少は変わったのかもしれないけど、この時の僕はそんなことを思いもしなかったんだ。
「あー……、涼しいー……」
クーラーで冷やされた木の机へ、脱力したように上半身を投げだす。
太陽の熱で熱くなった頬に、冷たい机が気持ちいい……。
「あー……」
このまま動けなくなりそう……。
なんて、そんなことを考えつつも、数分で温くなってくる机から、仕方なく顔を上げる。
そうして見えた窓の外は、相変わらずとても暑そうに揺らめいて見えた。
「あんな中せっかく来たんだし、やるかぁ……」
ぼーっとしていた間に、汗で張り付いていた髪も乾いてくれていたみたいだ。
仕方なくゆっくりと体を起こして、僕はすぐ近くの案内板へと足を向けた。
「んー……。あるとしたらこの辺かなぁ」
目的の案内板――『市立茜ヶ原図書館・館内図』は貸出カウンターの横の柱に掲示されていた。
あんまり来たことがなくて知らなかったんだけど、どうやらこの図書館……地上地下合わせて5階層もあるみたい……。
僕の目的は、もちろん調薬関係。
とは言っても、そんなに詳しいものはなさそうだけど……。
「とりあえず、2階……かな?」
何ヵ所かの目星を付けて、歩いて階段を昇っていく。
コンクリートの建物だからか、歩くたびに足音が響いて、なんだか少し不思議な感じがした。
そんな音を楽しみながら、とりあえず目星を付けて来てみたのは、医学関係のエリア。
ここに、昔のことを書いてる本があればいいんだけど……。
「……おっ」
のんびり背表紙を眺めていた僕の目に、少し気になる本が見えた。
茶色いハードカバーの本……結構古そうに見えるけど……。
「医学治療の進歩……か。これならなんだか書いてありそう……」
とりあえず……と表紙を捲ってみれば、結構びっしりと文字が書いてある……。
これはだいぶ頑張って読まないとダメな感じかなぁ……。
「ん? 異なる治療法の考え方……?」
パラパラと中身を適当に眺めていると、そんな言葉がよく出てくる。
異なる……?
怪我とか病気とかは治すってだけじゃないの?
不思議に思った僕は、すぐ近くの椅子に腰を下ろしてそのページを開いた。
「えーっと、病気に対しての治療法には、大きく2つの考え方があって……」
ひとつは『病気自体にダメージを当てて消す』方法。
もうひとつは『身体を活性化させて、免疫力で対抗する』方法……か。
ゲームのポーションってどっちになるんだろう?
「怪我を早く治すってことは、活性化させてるって事なのかな……?」
そういえば、ジェルビンさんがそんな感じの事を言ってたような……。
確か、休んでたら直る『軽微な毒』には[解毒ポーション(微)]だったっけ?
「でも、猛毒や特殊な毒には、それ用にもっと強力な解毒ポーションを使って対抗する……」
つまり、軽微なものに関しては身体を活性化させる方法を取って……重大なものには、それ専用に作った薬で直接ダメージを与えて消すって事かな。
なるほど、なるほど……。
「ん……? 待ってよ?」
つまり、ポーションが身体の活性化を促す……ってこと、だよね?
「ってことは、解毒の素材をポーションで煮詰めるだけで解毒ポーションが作れたりしないかな……?」
ポーションを素材として使うっていうのは、なんとなく思いついてたけど……。
もしかすると、すごく単純な考え方で作れたりするんじゃないだろうか?
「確かジェルビンさんが、解毒はカンネリを使うって言ってたね」
これは、試してみる価値があるかもしれない!
なんだか微妙にジーパンが長い気がするけど、こんなもんだったかな?
「でも出かけるにしてもドコに行こう……」
正直な気持ちを言えば、暑いから出たくないんだけど。
母さんに言われたからには、少しは散歩でもしておかないとダメだよねぇ……。
「あ、そうだ。正直こっちは参考になるかわかんないけど」
行くだけ行ってみて、調べてみれば分かるかなぁ……。
あそこならクーラーも効いてるし、外を当てもなく散歩するよりは良いはず。
「そうと決まれば、善は急げだ!」
ささっと鞄に筆記用具や携帯なんかを入れて、僕は飛び出すように家を出た。
……この時に、もう少し自分の変化に気を付けていれば、これからの事が多少は変わったのかもしれないけど、この時の僕はそんなことを思いもしなかったんだ。
「あー……、涼しいー……」
クーラーで冷やされた木の机へ、脱力したように上半身を投げだす。
太陽の熱で熱くなった頬に、冷たい机が気持ちいい……。
「あー……」
このまま動けなくなりそう……。
なんて、そんなことを考えつつも、数分で温くなってくる机から、仕方なく顔を上げる。
そうして見えた窓の外は、相変わらずとても暑そうに揺らめいて見えた。
「あんな中せっかく来たんだし、やるかぁ……」
ぼーっとしていた間に、汗で張り付いていた髪も乾いてくれていたみたいだ。
仕方なくゆっくりと体を起こして、僕はすぐ近くの案内板へと足を向けた。
「んー……。あるとしたらこの辺かなぁ」
目的の案内板――『市立茜ヶ原図書館・館内図』は貸出カウンターの横の柱に掲示されていた。
あんまり来たことがなくて知らなかったんだけど、どうやらこの図書館……地上地下合わせて5階層もあるみたい……。
僕の目的は、もちろん調薬関係。
とは言っても、そんなに詳しいものはなさそうだけど……。
「とりあえず、2階……かな?」
何ヵ所かの目星を付けて、歩いて階段を昇っていく。
コンクリートの建物だからか、歩くたびに足音が響いて、なんだか少し不思議な感じがした。
そんな音を楽しみながら、とりあえず目星を付けて来てみたのは、医学関係のエリア。
ここに、昔のことを書いてる本があればいいんだけど……。
「……おっ」
のんびり背表紙を眺めていた僕の目に、少し気になる本が見えた。
茶色いハードカバーの本……結構古そうに見えるけど……。
「医学治療の進歩……か。これならなんだか書いてありそう……」
とりあえず……と表紙を捲ってみれば、結構びっしりと文字が書いてある……。
これはだいぶ頑張って読まないとダメな感じかなぁ……。
「ん? 異なる治療法の考え方……?」
パラパラと中身を適当に眺めていると、そんな言葉がよく出てくる。
異なる……?
怪我とか病気とかは治すってだけじゃないの?
不思議に思った僕は、すぐ近くの椅子に腰を下ろしてそのページを開いた。
「えーっと、病気に対しての治療法には、大きく2つの考え方があって……」
ひとつは『病気自体にダメージを当てて消す』方法。
もうひとつは『身体を活性化させて、免疫力で対抗する』方法……か。
ゲームのポーションってどっちになるんだろう?
「怪我を早く治すってことは、活性化させてるって事なのかな……?」
そういえば、ジェルビンさんがそんな感じの事を言ってたような……。
確か、休んでたら直る『軽微な毒』には[解毒ポーション(微)]だったっけ?
「でも、猛毒や特殊な毒には、それ用にもっと強力な解毒ポーションを使って対抗する……」
つまり、軽微なものに関しては身体を活性化させる方法を取って……重大なものには、それ専用に作った薬で直接ダメージを与えて消すって事かな。
なるほど、なるほど……。
「ん……? 待ってよ?」
つまり、ポーションが身体の活性化を促す……ってこと、だよね?
「ってことは、解毒の素材をポーションで煮詰めるだけで解毒ポーションが作れたりしないかな……?」
ポーションを素材として使うっていうのは、なんとなく思いついてたけど……。
もしかすると、すごく単純な考え方で作れたりするんじゃないだろうか?
「確かジェルビンさんが、解毒はカンネリを使うって言ってたね」
これは、試してみる価値があるかもしれない!
0
お気に入りに追加
1,630
あなたにおすすめの小説
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
チートなガチャ運でVRMMO無双する!?~没入型MMO「ラスト・オンライン」
なかの
ファンタジー
「いきなり神の剣が出たんですけど」
僕はチートなガチャ運でVRMMO無双する!?
330万PV(web累計)突破!
超大手ゲームメーカーの超美麗グラフィックな大型RPGの最新作「ラスト・オンライン」
このゲームは、新技術を使った没入型MMO、いわゆるVRMMOだった。
僕は、バイト代をなんとか稼いで、ログインした先でチートのようなガチャ運で無双する!!
著/イラスト なかの
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語
ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
八ッ坂千鶴
SF
普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。
そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!
※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる