ふたつの嘘

noriko

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僕らのための嘘

僕らのための嘘 6

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僕が気になることは、もう一つ。
「……あ、大助、……んあ、そこ、……あぁ」
「……民人くん、好きだ、……好きだ」
「だいすけ、え……」

最近大助が、僕を抱くときの表情が……どこか苦しそうで。
それでも、いつにも増して、僕に愛を囁くようになった。
身体をきつく抱きしめ合って、互いの存在を確かめ合うような行為が多くなった気がする。
まるで、なにかに怯えてるようなその仕草が、少し気になっている。

僕の腰をつかんで、苦しそうな、でもどこか淫靡に眉をしかめた表情で、僕のナカに自身を突きつける。
時折体をかがめては、僕の胸の突起を口に含んだ。
「あ、ああっ、だいすけぇ、それ、あっ……いっしょに、しないで」
「ん、う、……あ、アア、みんとくん、締まる、……ほんと、ここ、すきだね。俺もすき」
前戯からひたすらに愛されたそこは、真っ赤に膨らみ、さらなる刺激を求めていた。
僕の腰を支えていた両手は、人差し指で両方の胸の突起を弾く。
「んぁあっ……あ、あ、だいすけ、あっ……だめ、おかしく、なるっ……」
「はア……ごめん、止まんない……みんとくん、すき、……すき、っあっ……」
腔内に舌を挿し込まれ、くちゅくちゅと口の中を弄ばれる。
その間も大助の律動は止まらず、絶頂へと上り詰める。
「ああっ……! あ、だいすけ、なんか、も、だめ、……!」
「みんとくん、……ハァ、好き、おれも、イく……!」
大助のそれが僕の弱いところを突き続け、果てたのはほぼ同時だった。
大助の欲望が、被膜越しに僕の中でドクドクと脈打つ。
それに合わせて、僕の中心からは、ダラダラと白濁が溢れだしていた。
「……ふー、……みんとくん、すき……」
大助は息を整えながら、僕に口付ける。
「ん……大助ぇ……」
「……好き、……民人くん、離したくない……」
僕を強く抱きしめて、耳元で甘えるように囁く。
彼は最近、「離したくない」とか「ずっと一緒にいたい」とか、まるで僕と離れる事を怖がっているかのように、しきりに口にするようになった。
「大助……好きだよ。ずっと離さないで」
なだめるように……そして僕自身も不安をかき消すように、大助に返答する。

……結局、その甘美な時間にいつも、絆されてしまうのだけれど。
大助が何か、僕に言えない悩みを抱えているのは、火を見るよりも明らかだった。
「大助……何かあったの?」
「ん?」
僕の髪を梳きながら、首を傾げる。
「最近、その……シてるとき。すごく、不安そうな顔してる」
彼の表情が、少しだけ曇る。
「……そうかな。俺はいつもどおりだと思うけど。強いて言うなら民人くんが今までより……」
はぐらかすような言葉を遮り、話を押し進める。
「大助、ごまかさないで。そういうときの大助、言葉数が多くなる」
大助は沈黙し、それから、フフ、と笑う。
「民人くんに嘘は通じないね。……困ったな。でも、それだけ民人くんが俺のことわかってくれてるのは、すごく嬉しい」
僕の手を握り、指を絡ませる。
「わかるよ、だって……大助のこと、好きだもん。だから、わかりたい。大助がなにを怖がってるのか」
大助の指先は、少し冷たい。
「民人くん……ありがとう。実は……、いや……」
口を開きかけて、それでも、次の言葉が聞こえてこない。
怯えたような瞳に、これ以上、無理は言えないとわかった。
「……無理しないで、話せるときでいいから」
それに、それ以上聞けないのは、お互い様だと思ったから。
「ごめん、俺、情けなくて……」
「気にしないで」
……僕は僕で。
彼が僕と離れたくないと言うたびに、僕の胸は締め付けられる。
僕だって不安だった。
僕の妹を名乗る女の子が、大助をひどく憎んでいる様子だったから。
僕と大助が一緒にいることで、大助に危害が加わることを、恐れていた。
考えたくないけれど、回避策は、一つしかないと、こころのどこかで思っている。

……また、お互いに一つずつ、隠し事が増えてしまった。
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