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第1章 新しい世界と出会い
第38話 知るべきこと
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「――君がいま、何を思っておるのかはわかる。じゃが、それもまた事実じゃ」
放心するように固まった僕を見て予想がついたのか、ジェルビンさんは目を閉じ、軽く頷く。
「でも、そんな、」
「どんなに優れた人であろうと、忌み嫌う者はおる。それはどうすることもできないことじゃ。――じゃが、その悪意で倒れるかもしれぬ人を救うことはできる。儂には無理じゃったが、君ならばまだわからん。そうじゃろう?」
「……はい」
「うむうむ。励むのじゃぞ」
実際、僕がひとりで頑張ったところで、猛毒の脅威は多分減らない。
けれど、ジェルビンさんがいった通り、倒れるかもしれない人を助けることはできるのかもしれない。
そのための第一歩はおばちゃんが支えてくれた。
だからこそ僕は、僕がやれることを精一杯やってみるしかないんだ。
「さて、気を取り直して次じゃな」
「えっと、最後のは……特殊な毒、でしたか?」
「そうじゃな。これらは毒じゃが、他の毒とは違い、肉体に影響を及ぼすものじゃ。麻痺、石化、魔力消失などがこれに当たるのぅ」
「魔力消失?」
「魔力消失というのは、毒によって魔力が勝手に発散されてしまうものじゃ。普段は魔法を使う者に使われる軽度なものが多いが、物によっては極限まで魔力を消耗させ、意識を落とす手段に使われるものもあるのぅ」
「なるほど……。あとの麻痺はわかりますが、石化もなんですね」
「そうじゃな。ただ魔法によるものもあるからのぅ。原因次第じゃ」
原因次第ってことは、麻痺や石化、魔力消失なんかの特殊なパターンは、お薬が効かない場合があるってことかな?
「例えば原因が毒じゃない場合の麻痺とか石化は、お薬だとどうしようもないということですか?」
「かかってしまえば厳しいのぅ……。ただ、予防薬があればそれを使うことで予防することは可能じゃろう。それに、魔法を解いた薬の話は聞いたことがある」
「なるほど……」
対抗する手段がないってわけじゃないんだね。
例えば[興奮剤]のように、状態異常に対する耐性を一定時間上昇させる魔法や薬があるんだろう。
「あれ? ということは、毒薬による毒は魔法じゃ治せないんですか?」
「治せなくはないのじゃが……推奨はされてないのぅ」
「推奨されてない……?」
「大半は治せるのじゃが、毒や状況によってはより悪化する場合もあるのぅ。儂が経験したわけではないのじゃが、石化毒や猛毒じゃと時折聞く話じゃな。もちろん軽い毒でも悪化する可能性はあるからのぅ……魔法によるものでないのなら、魔法を使わぬ方がよいじゃろう」
……[アクアリーフの蜜]のように、温度で混ざり具合が変わる素材もある。
つまり、魔法に含まれている魔力で性質が変わる毒もあるのかもしれない。
うーむ、判別するのがかなり難しそうだぞ……。
「ほっほっほ。最初からそこまで背負うこともなかろう。まずは[解毒ポーション(微)]を作れるようになることじゃな」
「……そうですね。ただ、材料も方法も全くわからないんで、手の出しようがないんですが」
「そうじゃろうのぅ」
「その、ジェルビンさん。なにか知りませんか? こう……お薬のレシピとか本とか」
「あるのは知っておるが、この街には多分ないのぅ」
あるけど、ここにはないのか。
そうなってくると、もうとにかく試すしかなくなるなぁ……。
「――レシピではないのじゃが」
「ん?」
「ちょっとだけヒントをあげようかのぅ」
そう言うと、僕の反応も見ずに椅子から立ち上がり、部屋の奥からなにかを取り出す。
端を掴むようにして僕の前に見せたソレは、1本の蔓。
所々についている葉の端がノコギリの刃のようにギザギザとした形をしていて、不用意に手を出すと怪我をしそうだ。
「これは[解毒ポーション(微)]の主材料になる素材じゃ。森の入口付近にあるのじゃが、普段は違う形をしておる」
「……もしかしてこれって」
僕は慌てるようにインベントリから本を取り出し、以前見たページを開く。
「この、箇所によって効果が変わる植物の葉、ですよね? えっと、カンネリ?」
「おお、そうじゃ。このカンネリの葉は、普段は丸まって筒のような形になっておる。それゆえ、近づいてみても気づけぬのじゃ」
「なるほど……。見分け方はあるんですか?」
「1滴水を垂らしてみるとよいぞ。そうすることで葉が開き、この形に変化する。もしくは雨の日は常にこの形じゃな」
なるほど、水を吸収するために葉が開くのか。
普段丸まっている理由はわからないけれど、これなら見つけることができそうだ。
「あとはそうじゃな、素材は採取するだけではないのぅ」
「採取だけじゃない?」
「そうじゃ。採ってくるものばかりが素材になるわけではないぞ」
それはつまり、それ以外も材料になるってことだから……。
(アキ様。粉末にした薬草と同じことではないかと)
(粉末にした薬草? あ、僕が手を加えたってことは……完成品も素材になるってことか)
(そういうことではないかと)
このタイミングってことは、ポーション類が材料のひとつ?
材料がカンネリと、どれかのポーション……。
作り方はわからないけれど、材料が分かれば試すことはできる。
これならなんとかなるかもしれない?
「ありがとうございます。なんとか目処がたちそうです」
「うむうむ。さてヒントはここまでじゃ。あとは自分で色々ためしてみるのがいいじゃろう」
そう言って快活に笑うジェルビンさんに頭を下げつつ、僕は本来の用件を聞こうと思考を切り替えた。
放心するように固まった僕を見て予想がついたのか、ジェルビンさんは目を閉じ、軽く頷く。
「でも、そんな、」
「どんなに優れた人であろうと、忌み嫌う者はおる。それはどうすることもできないことじゃ。――じゃが、その悪意で倒れるかもしれぬ人を救うことはできる。儂には無理じゃったが、君ならばまだわからん。そうじゃろう?」
「……はい」
「うむうむ。励むのじゃぞ」
実際、僕がひとりで頑張ったところで、猛毒の脅威は多分減らない。
けれど、ジェルビンさんがいった通り、倒れるかもしれない人を助けることはできるのかもしれない。
そのための第一歩はおばちゃんが支えてくれた。
だからこそ僕は、僕がやれることを精一杯やってみるしかないんだ。
「さて、気を取り直して次じゃな」
「えっと、最後のは……特殊な毒、でしたか?」
「そうじゃな。これらは毒じゃが、他の毒とは違い、肉体に影響を及ぼすものじゃ。麻痺、石化、魔力消失などがこれに当たるのぅ」
「魔力消失?」
「魔力消失というのは、毒によって魔力が勝手に発散されてしまうものじゃ。普段は魔法を使う者に使われる軽度なものが多いが、物によっては極限まで魔力を消耗させ、意識を落とす手段に使われるものもあるのぅ」
「なるほど……。あとの麻痺はわかりますが、石化もなんですね」
「そうじゃな。ただ魔法によるものもあるからのぅ。原因次第じゃ」
原因次第ってことは、麻痺や石化、魔力消失なんかの特殊なパターンは、お薬が効かない場合があるってことかな?
「例えば原因が毒じゃない場合の麻痺とか石化は、お薬だとどうしようもないということですか?」
「かかってしまえば厳しいのぅ……。ただ、予防薬があればそれを使うことで予防することは可能じゃろう。それに、魔法を解いた薬の話は聞いたことがある」
「なるほど……」
対抗する手段がないってわけじゃないんだね。
例えば[興奮剤]のように、状態異常に対する耐性を一定時間上昇させる魔法や薬があるんだろう。
「あれ? ということは、毒薬による毒は魔法じゃ治せないんですか?」
「治せなくはないのじゃが……推奨はされてないのぅ」
「推奨されてない……?」
「大半は治せるのじゃが、毒や状況によってはより悪化する場合もあるのぅ。儂が経験したわけではないのじゃが、石化毒や猛毒じゃと時折聞く話じゃな。もちろん軽い毒でも悪化する可能性はあるからのぅ……魔法によるものでないのなら、魔法を使わぬ方がよいじゃろう」
……[アクアリーフの蜜]のように、温度で混ざり具合が変わる素材もある。
つまり、魔法に含まれている魔力で性質が変わる毒もあるのかもしれない。
うーむ、判別するのがかなり難しそうだぞ……。
「ほっほっほ。最初からそこまで背負うこともなかろう。まずは[解毒ポーション(微)]を作れるようになることじゃな」
「……そうですね。ただ、材料も方法も全くわからないんで、手の出しようがないんですが」
「そうじゃろうのぅ」
「その、ジェルビンさん。なにか知りませんか? こう……お薬のレシピとか本とか」
「あるのは知っておるが、この街には多分ないのぅ」
あるけど、ここにはないのか。
そうなってくると、もうとにかく試すしかなくなるなぁ……。
「――レシピではないのじゃが」
「ん?」
「ちょっとだけヒントをあげようかのぅ」
そう言うと、僕の反応も見ずに椅子から立ち上がり、部屋の奥からなにかを取り出す。
端を掴むようにして僕の前に見せたソレは、1本の蔓。
所々についている葉の端がノコギリの刃のようにギザギザとした形をしていて、不用意に手を出すと怪我をしそうだ。
「これは[解毒ポーション(微)]の主材料になる素材じゃ。森の入口付近にあるのじゃが、普段は違う形をしておる」
「……もしかしてこれって」
僕は慌てるようにインベントリから本を取り出し、以前見たページを開く。
「この、箇所によって効果が変わる植物の葉、ですよね? えっと、カンネリ?」
「おお、そうじゃ。このカンネリの葉は、普段は丸まって筒のような形になっておる。それゆえ、近づいてみても気づけぬのじゃ」
「なるほど……。見分け方はあるんですか?」
「1滴水を垂らしてみるとよいぞ。そうすることで葉が開き、この形に変化する。もしくは雨の日は常にこの形じゃな」
なるほど、水を吸収するために葉が開くのか。
普段丸まっている理由はわからないけれど、これなら見つけることができそうだ。
「あとはそうじゃな、素材は採取するだけではないのぅ」
「採取だけじゃない?」
「そうじゃ。採ってくるものばかりが素材になるわけではないぞ」
それはつまり、それ以外も材料になるってことだから……。
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(粉末にした薬草? あ、僕が手を加えたってことは……完成品も素材になるってことか)
(そういうことではないかと)
このタイミングってことは、ポーション類が材料のひとつ?
材料がカンネリと、どれかのポーション……。
作り方はわからないけれど、材料が分かれば試すことはできる。
これならなんとかなるかもしれない?
「ありがとうございます。なんとか目処がたちそうです」
「うむうむ。さてヒントはここまでじゃ。あとは自分で色々ためしてみるのがいいじゃろう」
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