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第1章 新しい世界と出会い
第23話 復活の代償
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シルフのあれやこれやが落ち着いたことで、気付いたことがある。
なんだか、妙に身体が重いような……いや、僕の上に乗っているシルフが重いというわけではなく。
「――アキ様?」
「な、ななんでもないよ!」
「……」
僕の目をまっすぐに見つめてくるシルフの目が怖い……。
いつもと変わらない目のはずなのに、僕の心のありようなのか妙に怖く感じる。
考えてることが伝わりやすいといえど、全部が全部伝わるわけじゃないって知ってはいるんだけれども。
――って違う、シルフのことじゃなくて、僕自身の身体が重いんだ!
そう気を取り直せば、余計にずしっと感じる妙なだるさ。
まるで全力で運動した次の日の身体みたいな……。
「あの、アキ様?」
「い……っ!?」
「え、え?」
「シルフ……ごめ、うごかないで」
「は、はい!」
僕の上にいるシルフが少し動くだけで、痛みが鈍く響く。
ちょっとした動きで、ビシッと走るこの痛みは――そう、筋肉痛だ!
「な……んで?」
「だ、大丈夫ですか?」
「っ、たぶん?」
動かすだけで、ビキビキと音が鳴りそうなほどに軋む腕を動かし、システムからヘルプを呼び出す。
そういえば全然確認してなかったけど、死んだ場合のペナルティって……。
「うっわ。これは……」
目の前に出現したウィンドウに書かれていた内容は、優しいようで結構酷い。
そんな、スキルを重視するゲームならではのペナルティが書いてあった。
【死亡時のペナルティについて】
1.全身に継続鈍痛(ゲーム内3時間程度、時間経過により軽減。アイテムや魔法などでの回復は不可)
2.ランダムでスキルレベル減少(各スキル-0~-5の中からランダムで減少します)
3.スキル消失(2の減少にてスキルレベルが0となった場合、一覧より消失。ただし該当スキルに沿った行動にて再習得可能)
4.死亡時に所持していた金額のうち、3割減少(所持金額が10,000s以下の場合は減少なし)
「つまり、この痛みが……あと2時間は……」
ぐぅ、と呻き声をあげた僕を見てか、シルフは少し同情するような声色で僕の名を呼んだ。
まあ、2時間といえど少しずつ痛みは引いていくみたいだし、ある程度時間が経てば動けるだろう。
今はまだバッキバキに痛いけど、それに耐えつつシルフの頭を撫で、髪を掬う。
まるで風が指をすり抜けていくときのような柔らかな感触と、筋肉痛の痛み……痛い。
――ちなみに後から聞いた話では、一般的なペナルティは一時的なステータス減少らしいけど、このゲームには細かいステータスが分からないことから、継続鈍痛になるんじゃないかってさ。
「後はスキルレベル減少と……それに伴うスキル消失!?」
慌てて、システムを操作してスキル一覧を表示。
確か死ぬ前のスキルは<採取Lv.5><調薬Lv.6><戦闘採取術Lv.5>だったはず。
しかし表示されていたスキルは<採取Lv.2><調薬Lv.6><戦闘採取術Lv.1>で、運良く何も消失はしていなかったみたいだった。
「もし<採取>か<戦闘採取術>が-5されていたら、消えてたかもしれないのか……」
別に消えていても再習得は出来るみたいだけど、消えるよりは消えない方が良いよね。
それにスキルレベル10までは上がりやすいみたいだし、下がった分はまた上げればいいし。
ちなみにスキルは無いと行動出来ないってわけじゃなくて、あるとやりやすくなるって感じ。
例えば<採取>だったら、素材を見つけやすくなったり、素材を傷めずに採取しやすくなったり。
練習すればプレイヤー自身の技術――つまりPSでカバーも出来るから、いってしまえば補助のようなものだ。
だからそこまでレベルが下がったり、消失したりを気にすることはないと思うんだけど……やっぱり上げたものが下がるっていうのは、結構心にクるものがあるね……。
「私がもう少し早く気づけていれば……」
「シルフのせいじゃないよ。気を緩めてしまった僕が悪い。むしろ教えてくれてありがとうね」
暗い顔を見せるシルフに、お礼と共に笑ってみせる。
そう、今回の件は全面的に僕が悪い。
いくら道中に魔物が出てこなかったからって、フィールドで気を抜いて座り込んで……その結果がこれだ、それは認めなくちゃならない。
「よし、ひとまずおばちゃんの所に行こうか! 身体は痛いけどさ」
「無理はしないでください!」
さすがにこのままだらだらと路地裏で時間を潰すのは得策じゃない。
ほら、路地裏って人目もつかないから、一応危険な場所だし?
そう思って動こうとする僕を、シルフが上から押さえつける。
普段の僕なら女の子ひとりくらいむりやり一緒に起き上がってみせるんだけど、こっちでの僕は一応女の子で、さらに全身に筋肉痛のおまけ付きだ。
「シルフさん? 心配なのはわかるんだけど、ここはその……」
「そ、そうですけど、まだ明るいですし」
言われて見上げれば確かに日はまだ煌々と輝いているし、路地裏といえど開けて広場になっているここは結構明るい。
でも、その――シルフみたいな可愛い子と抱き合ってるってシチュエーションはその……。
僕も一応(精神的には)男ですし……。
「アキ様……」
動こうと身をよじる僕の胸元あたりからシルフが心配そうな目で見上げてくる。
あー、これは……無理です、ね?
--------------------------------------
名前:アキ
性別:女
称号:ユニーク<風の加護>
武器:木槌
防具:ホワイトリボン
冒険者の服
冒険者のパンツ
冒険者の靴
スキル:<採取Lv.5→2><調薬Lv.6><戦闘採取術Lv.5→1>
精霊:シルフ
なんだか、妙に身体が重いような……いや、僕の上に乗っているシルフが重いというわけではなく。
「――アキ様?」
「な、ななんでもないよ!」
「……」
僕の目をまっすぐに見つめてくるシルフの目が怖い……。
いつもと変わらない目のはずなのに、僕の心のありようなのか妙に怖く感じる。
考えてることが伝わりやすいといえど、全部が全部伝わるわけじゃないって知ってはいるんだけれども。
――って違う、シルフのことじゃなくて、僕自身の身体が重いんだ!
そう気を取り直せば、余計にずしっと感じる妙なだるさ。
まるで全力で運動した次の日の身体みたいな……。
「あの、アキ様?」
「い……っ!?」
「え、え?」
「シルフ……ごめ、うごかないで」
「は、はい!」
僕の上にいるシルフが少し動くだけで、痛みが鈍く響く。
ちょっとした動きで、ビシッと走るこの痛みは――そう、筋肉痛だ!
「な……んで?」
「だ、大丈夫ですか?」
「っ、たぶん?」
動かすだけで、ビキビキと音が鳴りそうなほどに軋む腕を動かし、システムからヘルプを呼び出す。
そういえば全然確認してなかったけど、死んだ場合のペナルティって……。
「うっわ。これは……」
目の前に出現したウィンドウに書かれていた内容は、優しいようで結構酷い。
そんな、スキルを重視するゲームならではのペナルティが書いてあった。
【死亡時のペナルティについて】
1.全身に継続鈍痛(ゲーム内3時間程度、時間経過により軽減。アイテムや魔法などでの回復は不可)
2.ランダムでスキルレベル減少(各スキル-0~-5の中からランダムで減少します)
3.スキル消失(2の減少にてスキルレベルが0となった場合、一覧より消失。ただし該当スキルに沿った行動にて再習得可能)
4.死亡時に所持していた金額のうち、3割減少(所持金額が10,000s以下の場合は減少なし)
「つまり、この痛みが……あと2時間は……」
ぐぅ、と呻き声をあげた僕を見てか、シルフは少し同情するような声色で僕の名を呼んだ。
まあ、2時間といえど少しずつ痛みは引いていくみたいだし、ある程度時間が経てば動けるだろう。
今はまだバッキバキに痛いけど、それに耐えつつシルフの頭を撫で、髪を掬う。
まるで風が指をすり抜けていくときのような柔らかな感触と、筋肉痛の痛み……痛い。
――ちなみに後から聞いた話では、一般的なペナルティは一時的なステータス減少らしいけど、このゲームには細かいステータスが分からないことから、継続鈍痛になるんじゃないかってさ。
「後はスキルレベル減少と……それに伴うスキル消失!?」
慌てて、システムを操作してスキル一覧を表示。
確か死ぬ前のスキルは<採取Lv.5><調薬Lv.6><戦闘採取術Lv.5>だったはず。
しかし表示されていたスキルは<採取Lv.2><調薬Lv.6><戦闘採取術Lv.1>で、運良く何も消失はしていなかったみたいだった。
「もし<採取>か<戦闘採取術>が-5されていたら、消えてたかもしれないのか……」
別に消えていても再習得は出来るみたいだけど、消えるよりは消えない方が良いよね。
それにスキルレベル10までは上がりやすいみたいだし、下がった分はまた上げればいいし。
ちなみにスキルは無いと行動出来ないってわけじゃなくて、あるとやりやすくなるって感じ。
例えば<採取>だったら、素材を見つけやすくなったり、素材を傷めずに採取しやすくなったり。
練習すればプレイヤー自身の技術――つまりPSでカバーも出来るから、いってしまえば補助のようなものだ。
だからそこまでレベルが下がったり、消失したりを気にすることはないと思うんだけど……やっぱり上げたものが下がるっていうのは、結構心にクるものがあるね……。
「私がもう少し早く気づけていれば……」
「シルフのせいじゃないよ。気を緩めてしまった僕が悪い。むしろ教えてくれてありがとうね」
暗い顔を見せるシルフに、お礼と共に笑ってみせる。
そう、今回の件は全面的に僕が悪い。
いくら道中に魔物が出てこなかったからって、フィールドで気を抜いて座り込んで……その結果がこれだ、それは認めなくちゃならない。
「よし、ひとまずおばちゃんの所に行こうか! 身体は痛いけどさ」
「無理はしないでください!」
さすがにこのままだらだらと路地裏で時間を潰すのは得策じゃない。
ほら、路地裏って人目もつかないから、一応危険な場所だし?
そう思って動こうとする僕を、シルフが上から押さえつける。
普段の僕なら女の子ひとりくらいむりやり一緒に起き上がってみせるんだけど、こっちでの僕は一応女の子で、さらに全身に筋肉痛のおまけ付きだ。
「シルフさん? 心配なのはわかるんだけど、ここはその……」
「そ、そうですけど、まだ明るいですし」
言われて見上げれば確かに日はまだ煌々と輝いているし、路地裏といえど開けて広場になっているここは結構明るい。
でも、その――シルフみたいな可愛い子と抱き合ってるってシチュエーションはその……。
僕も一応(精神的には)男ですし……。
「アキ様……」
動こうと身をよじる僕の胸元あたりからシルフが心配そうな目で見上げてくる。
あー、これは……無理です、ね?
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名前:アキ
性別:女
称号:ユニーク<風の加護>
武器:木槌
防具:ホワイトリボン
冒険者の服
冒険者のパンツ
冒険者の靴
スキル:<採取Lv.5→2><調薬Lv.6><戦闘採取術Lv.5→1>
精霊:シルフ
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