採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥

文字の大きさ
上 下
17 / 345
第1章 新しい世界と出会い

第14話 脱・最下級!

しおりを挟む
 ぐつぐつと音をたてながら、薬草を煮出すこと約3分ほど。
 お湯の中の薬草がかなり柔らかくなってくると同時に、灰汁のような灰色の泡がお湯の表面に浮き上がってきた。

「け、結構出るなぁ……。とりあえずこれを取ってと」

 お玉で掬い、それを捨ててはまた掬い、何度も何度もそれを繰り返す。
 そうこうしているうちにお湯の色はどんどん緑色に変化していった。

「もう、いいかな?」

 ほとんど色が変わらなくなってきたタイミングで火を落とし、中から薬草を取り出す。
 ……なんだか茹で上がったほうれん草みたいだ。

「さて、肝心のポーションは……うん、いつもより綺麗に出来てる気がする!」

 今までは灰汁の関係で少しだけ濁った色をしてたけど、今回のは綺麗な緑色。
 なんだか少しだけ、口を付けやすそうな色味になったかも。

「多少は苦みが消えていればいいのですが……」

 シルフが風を使って鍋を冷ましつつ、そんな希望を口にする。
 それに深く頷きながら、冷めて湯気が出なくなった薬湯を瓶に移し替えて……完成!

「どうなったかなっと……」

[最下級ポーション(良):10秒かけてHPが20%回復
多少苦味が抑えられている]

「お! これは一応成功かな!」
「ええ。苦みを抑えるという点では成功だと思います!」
「……まぁ実際は飲んでみないと分からないんだけど」
「それは、そうですが……」

 なんていうか、多少って書かれてる以上、すごく苦みが消えてるって感じはしないんだよね。

「この良というのは……?」
「多分だけど、良品ってことじゃないかな? 最下級ポーションだけど、良いものって証みたいな?」
「なるほど……」

 確か最下級の通常品は、10秒かけてHPが15%回復だったかな?
 それと比べると、5%も回復量が上昇してるのはすごいかも!
 ただ……薬草と水の2種類だけだと、これ以上のものは作れなさそうな気がする。
 なんとなくだけど、そんな気がするんだ。

 だから僕は、インベントリから次の素材を取り出すことにした。
 ――[アクアリーフの蜜]、これが多分次のレベルに必要な素材。
 草を溶けやすくするって、兵士のおじさんが去り際に教えてくれたのもあるけど……なぜか直感でこれを使うって、そう確信してる。

「問題はタイミングだけど……悩んでても仕方ないし、全部試そう」
「はいっ!」

 幸い、アクアリーフは結構倒せたからか蜜も沢山あるし、薬草もアルさんに貰ったおかげで、まだいっぱい残ってる。
 とりあえず蜜を数個鍋の中に入れて、切った薬草をその中に入れてみた。

「火にかける……いや、うーん……」

 僕がそんな風に悩んでいる間にも、蜜の中へ薬草が少しずつ溶けていく。
 その変化が面白くて火を入れることをやめた僕は、次に蜜と同じ量の水を用意することにした。

 どんどんと解けていく薬草に、薄緑の蜜の色が少しずつ濃い色へと変わっていく。
 薬草が完全に溶けたのを確認してから、僕は用意していた水を中へと入れた。

「ここからは棒で混ぜつつ、火を入れてみようかな」

 そうしようと棒を入れ、混ぜていくけれど全く混ざっていかない。
 まるで水と油みたいに分離していて、かき混ぜてもかき混ぜても混ざっていかなかった。

「むむ……」
「温度とかでしょうか……?」
「んーそうかも。もうちょっと混ぜてみようか」

 かき混ぜつつ、シルフと鍋の中身を確認すること約5分。
 だんだんと混ざってきた気がする。

 そのことに安心しつつ更に混ぜていけば、体感3分ほどで綺麗に混ざり合い、少し透き通った緑色の液体になった。

「たぶんこれで、完成っと」
「では少し冷ましますね」
「うん、お願い」

 火を落としたタイミングでシルフに風を当ててもらい、ゆっくりと冷ましていく。
 そして瓶に詰めると……

[下級ポーション:10秒かけてHPが25%回復
実用的な回復量を持つポーション]

 が、完成した。

「できた!」
「おめでとうございますっ!」
「シルフもお手伝い、ありがとう。でも、良品でもないのに最初から25%の回復量ってすごいね……」
「もしこれが良品になれば、もっと回復するようになるでしょうし、最下級よりもずっと使い勝手が良くなりそうです」
「ただ、どうやれば良品になるのか……全然わかんないんだけど」

 というのも、最下級の時のように、灰汁が浮いてきたりとかもなかった。
 最下級が良品になったのは、薬湯に含まれる不純物が取り除かれたからだと思うんだけど、今回作った下級は、最初から結構綺麗な色をしていて、これに不純物が含まれているようには感じない……。
 つまり、最下級とは違う考え方で、より良いものにしないといけない必要があるってことかな。

「ひとまずは手順の見直しかな? 最下級と同じ考え方で良いなら、下級の材料は[薬草][アクアリーフの蜜][水]の3つで間違いないだろうし」

 分解して考えれば、少しは思い付きそうだ。
 まず、粉末にして、薬草自体の効果を上げるとか……それ以外にも、混ざりにくかった蜜と水を混ぜた上で、薬草を混ぜてみるなんかの、手順の変更。

 ……他にもたぶんあるんだろうけど、今のところ思いついたのはそのくらいかな?

「まずは、薬草の粉末を混ぜるところから初めて見ませんか?」
「そうだね。……粉末が絶対即効性になる、とか分かったらそれはそれで勉強にはなるし」

 シルフの提案に乗りながら、乾燥してもらった薬草をすり鉢で潰していく。
 一度やって多少慣れたのか、少しだけ早く完成した粉末を蜜の中に入れて溶かしていった。

「お、粉末の方が溶けやすいみたい」

 粉末が解けて濃い色になった蜜を、鍋の中に入れておいた水に投入。
 火をかけながら5分ほど混ぜれば、綺麗な色の薬湯が完成した。
 さっきよりも混ざりやすかったような気がするけど、なんの違いだったんだろう……。

[下級ポーション(即効性):瞬時にHP25%回復
作成後3分でアイテム効果変化]

 冷まして移し替えたアイテムを確認すれば、やっぱりというか……即効性。
 どうやら粉末を使って通常のポーションを作ると、即効性になるみたいだ。

「ただ、制限時間と効果が上昇してるね」
「先ほどは制限時間1分で、20%回復でしたね。3分ならまだ……?」
「いや、それを作るための時間に3分以上かかってるし、やっぱり使うのは難しいかな……」

 問題は変化後の効果だ。
 それがさっきみたいな効果に変わるのであれば……確実な罠アイテムみたいになりそう。

 でもそれが分かるまで3分足らずあるわけだし、その間に別のことを試してみようかな。

「えーと、水と蜜を先に混ぜて……」

 さっきまでと同じ量の水と蜜を鍋の中に投入して、火にかける。
 その間に薬草を切って……時折、鍋の中身をかき混ぜて状況を確認。
 やっぱり薬草を入れてないからか、さっきまでよりも手軽に混ざっていってる気がする。

 そのことに内心喜びながら、僕は切っておいた薬草を入れようと、手を伸ばし――

「うぐっ!?」

 あまりの激臭に思わず両手で鼻と口を覆った。

 酸っぱいような、辛いような、下と唇がピリピリと痛くなるような……そんな臭いが指をすり抜け、鼻とか口とかから浸食してくる。
 あ、これ……もしかして、即効性、下級……。

 飛びそうになりながらもそこまで考えていた僕の意識の端で、シルフが必死に瓶へと魔法を掛けているのが、見えた……気がした……。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~

オイシイオコメ
SF
 75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。  この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。  前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。  (小説中のダッシュ表記につきまして)  作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

運極さんが通る

スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。 そして、今日、新作『Live Online』が発売された。 主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

処理中です...