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第2章 現実と仮想現実
第87話 成功という失敗
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「ん……? もしかすると、上書きで消すんじゃなくて……」
「アキ様……?」
「たしか前に……。おばちゃんが、飲みにくいのは悪い部分が出てるからって……」
だとすると、苦みは……、悪い部分なのかな……?
でも、いったい何をすれば、それが消せるんだろう……。
「んー……、わかんないなぁ……」
「えっと……、アキ様……?」
「ぁ、ごめん。もしかすると、味を足すのは後なんじゃないかなって」
「後、ですか?」
「うん。ただの思い付きでしかないんだけど、薬草の苦みと、アルペの甘みがぶつかり合ってるのかなって」
飲んでからすぐに、アルペの味はした。
けど、薬草の味も消えてなかった。
すごく不味かったけど、アイテムとしては[最下級ポーション(良)]、つまり成功品という扱いになっていたんだ。
「それで、アキ様はなにがわからないのでしょうか?」
「んー……、薬草の苦みの消し方、かなぁ?」
「なるほど……」
「おばちゃんとかには、極力頼らないで頑張りたいんだよね……」
そう思って、知り合いに詳しそうな人がいないか考えてみたけど、思い付かない……。
そもそも、調薬とか生産活動をしている知り合いが、あまりいないし……。
「こんにちは。アキさん、おられますか?」
腕を組みつつ唸っていた僕の耳に、僕を呼ぶ声が聞こえた気がする。
頭を上げてみても顔は見えない……、聞いたことがある声だった気がするんだけど……。
気のせいかと思ったけど、お店の方で対応するおばちゃんの声が聞こえて来たから、まだお店の方にいるんだろう。
「誰だろ……?」
(お声は女性でしたけど……)
見えないように、姿を消したシルフの声が、頭の中に響く。
それと同時にお店の方から、人が歩くような音が近づいてきた。
「アキさん、おられますか?」
「あ、はい」
戸を開けて、一人の女性が僕の前に姿を見せる。
少し会釈をするだけで、ウェーブのかかった青く長い髪が、彼女の顔の回りに流れ落ちた。
「すみません、いきなりの訪問で……」
「大丈夫ですけど……。カナエさん、なにかご用がありました?」
「いえ、もしよろしければご一緒にお菓子でも、と思いまして……」
お菓子……?
そう思って、ゲーム内の時間を確認すれば、時間的にはちょうど15時を過ぎた辺り。
まぁ、これ以上考えてても進まなさそうだし……、ちょっと休憩するのもありかなぁ……?
(アキ様、休憩も大事ですよ)
まぁ、シルフもそう言ってるし、今日はとりあえず切り上げてしまおうかな!
「わかりました! 片付けますので、ちょっとだけ待っててくださいね!」
「はい、ありがとうございます」
カナエさんの返事を聞きつつ、使っていた鍋や包丁なんかを水で綺麗に洗っていく。
そういえば、もし街を出て次の場所にいくとしたら……、設備どうしようかなぁ……。
今は、おばちゃんが貸してくれてるから、気にしなくていいんだけど……
「よしっと……。お待たせしました」
「いえいえ、急に来た私が悪いですので、気にしないでください。それにしても……」
カナエさんが、物珍しそうに部屋のなかを見回していく。
僕はもう慣れてしまったけど、生産しない人からすれば、こんな風に作業場に入ることもないだろうし、なんとなく気持ちはわかるかもしれない。
「なんだか、懐かしいようで……。でも、所々にゲームっぽさが感じられて……。いいですね」
「そう、ですか?」
「えぇ、とても」
そう言って微笑むカナエさんに、少し首を傾げながら近づいていく。
たしかお菓子って言ってたけど……?
「えっと……、それで、どこに行くんですか?」
「街の東側って行ったことがありますか?」
「たしか、建物の少ない田畑とかのエリアでしたよね?」
「そうですね。先日、そこの一角に、プレイヤーの喫茶店がオープンしまして……」
なるほど……、たしかにあのエリアなら土地も空いてるから新しい建物を建てるなら良いのかも。
でも、人があまり近づかない場所だけど、経営は大丈夫なのかな……?
「とりあえず、東側に向かいます?」
「ですね、お店の場所はわかりますので、ひとまず大通りをまっすぐですね」
そう言って、カナエさんは入ってきた戸を抜けて、お店の方へと歩き出す。
僕もシルフと頷きあって、カナエさんの後を追いかけた。
「アキ様……?」
「たしか前に……。おばちゃんが、飲みにくいのは悪い部分が出てるからって……」
だとすると、苦みは……、悪い部分なのかな……?
でも、いったい何をすれば、それが消せるんだろう……。
「んー……、わかんないなぁ……」
「えっと……、アキ様……?」
「ぁ、ごめん。もしかすると、味を足すのは後なんじゃないかなって」
「後、ですか?」
「うん。ただの思い付きでしかないんだけど、薬草の苦みと、アルペの甘みがぶつかり合ってるのかなって」
飲んでからすぐに、アルペの味はした。
けど、薬草の味も消えてなかった。
すごく不味かったけど、アイテムとしては[最下級ポーション(良)]、つまり成功品という扱いになっていたんだ。
「それで、アキ様はなにがわからないのでしょうか?」
「んー……、薬草の苦みの消し方、かなぁ?」
「なるほど……」
「おばちゃんとかには、極力頼らないで頑張りたいんだよね……」
そう思って、知り合いに詳しそうな人がいないか考えてみたけど、思い付かない……。
そもそも、調薬とか生産活動をしている知り合いが、あまりいないし……。
「こんにちは。アキさん、おられますか?」
腕を組みつつ唸っていた僕の耳に、僕を呼ぶ声が聞こえた気がする。
頭を上げてみても顔は見えない……、聞いたことがある声だった気がするんだけど……。
気のせいかと思ったけど、お店の方で対応するおばちゃんの声が聞こえて来たから、まだお店の方にいるんだろう。
「誰だろ……?」
(お声は女性でしたけど……)
見えないように、姿を消したシルフの声が、頭の中に響く。
それと同時にお店の方から、人が歩くような音が近づいてきた。
「アキさん、おられますか?」
「あ、はい」
戸を開けて、一人の女性が僕の前に姿を見せる。
少し会釈をするだけで、ウェーブのかかった青く長い髪が、彼女の顔の回りに流れ落ちた。
「すみません、いきなりの訪問で……」
「大丈夫ですけど……。カナエさん、なにかご用がありました?」
「いえ、もしよろしければご一緒にお菓子でも、と思いまして……」
お菓子……?
そう思って、ゲーム内の時間を確認すれば、時間的にはちょうど15時を過ぎた辺り。
まぁ、これ以上考えてても進まなさそうだし……、ちょっと休憩するのもありかなぁ……?
(アキ様、休憩も大事ですよ)
まぁ、シルフもそう言ってるし、今日はとりあえず切り上げてしまおうかな!
「わかりました! 片付けますので、ちょっとだけ待っててくださいね!」
「はい、ありがとうございます」
カナエさんの返事を聞きつつ、使っていた鍋や包丁なんかを水で綺麗に洗っていく。
そういえば、もし街を出て次の場所にいくとしたら……、設備どうしようかなぁ……。
今は、おばちゃんが貸してくれてるから、気にしなくていいんだけど……
「よしっと……。お待たせしました」
「いえいえ、急に来た私が悪いですので、気にしないでください。それにしても……」
カナエさんが、物珍しそうに部屋のなかを見回していく。
僕はもう慣れてしまったけど、生産しない人からすれば、こんな風に作業場に入ることもないだろうし、なんとなく気持ちはわかるかもしれない。
「なんだか、懐かしいようで……。でも、所々にゲームっぽさが感じられて……。いいですね」
「そう、ですか?」
「えぇ、とても」
そう言って微笑むカナエさんに、少し首を傾げながら近づいていく。
たしかお菓子って言ってたけど……?
「えっと……、それで、どこに行くんですか?」
「街の東側って行ったことがありますか?」
「たしか、建物の少ない田畑とかのエリアでしたよね?」
「そうですね。先日、そこの一角に、プレイヤーの喫茶店がオープンしまして……」
なるほど……、たしかにあのエリアなら土地も空いてるから新しい建物を建てるなら良いのかも。
でも、人があまり近づかない場所だけど、経営は大丈夫なのかな……?
「とりあえず、東側に向かいます?」
「ですね、お店の場所はわかりますので、ひとまず大通りをまっすぐですね」
そう言って、カナエさんは入ってきた戸を抜けて、お店の方へと歩き出す。
僕もシルフと頷きあって、カナエさんの後を追いかけた。
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