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第2章 現実と仮想現実
第97話 炎の勢い
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伸ばされた手を見つめながら、頭の中で考える。
本当に、いいのだろうか、と。
もちろん、僕もあの時はすごく楽しかったし、できるならまた一緒に楽しみたいって想いもある。
けど……。
目線を手から外し、僕の横へとずらす。
そこには、シルフが立っていて……、彼女は僕の視線に気付いて柔らかく微笑んだ。
「……、ジンさん」
「お? なんだ?」
目線を上げて、僕より高いジンさんの目をまっすぐ見る。
背の高い彼の目は、髪よりも暗い赤色で……怯むことなく堂々とした輝きがあった。
「……、少し教えて欲しいことがあります。この場所だと、人が多いので……」
「お、わかった。そんじゃ移動すっか?」
「えっと、おばちゃんの雑貨屋にしましょう。作業途中で出てきたので、そろそろ戻りたいですし」
僕の言葉に、ほう、と頷いて、ジンさんは背を向ける。
そして、そのまま歩き出した彼に遅れないよう、僕らはその背を追った。
「それで、何を教えてほしいって?」
作業台を挟んで向かい側に座ったジンさんが、作業が落ち着いた頃合いを見て、問いかけてくる。
僕は瓶ーー上手いこと成分が抜け出ていた水を容れた瓶を、インベントリにしまい、口を開いた。
「ジンさんはご存じの通り、僕にはシルフがいます」
「あぁ、そうだな」
僕の言葉に、ゆっくりとシルフが実体化し、僕の隣の椅子へ腰掛ける。
まだシルフとしては、ジンさんに慣れていないのか、少しだけ会釈して、だが。
「その、シルフは……、イベントに参加できるんでしょうか……?」
「ん? あー……」
「シルフには、あの告知文が見えなかったみたいで……」
「んー……、多分大丈夫じゃねーかなぁ……?」
ジンさんは、悩むように頭を右手で掻きながら、唸り声でそう言葉にする。
それは、僕としては予想外な答えだっただけに、え? と聞き返すことしかできなかった。
「ってのものなぁ……。このゲームがどうかはわかんねぇけど、基本的に契約してるってやつなら、つれていけるってのが多いんだよ」
「そうなんですか?」
「あぁ。ってのも、例えばビーストテイマーみたいな、使役する系の戦い方するやつなら、契約してる動物がいなきゃ戦えないだろ? だから、基本的に他のゲームなんかじゃ契約してるやつはつれていけるんだが……」
あぁ、それで多分ってことなんだ……。
もしそれらのゲームと一緒なら、シルフも一緒に行けるんだけど……。
「ただまぁ、なってみないとわかんねぇな。ごめん」
「そんな! 教えてくれてありがとうございました! 僕がその辺り、詳しくないもので……」
頭を下げたジンさんに、手を振りながら、すぐに頭を上げてもらう。
だって、僕としては頭を下げてもらう理由もないから!
「そ、それより……。ジンさん的には、どんなイベントになると思います?」
「ん? あー……、アキちゃんは? どう思う?」
「うぇ!? 僕ですか……!? あー、うーん……」
話題を変えようと投げた話を、まさかこっちに返してくるとは……。
でも、どんなイベントかー……、うーん……。
「サーバーに転送して……、うーん……。スキルアップイベント的な……?」
「あー……、それもあるかも知れねぇなぁ……」
「ジンさんはどう思います?」
「俺? 俺としては、まぁ……戦えて、旨い飯が食えるなら何でもいいんだが……」
そういえば、ジンさんって茶毛狼の時に、焼けた兎肉の匂いでお腹空かしてたっけ。
だから、戦って終わった後に、街に帰ってから食堂に行ったんだよね。
楽しかったなぁ……。
「あ……。アキちゃん、もしかすると今回のイベント……、さっきのが近いかも」
「え?」
「だから、戦って、飯を食う……って言うとアレだな……。あーっと……、キャンプみたいな?」
「キャンプ……ですか?」
「あくまで、想像だぜ? 戦ってるやつらと、作ってるやつらで同盟組んどけってことじゃねーかな?」
あー……、なるほど……。
戦うのがメインだけじゃなくて、生産メインの人も楽しめるイベントってことなら、可能性はあるかも?
それに、そのイベント内容なら、第2生産版で始めた人も気軽に参加できそうだし……。
「たしかに、そうかも知れませんね」
「だろー? それでさ、アキちゃんの知り合いに飯作れるやついないか!? 旨いやつ!」
「え、えぇっと……。フレンドにはいないんですけど、知り合いには……いる、かも?」
「おぉ! じゃあ、その人も誘って! そんで、アキちゃんがパーティーリーダーになってくれれば、うちのと同盟組めるしさ!」
え、えぇ……?
一応、さっきフレンドリスト見たときに聞いてみようと思ってた人だからいいけど……。
大丈夫かなぁ……、ジンさん……、こんなに勝手に決めてアルさんに怒られないかなぁ……?
「あの、この件はアルさんには……?」
「言ってない! でも、多分大丈夫だ!」
「えぇ……?」
その日は、とりあえずなんとかテンションを落ち着けてもらって、ジンさんにアルさんへの連絡をお願いして、お開きに。
ひとまず、僕も聞いてみないとなぁ……と、疲れた顔でシルフと笑った。
本当に、いいのだろうか、と。
もちろん、僕もあの時はすごく楽しかったし、できるならまた一緒に楽しみたいって想いもある。
けど……。
目線を手から外し、僕の横へとずらす。
そこには、シルフが立っていて……、彼女は僕の視線に気付いて柔らかく微笑んだ。
「……、ジンさん」
「お? なんだ?」
目線を上げて、僕より高いジンさんの目をまっすぐ見る。
背の高い彼の目は、髪よりも暗い赤色で……怯むことなく堂々とした輝きがあった。
「……、少し教えて欲しいことがあります。この場所だと、人が多いので……」
「お、わかった。そんじゃ移動すっか?」
「えっと、おばちゃんの雑貨屋にしましょう。作業途中で出てきたので、そろそろ戻りたいですし」
僕の言葉に、ほう、と頷いて、ジンさんは背を向ける。
そして、そのまま歩き出した彼に遅れないよう、僕らはその背を追った。
「それで、何を教えてほしいって?」
作業台を挟んで向かい側に座ったジンさんが、作業が落ち着いた頃合いを見て、問いかけてくる。
僕は瓶ーー上手いこと成分が抜け出ていた水を容れた瓶を、インベントリにしまい、口を開いた。
「ジンさんはご存じの通り、僕にはシルフがいます」
「あぁ、そうだな」
僕の言葉に、ゆっくりとシルフが実体化し、僕の隣の椅子へ腰掛ける。
まだシルフとしては、ジンさんに慣れていないのか、少しだけ会釈して、だが。
「その、シルフは……、イベントに参加できるんでしょうか……?」
「ん? あー……」
「シルフには、あの告知文が見えなかったみたいで……」
「んー……、多分大丈夫じゃねーかなぁ……?」
ジンさんは、悩むように頭を右手で掻きながら、唸り声でそう言葉にする。
それは、僕としては予想外な答えだっただけに、え? と聞き返すことしかできなかった。
「ってのものなぁ……。このゲームがどうかはわかんねぇけど、基本的に契約してるってやつなら、つれていけるってのが多いんだよ」
「そうなんですか?」
「あぁ。ってのも、例えばビーストテイマーみたいな、使役する系の戦い方するやつなら、契約してる動物がいなきゃ戦えないだろ? だから、基本的に他のゲームなんかじゃ契約してるやつはつれていけるんだが……」
あぁ、それで多分ってことなんだ……。
もしそれらのゲームと一緒なら、シルフも一緒に行けるんだけど……。
「ただまぁ、なってみないとわかんねぇな。ごめん」
「そんな! 教えてくれてありがとうございました! 僕がその辺り、詳しくないもので……」
頭を下げたジンさんに、手を振りながら、すぐに頭を上げてもらう。
だって、僕としては頭を下げてもらう理由もないから!
「そ、それより……。ジンさん的には、どんなイベントになると思います?」
「ん? あー……、アキちゃんは? どう思う?」
「うぇ!? 僕ですか……!? あー、うーん……」
話題を変えようと投げた話を、まさかこっちに返してくるとは……。
でも、どんなイベントかー……、うーん……。
「サーバーに転送して……、うーん……。スキルアップイベント的な……?」
「あー……、それもあるかも知れねぇなぁ……」
「ジンさんはどう思います?」
「俺? 俺としては、まぁ……戦えて、旨い飯が食えるなら何でもいいんだが……」
そういえば、ジンさんって茶毛狼の時に、焼けた兎肉の匂いでお腹空かしてたっけ。
だから、戦って終わった後に、街に帰ってから食堂に行ったんだよね。
楽しかったなぁ……。
「あ……。アキちゃん、もしかすると今回のイベント……、さっきのが近いかも」
「え?」
「だから、戦って、飯を食う……って言うとアレだな……。あーっと……、キャンプみたいな?」
「キャンプ……ですか?」
「あくまで、想像だぜ? 戦ってるやつらと、作ってるやつらで同盟組んどけってことじゃねーかな?」
あー……、なるほど……。
戦うのがメインだけじゃなくて、生産メインの人も楽しめるイベントってことなら、可能性はあるかも?
それに、そのイベント内容なら、第2生産版で始めた人も気軽に参加できそうだし……。
「たしかに、そうかも知れませんね」
「だろー? それでさ、アキちゃんの知り合いに飯作れるやついないか!? 旨いやつ!」
「え、えぇっと……。フレンドにはいないんですけど、知り合いには……いる、かも?」
「おぉ! じゃあ、その人も誘って! そんで、アキちゃんがパーティーリーダーになってくれれば、うちのと同盟組めるしさ!」
え、えぇ……?
一応、さっきフレンドリスト見たときに聞いてみようと思ってた人だからいいけど……。
大丈夫かなぁ……、ジンさん……、こんなに勝手に決めてアルさんに怒られないかなぁ……?
「あの、この件はアルさんには……?」
「言ってない! でも、多分大丈夫だ!」
「えぇ……?」
その日は、とりあえずなんとかテンションを落ち着けてもらって、ジンさんにアルさんへの連絡をお願いして、お開きに。
ひとまず、僕も聞いてみないとなぁ……と、疲れた顔でシルフと笑った。
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