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第2章 現実と仮想現実

第95話 前情報

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 おばちゃんのお店の前から伸びる大通りを、シルフと2人でのんびり歩く。
 そんな僕らとすれ違うように、走っていく人達。
 なんだか忙しそうな人が多くて、少し周りの話に耳を傾けてみれば、どうやら次の生産分で来る人達に対しての準備で、走り回ってるみたいだ。
 しかもどうやら、装備品やお薬を作る生産メインの人だけが忙しいわけじゃないみたい。
 戦闘メインの人も、今のうちにスキルを上げてしまおうと思ってる人や、生産メインの人の材料集めの依頼を受けてたりと、みんなそれぞれの理由で忙しくしてる。

「なんだか、すごいね……」
(そう、ですね……)

 朝、露店を見に行った時にはいなかっただけに、この変わりようにはちょっと戸惑ってしまう。
 確かに、第2生産分の人のログイン開始は2日後の日曜日だけど……。
 そんなことを思いながらそのまま歩いていけば、街の中心にある広場に近づくほどに人の数は増えていく。
 こんなにも人がいたんだって思うくらい、会話する声や鎧の擦れる音で、すごい賑やかだ。

「っと、あったあった」

 そんな広場の片隅に小さな掲示板が設置されていた。
 普段から街のお知らせなんかを貼ってるみたいなんだけど、今はそれの他にイベントの告知も貼ってあるらしい。
 掲示板に近づいて見てみれば、えーと……、次の行商の日程から、お店の広告、はたまた街の一斉美化のお知らせなんかもある。
 掲示板を眺めているだけでも、ゲームのはずなのに、本当にこの街で人が生きているような、そんな気がしてしまう。

 そんな思いを抱きつつ、掲示板の中で視線を動かしていけば……。
 あったあった、<Life Game>プレイヤーへのイベントのお知らせ。
 街の住民へのお知らせに混じって、普通に貼ってある……。

(ほんとに、私だと読めないですね)
(ん? そうなの?)
(はい。その……紙があることはあるんですが、真っ白で何も書いてない物に見えますね)
(なるほど……)

 どんなシステムなのかはわからないけれど、元からこっちの世界の人には見えない……か。
 本当に、なにをするんだろ……。

(ですので、アキ様。もしよろしければ読み上げていただければ……)
(あぁ、うん。わかった)

 シルフに伝える前に、ひとまず僕は告知全体へ目を通すことにした。
 んー……、でも、まだあんまり情報は出てない感じかなぁ……。

(えーと、開催日が来週の日曜日だから……、あと9日後だね)
(結構近いですね)
(そうだね。あと、開始の時はどこにいてもいいみたい)
(そうなんですか?)
(うん。参加する人は、そこからイベントの場所に転送されるみたいだ)

 それからも、とりあえずシルフが分かるようにかみ砕いて説明していく。
 転送される世界サーバーが何ヵ所かに分けられるみたいで、仲の良い人同士でパーティーを組んでおけば、同じ世界サーバーに振り分けられる、とか。
 パーティーのリーダーと、もう1つのパーティーのリーダーでこのイベント中だけの同盟? みたいなものを設定できるみたいで、その同盟を結んだパーティーも同じサーバーに振り分けられるみたい。
 同盟は1つとしか組めないみたいだけど、そうすることで、パーティーの最大人数の5人と、もう一つのパーティーの最大人数5人が一緒にできる……。
 頭が混乱してきたけど、要は10人まで一緒にイベントできるよってことだね!

 あとは、装備品を含めて、アイテムの所持上限が20種類までの、全部で80個まで……。
 えーっと……、今僕が装備してる装備品が、

 武器:草刈鎌
 防具:ホワイトリボン
    <収穫の日ハーベスト>シリーズ・上
    <収穫の日ハーベスト>シリーズ・中
    <収穫の日ハーベスト>シリーズ・下
    <収穫の日ハーベスト>シリーズ・鞄
    トレッキングブーツ

 これだけで、7個……。
 それに加えて、武器があと、ノミ、木槌、ツルハシの3つ。
 と言っても、木槌は壊れちゃってるから、イベントまでに作ってもらえれば、だけど……。

 他にも、絶対に持っておいたほうが良いのは、ポーション系と……、僕の場合は薬草とか、アクアリーフの蜜とか……。
 あと携帯用コンロも必要かなぁ……、もしかすると外で作らないといけないかもしれないし……。
 それに、すり鉢と棒……
 あっ、鍋とか包丁なんかもどうにかしなきゃ……、今おばちゃんに借りてるわけだし……。

(アキ様、あの……。ひとつ気になってることがあるのですが……)
(ん? なに?)

 そんな風に、僕が掲示板の前で云々唸ってると、シルフが小さな声で話しかけてくる。
 だから僕はひとまず考えるのをやめて、シルフの方へ意識を向けると――

(私……、アキ様と一緒に行けるのでしょうか……?)

 なんて、少し寂しそうな顔をしながら僕に問いかけてきたんだ。
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