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第2章 現実と仮想現実
第86話 アルぺの実
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露店でお姉さんに売ってもらった実をインベントリから取り出し、いつもの作業台に置く。
丸く、色は薄緑で、持ち上げて嗅いでみれば、少し甘い香り。
鑑定してみれば、[アルペの実]という名前みたいだ。
[アルペの実:ほのかに甘い果汁が特徴の実]
試食で食べたときにも思ったけど、たぶんこれは現実世界でいうところの、りんごだと思う。
「んー……、まずは果汁でジュースを作ってから、薬と混ぜれるか試してみようかな」
というわけで、まずは[アルペの実]を水で洗い、拭いてから包丁で切る。
そのあいだに、シルフにすり鉢セットと清潔な布を用意してもらい、洗ってもらった。
そして、乾かしたすり鉢に布を敷き、細かく切った[アルペの実]を、その上に乗せて潰していく。
「ある程度潰れたところで、布で包むように持ち上げて……」
中の実を搾るように、手に力を加えていけば、すり鉢の中に果汁が絞り出されていく。
ただ、この作業、かなり力が必要かもしれない……。
「これは……、結構大変だね……」
「なにか道具があれば良いのですが……」
少し休憩してから、絞った果汁を数本の瓶に詰めていき、そのうちの一本を軽く飲んでみる。
舌を伝わる甘味が、少し疲れた体に浸透していくような気がした。
出来ればこの果汁を使って、上手いことお薬に味が付けれればいいんだけど……。
「とりあえず、ポーションを作る時に水に混ぜるかなぁ……?」
「でも、混ぜるにしても、どのタイミングで混ぜるのでしょう……?」
「んー……。そもそも、これに熱を加えても大丈夫かどうか、から調べてみるかなぁ……」
「そうですね。それが良さそうです」
小さい鍋に瓶1本分を移し、火にかけていく。
少し温まってくれば、次第に甘い匂いが強くなってきたように感じた。
「んー……、味もちょっとだけ甘くなってるみたい」
少しだけお玉で掬って、飲んでみれば、強くなった味に驚いた。
この味なら、お薬の味にも負けない気がする……。
「火にくべても、問題なさそうですね」
「うん。これならお薬を作ってる最中にいれても、大丈夫かな?」
といっても、お薬と果物を組み合わせるだけだから、そんなに変なことにはならないと思うんだけど……。
あと、混ぜるタイミングとしては、薬草と合わせる前の水に混ぜる、薬草と合わせて煮てる最中に混ぜる、全部終わって最後に混ぜる、くらいかな?
一つずつやっていくとして……、まずは最初から混ぜてみるかな……。
「えーっと、果汁の分だけ水の量を減らして……」
いつもの鍋に水を入れていき、そこに果汁を追加。
水と果汁が混ざるように、火にかける前によくかき混ぜておくことも忘れないでっと……。
「あとはいつも通り、刻んだ薬草を加えて火にかけて……」
次第に浮かび上がってくる灰汁をお玉で取り除き、ある程度のところで火を止める。
シルフにお願いして、冷ましてもらったあと、瓶に詰め替えていけば……。
「うん、ひとまず完成、だね」
見た目的には、いつもとほとんど変わらない。
少しだけ匂いが甘く感じる気がする……。
ただ、鑑定してみても、表示される文字は普段の[歳下級ポーション(良)]と変わらなかったけど。
「んー……、飲んでみるしかなさそうだね……」
「そう、ですね……」
「一応、水をすぐ飲めるように用意しておいてっと……」
いざとなればすぐに手が届くように、近くに水を置いておく。
また、シルフも実体化して、もし僕が倒れそうになったとしても、支えられるよう傍に立った。
「よしっ!」
腰に手を当てて、一気にポーションをあおる。
口当たりの良い、アルペの味がして……。
直後、それを上書きするかのように、薬草の苦味が一気に襲ってきた。
「んぐっ!?」
甘さを感じたせいか、余計に強く感じた苦味が、どろりと喉を抜けていく。
「うへぇ……」
なんとか飲みきって息を吐けば、喉の奥から薬草の苦味と、アルペの甘味が同時に戻ってきて、余計に気持ち悪い……。
これは、確実に……失敗……。
「これは、ダメだ……」
「みたいですね……」
用意しておいた水を飲みながら、シルフと少し話をして、気分を紛らわしていく。
というか、これはほんとにダメ。
こんなのを、戦闘中に飲んだら、絶対危険すぎる。
特に、甘味の後に苦味とか、もう完全に劇薬みたいなものじゃないか……!
「ん……? もしかすると、上書きで消すんじゃなくて」
ふと、頭に思い付いたことを、考えもせずに口に出してしまう。
ただ、根拠はないけれど、なんだかその考えが、正しいような気がした。
丸く、色は薄緑で、持ち上げて嗅いでみれば、少し甘い香り。
鑑定してみれば、[アルペの実]という名前みたいだ。
[アルペの実:ほのかに甘い果汁が特徴の実]
試食で食べたときにも思ったけど、たぶんこれは現実世界でいうところの、りんごだと思う。
「んー……、まずは果汁でジュースを作ってから、薬と混ぜれるか試してみようかな」
というわけで、まずは[アルペの実]を水で洗い、拭いてから包丁で切る。
そのあいだに、シルフにすり鉢セットと清潔な布を用意してもらい、洗ってもらった。
そして、乾かしたすり鉢に布を敷き、細かく切った[アルペの実]を、その上に乗せて潰していく。
「ある程度潰れたところで、布で包むように持ち上げて……」
中の実を搾るように、手に力を加えていけば、すり鉢の中に果汁が絞り出されていく。
ただ、この作業、かなり力が必要かもしれない……。
「これは……、結構大変だね……」
「なにか道具があれば良いのですが……」
少し休憩してから、絞った果汁を数本の瓶に詰めていき、そのうちの一本を軽く飲んでみる。
舌を伝わる甘味が、少し疲れた体に浸透していくような気がした。
出来ればこの果汁を使って、上手いことお薬に味が付けれればいいんだけど……。
「とりあえず、ポーションを作る時に水に混ぜるかなぁ……?」
「でも、混ぜるにしても、どのタイミングで混ぜるのでしょう……?」
「んー……。そもそも、これに熱を加えても大丈夫かどうか、から調べてみるかなぁ……」
「そうですね。それが良さそうです」
小さい鍋に瓶1本分を移し、火にかけていく。
少し温まってくれば、次第に甘い匂いが強くなってきたように感じた。
「んー……、味もちょっとだけ甘くなってるみたい」
少しだけお玉で掬って、飲んでみれば、強くなった味に驚いた。
この味なら、お薬の味にも負けない気がする……。
「火にくべても、問題なさそうですね」
「うん。これならお薬を作ってる最中にいれても、大丈夫かな?」
といっても、お薬と果物を組み合わせるだけだから、そんなに変なことにはならないと思うんだけど……。
あと、混ぜるタイミングとしては、薬草と合わせる前の水に混ぜる、薬草と合わせて煮てる最中に混ぜる、全部終わって最後に混ぜる、くらいかな?
一つずつやっていくとして……、まずは最初から混ぜてみるかな……。
「えーっと、果汁の分だけ水の量を減らして……」
いつもの鍋に水を入れていき、そこに果汁を追加。
水と果汁が混ざるように、火にかける前によくかき混ぜておくことも忘れないでっと……。
「あとはいつも通り、刻んだ薬草を加えて火にかけて……」
次第に浮かび上がってくる灰汁をお玉で取り除き、ある程度のところで火を止める。
シルフにお願いして、冷ましてもらったあと、瓶に詰め替えていけば……。
「うん、ひとまず完成、だね」
見た目的には、いつもとほとんど変わらない。
少しだけ匂いが甘く感じる気がする……。
ただ、鑑定してみても、表示される文字は普段の[歳下級ポーション(良)]と変わらなかったけど。
「んー……、飲んでみるしかなさそうだね……」
「そう、ですね……」
「一応、水をすぐ飲めるように用意しておいてっと……」
いざとなればすぐに手が届くように、近くに水を置いておく。
また、シルフも実体化して、もし僕が倒れそうになったとしても、支えられるよう傍に立った。
「よしっ!」
腰に手を当てて、一気にポーションをあおる。
口当たりの良い、アルペの味がして……。
直後、それを上書きするかのように、薬草の苦味が一気に襲ってきた。
「んぐっ!?」
甘さを感じたせいか、余計に強く感じた苦味が、どろりと喉を抜けていく。
「うへぇ……」
なんとか飲みきって息を吐けば、喉の奥から薬草の苦味と、アルペの甘味が同時に戻ってきて、余計に気持ち悪い……。
これは、確実に……失敗……。
「これは、ダメだ……」
「みたいですね……」
用意しておいた水を飲みながら、シルフと少し話をして、気分を紛らわしていく。
というか、これはほんとにダメ。
こんなのを、戦闘中に飲んだら、絶対危険すぎる。
特に、甘味の後に苦味とか、もう完全に劇薬みたいなものじゃないか……!
「ん……? もしかすると、上書きで消すんじゃなくて」
ふと、頭に思い付いたことを、考えもせずに口に出してしまう。
ただ、根拠はないけれど、なんだかその考えが、正しいような気がした。
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