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第1章 新しい世界と出会い
第18話 良薬は口に……?
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さてと、とりあえずはアルさんに渡した[最下級ポーション(良)]を増産するところから始めようかな?
そう決めて、おばちゃんが片付けてくれていた道具類をもう一度広げ、薬草を1束手に取る。
ざくざくと、1束切ってはまた1束切って……山積みになっていた薬草から5束ほど刻み続ける。
そして、その間にシルフが用意してくれていた、水の入っている鍋を火にかけ、薬草を投入。
あがってきた灰汁を取って、出来たら瓶に入れて、シルフに冷ましてもらう。
その工程を繰り返し続け、50束を超えていた薬草は、おばちゃんが止めに来てくれるまでに、その数を15束まで減らしていた。
「あんた、熱心なのはわかるけど、根の詰めすぎは失敗の元だよ」
「え? あれ? もうそんな時間?」
慌てて窓から外を見れば、すでに日は落ちているのか、見えるところ全てが真っ暗になっていた。
ちなみに、どうやらシルフも気付いてなかったみたいで、視界の端で慌ててる姿が見える。
「しかし、なんでこんなに最下級ポーションの良品ばっかり作ってるんだい? あんた、すでに下級が作れるだろうに」
その言葉に、片付けをしながら顔だけおばちゃんの方に向けて、アルさんからの依頼であることを僕は伝えた。
それを聞いて、おばちゃんは少し苦笑いのような表情を見せて――
「なら、下級の良品を作れるようになった方がいいね。その方がもっと飲みやすいはずさ」
「そうなの?」
「そういうもんさ。あの苦味の中に、悪いやつまで入ってるからね」
おばちゃんが言うには、最下級の不味さは薬草の中から、薬効成分の他にも色々しみ出してしまっているから不味い、ってことらしい。
「つまり、回復量が高いものは、基本的に味とか喉ごしとかがスッキリに?」
「そういうことさね。ただ、すっごい不味いモノの中にも効果が良いものがあるからね。全部がそうだとは言えないよ。あと、良品じゃなかったら、まだそれよりも下の良品のほうが飲みやすいって人もいるね」
薬草をメインに使ったポーション系は、回復量が高ければ高いほど飲みやすいってことかな。
ただ、良品じゃなかったら人によるって感じなんだね。
「んー、一度下級ポーションを飲んでみるかな?」
(そうですね。おばさまのご説明通りなら、最下級よりは飲みやすいはずですので)
それに、飲んでみることで、どんな不味さかを感じることができれば、良品を作るヒントになるかもしれないし。
そう思って、早速……とインベントリから先ほど作った下級ポーションを取り出す。
よし、いざ――
「あんた、今からまたなんかする気かい?」
瓶を傾け、飲もうとした僕の横から、いつもと違うおばちゃんの声が聞こえた。
「お、おばちゃん?」
「根詰めすぎは失敗の元だって、さっき言っただろう? なのに、こんな時間からまたなにか始める気かい?」
その言葉、というよりも、その気迫に、急いで手に持っていた下級ポーションの栓をしてインベントリに仕舞う。
それから、なんとか頑張っておばちゃんの機嫌を取り、今日のところはログアウトすることにした。
ちなみに、シルフは僕が下級ポーションを仕舞うよりも前に逃げていたみたいだ。
◇
「と、いうわけで……今日は下級ポーションの良品を目指そうと思います!」
ログインして、まずはシルフと今日の予定の話。
アルさんの依頼があったこともあり、下級ポーションは通常版と即効性の2つしか作っていない。
おばちゃんが言うには、通常版でも最下級よりは飲みやすいみたいなんだけどね?
(まずは飲んでみて、味からヒントを得てみる、でしたよね?)
「そうだね。味が悪いなら不純物が混ざってる可能性が高いと思うし」
実際、最下級は苦味が強く、原因と思わしき灰汁を取ることで良品になった。
だとすれば、下級も同じように考えられるはず。
それにもし違うなら、手順を変更したり、加えたりすれば良くなる可能性もあるだろうし……ひとまずは飲んでみてかな?
「よしっ!」
早速インベントリから下級ポーションを取り出して、勢いのまま飲んでみる。
見た目よりもドロッとした舌触りで、粘つきが強く……なかなか喉を通らない……。
味は最下級よりも全然マシなんだけど、これは……。
考えながらもなんとか飲み干して、心配そうに見てくるシルフに向かって頷く。
(だ、大丈夫ですか?)
「うん。味は全然マシ。ただ……これはたぶん、飲みにくいのがダメなのかも」
(飲みにくいのが、ですか?)
「そう。すっごい粘つきがあって、なかなか喉を通らない」
(つまり、下級は味よりも喉ごしが問題ということですか?)
「たぶんね。これは手順の見直しとか、分量とかの問題がありそうかも」
そういえば、下級ポーションを作ったときって、なかなか混ざらなかったような……。
アレが原因なのかも?
たしか、水と油みたいに混ざらなくて、結局5分近く混ぜてたはずだし。
「あの時はたしか……温度が上がってきたら混ざりだした……? でも、その上でサラサラになるまで混ぜたけど……」
(アキ様。お手伝い致しますので、ひとつずつ手順を見直していきましょう)
「うん。そうだね。やってみようか!」
お互いに頷きあい、僕らはおばちゃんの雑貨屋へと向かうことにした。
そう決めて、おばちゃんが片付けてくれていた道具類をもう一度広げ、薬草を1束手に取る。
ざくざくと、1束切ってはまた1束切って……山積みになっていた薬草から5束ほど刻み続ける。
そして、その間にシルフが用意してくれていた、水の入っている鍋を火にかけ、薬草を投入。
あがってきた灰汁を取って、出来たら瓶に入れて、シルフに冷ましてもらう。
その工程を繰り返し続け、50束を超えていた薬草は、おばちゃんが止めに来てくれるまでに、その数を15束まで減らしていた。
「あんた、熱心なのはわかるけど、根の詰めすぎは失敗の元だよ」
「え? あれ? もうそんな時間?」
慌てて窓から外を見れば、すでに日は落ちているのか、見えるところ全てが真っ暗になっていた。
ちなみに、どうやらシルフも気付いてなかったみたいで、視界の端で慌ててる姿が見える。
「しかし、なんでこんなに最下級ポーションの良品ばっかり作ってるんだい? あんた、すでに下級が作れるだろうに」
その言葉に、片付けをしながら顔だけおばちゃんの方に向けて、アルさんからの依頼であることを僕は伝えた。
それを聞いて、おばちゃんは少し苦笑いのような表情を見せて――
「なら、下級の良品を作れるようになった方がいいね。その方がもっと飲みやすいはずさ」
「そうなの?」
「そういうもんさ。あの苦味の中に、悪いやつまで入ってるからね」
おばちゃんが言うには、最下級の不味さは薬草の中から、薬効成分の他にも色々しみ出してしまっているから不味い、ってことらしい。
「つまり、回復量が高いものは、基本的に味とか喉ごしとかがスッキリに?」
「そういうことさね。ただ、すっごい不味いモノの中にも効果が良いものがあるからね。全部がそうだとは言えないよ。あと、良品じゃなかったら、まだそれよりも下の良品のほうが飲みやすいって人もいるね」
薬草をメインに使ったポーション系は、回復量が高ければ高いほど飲みやすいってことかな。
ただ、良品じゃなかったら人によるって感じなんだね。
「んー、一度下級ポーションを飲んでみるかな?」
(そうですね。おばさまのご説明通りなら、最下級よりは飲みやすいはずですので)
それに、飲んでみることで、どんな不味さかを感じることができれば、良品を作るヒントになるかもしれないし。
そう思って、早速……とインベントリから先ほど作った下級ポーションを取り出す。
よし、いざ――
「あんた、今からまたなんかする気かい?」
瓶を傾け、飲もうとした僕の横から、いつもと違うおばちゃんの声が聞こえた。
「お、おばちゃん?」
「根詰めすぎは失敗の元だって、さっき言っただろう? なのに、こんな時間からまたなにか始める気かい?」
その言葉、というよりも、その気迫に、急いで手に持っていた下級ポーションの栓をしてインベントリに仕舞う。
それから、なんとか頑張っておばちゃんの機嫌を取り、今日のところはログアウトすることにした。
ちなみに、シルフは僕が下級ポーションを仕舞うよりも前に逃げていたみたいだ。
◇
「と、いうわけで……今日は下級ポーションの良品を目指そうと思います!」
ログインして、まずはシルフと今日の予定の話。
アルさんの依頼があったこともあり、下級ポーションは通常版と即効性の2つしか作っていない。
おばちゃんが言うには、通常版でも最下級よりは飲みやすいみたいなんだけどね?
(まずは飲んでみて、味からヒントを得てみる、でしたよね?)
「そうだね。味が悪いなら不純物が混ざってる可能性が高いと思うし」
実際、最下級は苦味が強く、原因と思わしき灰汁を取ることで良品になった。
だとすれば、下級も同じように考えられるはず。
それにもし違うなら、手順を変更したり、加えたりすれば良くなる可能性もあるだろうし……ひとまずは飲んでみてかな?
「よしっ!」
早速インベントリから下級ポーションを取り出して、勢いのまま飲んでみる。
見た目よりもドロッとした舌触りで、粘つきが強く……なかなか喉を通らない……。
味は最下級よりも全然マシなんだけど、これは……。
考えながらもなんとか飲み干して、心配そうに見てくるシルフに向かって頷く。
(だ、大丈夫ですか?)
「うん。味は全然マシ。ただ……これはたぶん、飲みにくいのがダメなのかも」
(飲みにくいのが、ですか?)
「そう。すっごい粘つきがあって、なかなか喉を通らない」
(つまり、下級は味よりも喉ごしが問題ということですか?)
「たぶんね。これは手順の見直しとか、分量とかの問題がありそうかも」
そういえば、下級ポーションを作ったときって、なかなか混ざらなかったような……。
アレが原因なのかも?
たしか、水と油みたいに混ざらなくて、結局5分近く混ぜてたはずだし。
「あの時はたしか……温度が上がってきたら混ざりだした……? でも、その上でサラサラになるまで混ぜたけど……」
(アキ様。お手伝い致しますので、ひとつずつ手順を見直していきましょう)
「うん。そうだね。やってみようか!」
お互いに頷きあい、僕らはおばちゃんの雑貨屋へと向かうことにした。
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