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第2章 現実と仮想現実
第126話 ちゃんとある
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「えい」
「わひゃ!?」
フェンさんの言葉に、釈然としない気持ちでいた僕の脇から手が生えた。
そして、それに驚いた僕を置いて、あろうことか胸へと伸びて――
「ふむ」
「ふむ……じゃ、ない……っ!」
「アキ、大丈夫。ちゃんとある。……小さいけど」
「余計なお世話だよ!」
僕だってそれなりに……って違う、なくてもいい、本来はないんだし……!
その言葉に、わきわきと動いていたラミナさんの手は、胸から離れた。
しかし、あろうことか……そのまま僕の背中にもたれかかってくる。
腕を腰にまわして、まるで後ろから僕を抱きしめるように。
「ちょ、ちょっとラミナさん!?」
「少しだけ」
「え、えぇ……?」
ラミナさんはそう言って、僕の頭に額を当てる。
現実世界より低くなってしまってることもあって、僕とラミナさんは身長がほとんど変わらない。
だからこそ、余計に全身が密着するというか……。
その……どことは言わないけど、柔らかいというか……。
「ふふ。アキちゃん、しばらくそうしててあげてねぇ……。一番心配してたの、彼女だから」
「え? そうなんですか?」
「えぇ、そうよぉ。気絶したアキちゃんに率先して膝枕してあげたりねぇ……」
「……フェン、やめて」
「あらあら、ミーったら口が滑っちゃったわぁ」
さすがに恥ずかしかったのか、ラミナさんは僕の頭から額を離してフェンさんに声をかける。
しかし、相変わらず僕から離れてはくれないらしい。
……なんでこんなに懐かれてるんだろう……。
「たっだいまー! 熊と鹿と蛇やってきたよー! って、なにやってるの!?」
「あ、あはは……」
「……姉さん。おかえり」
「私も混ぜて混ぜて!」
「……だめ」
「えぇー!」
戦闘から帰ってきたハスタさんが、僕らの周りをまわりながら、混ざろうと手を伸ばす。
しかし、攻撃から身を守るように、腰にまわした手を使い、ラミナさんがことごとく跳ね返していった。
……なんだこれ。
フェンさんもそれを見て笑ってるし、リュンさんに至っては、我関せずといった風に樹の幹に寄りかかってるし……。
でも……。
「みんな、ありがとう。おかげで助かったよ」
そんな自由で柔らかい雰囲気が、助かったこと……助けてくれたことを、より実感させてくれて……。
「ふん。ようやく礼を言いおったか」
「こーら、リュン。だめよぉ? そんなこといっちゃ」
「別に良かろう。遅いのは事実じゃ」
「もぅ……」
返す言葉としてはあんまり良くないけど、リュンさんの声に険はない。
フェンさんもそれが分かってるのか、一応といった感じに軽くいさめただけ。
やっぱりこの2人は、友達同士だと思うんだけど……?
「まぁ、リュンさんの言う通り、お礼が遅くなったのは事実だし、ごめんね」
「……ふん」
「あと、ハスタさんたちもありがとう……。不甲斐ないところを見せちゃったね」
「気にしない気にしない! あのまま私たちだけ助かっても後味悪かったしねー!」
「そう言ってもらえると、ちょっとだけ気持ちが軽くなるよ……」
そう言いながら、にこにこと楽しそうに笑うハスタさんに、僕も軽く笑い返す。
「……アキ」
「ん?」
首だけで振り向こうとした僕から、ラミナさんはもぞもぞと離れていく。
そして、みんなの視線を無視しつつ、ハスタさんの隣に座り直した。
「あの、ラミナさん?」
「無茶しないで」
「え?」
「アキ、無茶しないで」
まっすぐ僕の方を見ながら、彼女は同じ言葉を口にする。
2人には心配させちゃったけど……、でも本当にそれだけなんだろうか……?
なんだか、ラミナさんの声には、それ以外の何かが……。
「ラミナ、大丈夫だって! ねね、大丈夫だよね、アキちゃん?」
「え? あ、うん。今回はホントにごめんね」
ラミナさんのことを考えてた僕に、ハスタさんの妙に軽い声が届く。
咄嗟に頷きつつ、謝ったけど……。
なんだろ、2人……、何か隠してる……?
不思議とそんな気がしたけれど、僕はその場でそれを追求することが出来なかった。
「わひゃ!?」
フェンさんの言葉に、釈然としない気持ちでいた僕の脇から手が生えた。
そして、それに驚いた僕を置いて、あろうことか胸へと伸びて――
「ふむ」
「ふむ……じゃ、ない……っ!」
「アキ、大丈夫。ちゃんとある。……小さいけど」
「余計なお世話だよ!」
僕だってそれなりに……って違う、なくてもいい、本来はないんだし……!
その言葉に、わきわきと動いていたラミナさんの手は、胸から離れた。
しかし、あろうことか……そのまま僕の背中にもたれかかってくる。
腕を腰にまわして、まるで後ろから僕を抱きしめるように。
「ちょ、ちょっとラミナさん!?」
「少しだけ」
「え、えぇ……?」
ラミナさんはそう言って、僕の頭に額を当てる。
現実世界より低くなってしまってることもあって、僕とラミナさんは身長がほとんど変わらない。
だからこそ、余計に全身が密着するというか……。
その……どことは言わないけど、柔らかいというか……。
「ふふ。アキちゃん、しばらくそうしててあげてねぇ……。一番心配してたの、彼女だから」
「え? そうなんですか?」
「えぇ、そうよぉ。気絶したアキちゃんに率先して膝枕してあげたりねぇ……」
「……フェン、やめて」
「あらあら、ミーったら口が滑っちゃったわぁ」
さすがに恥ずかしかったのか、ラミナさんは僕の頭から額を離してフェンさんに声をかける。
しかし、相変わらず僕から離れてはくれないらしい。
……なんでこんなに懐かれてるんだろう……。
「たっだいまー! 熊と鹿と蛇やってきたよー! って、なにやってるの!?」
「あ、あはは……」
「……姉さん。おかえり」
「私も混ぜて混ぜて!」
「……だめ」
「えぇー!」
戦闘から帰ってきたハスタさんが、僕らの周りをまわりながら、混ざろうと手を伸ばす。
しかし、攻撃から身を守るように、腰にまわした手を使い、ラミナさんがことごとく跳ね返していった。
……なんだこれ。
フェンさんもそれを見て笑ってるし、リュンさんに至っては、我関せずといった風に樹の幹に寄りかかってるし……。
でも……。
「みんな、ありがとう。おかげで助かったよ」
そんな自由で柔らかい雰囲気が、助かったこと……助けてくれたことを、より実感させてくれて……。
「ふん。ようやく礼を言いおったか」
「こーら、リュン。だめよぉ? そんなこといっちゃ」
「別に良かろう。遅いのは事実じゃ」
「もぅ……」
返す言葉としてはあんまり良くないけど、リュンさんの声に険はない。
フェンさんもそれが分かってるのか、一応といった感じに軽くいさめただけ。
やっぱりこの2人は、友達同士だと思うんだけど……?
「まぁ、リュンさんの言う通り、お礼が遅くなったのは事実だし、ごめんね」
「……ふん」
「あと、ハスタさんたちもありがとう……。不甲斐ないところを見せちゃったね」
「気にしない気にしない! あのまま私たちだけ助かっても後味悪かったしねー!」
「そう言ってもらえると、ちょっとだけ気持ちが軽くなるよ……」
そう言いながら、にこにこと楽しそうに笑うハスタさんに、僕も軽く笑い返す。
「……アキ」
「ん?」
首だけで振り向こうとした僕から、ラミナさんはもぞもぞと離れていく。
そして、みんなの視線を無視しつつ、ハスタさんの隣に座り直した。
「あの、ラミナさん?」
「無茶しないで」
「え?」
「アキ、無茶しないで」
まっすぐ僕の方を見ながら、彼女は同じ言葉を口にする。
2人には心配させちゃったけど……、でも本当にそれだけなんだろうか……?
なんだか、ラミナさんの声には、それ以外の何かが……。
「ラミナ、大丈夫だって! ねね、大丈夫だよね、アキちゃん?」
「え? あ、うん。今回はホントにごめんね」
ラミナさんのことを考えてた僕に、ハスタさんの妙に軽い声が届く。
咄嗟に頷きつつ、謝ったけど……。
なんだろ、2人……、何か隠してる……?
不思議とそんな気がしたけれど、僕はその場でそれを追求することが出来なかった。
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