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第1章 新しい世界と出会い

第57話 新装備

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「リアさん、これからどうしましょうか?」

 半ば放置されるようにお店の中に置いてけぼりとなった僕らは、ひとまずあのお店にいても仕方ないと、外に出ることにした。
 このとき驚いたのは、お店を出ると、着ていた服が自動的に元の服に戻ったことだ。
 きっと、購入していない服は、お店の外では使えないという条件になっているんだろう……すごい防犯システムだ。

「そうね、どうしようかしら? アキちゃん、他に必要なものはない?」
「必要なもの、ですか? そうですね……もし時間があれば、靴も見ておきたいかなとは」

 装備を調えたのに、靴だけは初期装備っていうのもなんだか味気ない。
 それにこの靴も、簡易的な丸靴みたいな感じで、外での活動に向いてるわけじゃないしね。

「靴ね。時間は大丈夫だけど、靴職人の知り合いはいないからウィンドウショッピングしながら探してみましょうか」
「はい! ありがとうございます!」

 街の北側には、冒険者向けの武器や防具のお店が連なっている。
 僕が北側に来るのは、訓練所に用事があるときばかりだったので、こうやって商品を選ぶ立場としてお店を見てまわったことはなかった。
 だからだろう、お店へ入ってみるたびに違う商品を推しているのがすごく面白くて、靴を買うという目的がなければ、もっとゆっくり見てまわっていたかもしれない。
 あと、リアさんがいてくれたおかげで、僕には思いつかない道具の使い方なんかも教えてもらえて、とても有意義な時間だった。

「アキちゃんの選んだ装備と相性が良くて、かつ動きやすい靴となると……」
「スニーカーとかみたいな、咄嗟に飛べたり走れたりできるものが良いんですが」
「スニーカーねぇ……。ちょっと装備に合わない気がするから、そうね。ブーツなんてどうかしら?」
「ブーツですか? たぶん大丈夫だと思いますけど」

 そんなこんなで話をしながら、そして靴のお店では時間も掛けながら何件も見てまわる。
 その結果、山道でも歩けるように作られているらしい、トレッキングブーツを買うことが出来た。

 ちなみに途中のお店で、リアさんに「アキちゃんは普段現実で、ヒールのある靴とかは履かないの?」と訊かれたんだけど……。
 そもそも僕は現実では男なわけで……そうなると履く機会なんて滅多にないわけで。
 そんな僕を見かねて、リアさんにローヒールな靴を履かされたけれど……アレは無理だ。
 むしろ、なんで世の女性はアレを履いて軽快に歩けるのか。
 それがとても不思議になった出来事だった。

「アキちゃん、他にはもうない?」
「あ、はい。たぶん大丈夫だと思います」
「そう? もし何かあったら言ってね? 今だけじゃなくて、これからも」
「はい。ありがとうございます」

 そう言って頭を下げた僕に対し、リアさんは優しい手つきで頭を撫でてくれる。
 こうして撫でられるのも本当に多くなった気がする。
 なんというか……小さい子扱いされてる気がする、いろんな人から。

「それじゃ戻ろっか。そろそろ良い時間だろうし」
「はい!」

 頷いた僕に笑顔を見せてから、リアさんは颯爽と歩き始める。
 その横に並びながら、僕は新しい装備で行く、明日の森が楽しみになっていた。



「2人ともお帰りなさい。作業の方は滞りなく終わってますので、すぐにでもお渡しできますよ」
「さすがキャロね」
「ありがとうございます!」
「服の方もアキさんの体型に合わせて、多少手直しをしてますので、さっきよりは動きやすくなってるかと思います」

 そう言いながら、僕に服を渡し、その上に今作ったらしいウエストポーチを置いてくれた。
 新しく作ってくれたウエストポーチは、僕がシルフのリボンにした布よりも濃い赤色に染まっており、多少汚れても大丈夫そうだ。
 でも、どうやって濃い色に染めたんだろう……と、気になったことをキャロさんに訊くと、彼女は「ああ、それはですね」と説明をしてくれた。

「染色は時間だけではなく、温度や冷ます速度なんかでも色が変化するんですよ。今回のこれは長く漬け、冷水で締めてという工程を繰り返したことで、色が濃く変化したんですよ」
「な、なるほど……そんな手が」
「こればっかりは思いつくことを試して確認するしかないですからね。その辺りは専門職の腕の見せ所です」

 僕の反応に胸を張りつつ、キャロさんはドヤ顔を披露してくれる。
 しかし、実際僕も知らなかった手順なだけに、そのドヤ顔も納得するしかなく、リアさんと2人で苦笑しつつ手を叩いた。

「では、最終チェックをしたいので、一度全てを着てみていただいてもよろしいですか?」
「あ、でしたらさっき買ってきた靴も合わせてみていいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」

 受け取った装備を抱えたまま、数時間前に入った更衣室へもう一度足を踏み入れる。
 そうして着替えようとした瞬間、さっきの熱を思い出しそうになって……僕は強く頭を振った。

「……忘れよう、うん」

 そう心に決めて、着ているワンピースへと指をかける。
 妙に顔が熱い気がするけれど、そこは気にしないよう、目を閉じて一気に着替えを進めた。
 うん、最初からこうすればよかったのだ。
 見て恥ずかしいなら、見なければいい。
 それが最初から出来ていれば、あんなことは……その、しなかった……のに……。

(アキ様……?)
(な、なな、なんでもないよ!)

 クリーム色のトップスを着て、こげ茶のキュロットスカートに足を通す。
 そして、カーキ色の半袖ジャケットを羽織り、買ってきた黒のトレッキングブーツに足を入れる。
 最後に、濃い赤色のウエストポーチを腰に回せば……完成だ!
 キャロさんが言ってた通り、調整をしてくれたからか、さっきよりも動きやすい気がする。
 それに、靴も服に合わせて買ったからか、単体ではそれなりにゴツめの印象だったけど、うまく調和していて、まるで揃いであつらえたようにも見えた。
 その結果、僕の前方に置かれた全身鏡には……動きやすさを重視しながらも、可愛さも兼ね備えた、1人の女の子が映っていた。

「こ、これ……僕だよね?」

 鏡に映る自分の姿に、そんな言葉が口から零れる。
 女の子達がおしゃれを頑張る理由が、なんとなく分かった気がする。
 着る服ひとつで、全然雰囲気が変わってくるんだなぁ……。
 そんなことを思いながらも、ついジワジワと鏡に近づいていたことに気付いた僕は、慌てて後ろへと下がる。
 危ない危ない……危険な扉を開きそうな気がしたぞ……。

「……よし!」

 更衣室の扉の前で気合いを入れて、ノブを回す。
 ガチャリと音がして、開いた扉の先には……僕の方を見る2人がいた。
 きっと、扉が開く音で気付いたんだろう。

「アキちゃん可愛い!」

 まるで飛び込むかのように抱きついてきたリアさんに、バランスを崩しそうになりながらも、なんとか耐える。
 そんな彼女の後ろから近づいてきたキャロさんが、僕からリアさんを引き剥がし、全身をくまなくチェックしていく。
 そして、背中部分まで全て確認をした後、僕の前で笑顔を見せながら「特に問題はなさそうですね」と言った。

「一応、ジャケットには耐久力のある繊維を織り込んでありますので、今までよりも多少は防御力も上がっているかと思います。ただ、あくまでも動きやすさを阻害しない程度に、ですので、信用しすぎないようにお願いします」
「はい。ありがとうございます!」

 キャロさんの説明に頷き、しっかりとお礼の言葉を伝える。
 そんな僕の言葉に照れたのか、キャロさんは少し顔を赤らめつつ、小さく咳払いをしてから再度口を開いた。

「今回のお代に関してですが、請求前にひとつお聞きしたいことがありまして」
「ん? なんですか?」
「アキさんの[染色液]ですが、まだ在庫はありますか? あと、他の色を作れたりは……?」
「在庫はまだ数本ならありますよ。他の色に関してはー、材料が分かれば作れるかもしれないです」
「なるほど……。でしたら、在庫分を買い取らせていただいてもよろしいですか? もちろん、その分を装備の代金から差し引かせていただきますので」
「是非、お願いします……!」

 僕の返事に頷きつつ、キャロさんは続けて「また、他の染色液が出来ましたら、その時もできれば優先的に回していただけると嬉しいです」と、僕にフレンド申請を飛ばしてくる。
 その申請に驚きつつも、生産メインのプレイヤーとの繋がりは初めてなことに喜びながら、僕はフレンドを受け入れた。
 まぁ、優先的にって言われても……僕は使わないから、使ってもらえる人に渡すのは全然問題ないしね?
 ちなみに、キャロさんも生産プレイヤーとのフレンド登録は初めてだったらしく、非常に嬉しそうだった。

「それじゃ、キャロ。またくるね」
「はい、また何かありましたら」
「ありがとうございました!」

 そんなこんなで話も全てまとまったこともあり、代金を支払い、僕らはお店の外に繋がる扉をくぐった。
 いい装備も買えたし、これからは外で作業するのも少しは安心できそうだ!



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名前:アキ
性別:女
称号:ユニーク<風の加護>

武器:草刈鎌
防具:ホワイトリボン
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スキル:<採取Lv.10><調薬Lv.12→13><戦闘採取術Lv.7><鑑定Lv.3>

精霊:シルフ
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