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僕らのための嘘
僕らのための嘘 5
しおりを挟む彼女が去ったあと、重苦しい雰囲気の中、男二人が取り残される。
「にしても、幸か不幸か、て話だったな。……話が出来る相手は多いに越したことないな。偶然とはいえ、巻き込んじゃったのは申し訳ないが。……あ、いや、俺は完全に巻き込まれた側なんだけど」
「……東さんも、すみません」
「構わんよ。俺にとっても大事なオトモダチの緊急事態っぽいからな。にしても、どうするんだよ、これから」
大助が考え込んでいる間に、東は店員を呼びつけ、さらにホットコーヒーを2つ追加する。
「……どうしましょう。まさか明日羅さんと翠ちゃんが、中央にいるなんて」
「まあヒトの家庭の事情なんざ首突っ込んでも仕方ねえけどよ……。会わせられない父親と妹って、どんなんだよ」
「……翠ちゃんは、綺羅くんのことになると……多少過激です」
「お前がそれをいうかよ。……というか、その過激なのに、民人が会ってるんだろ。民人がどう思ってるか知らねえけど……まあお前に隠してるってことは、いろいろ察して悩んでんだろうな、あいつも」
サーブされたホットコーヒーを飲み、大助はため息をつく。
「……民人くんと、話をしないといけないと思うんですけれど……」
「それはそうだろ。お前にしちゃ歯切れわりいな」
「……どう、話を切り出したらいいか」
大助のしおらしい態度に、ああ、と東はしびれを切らす。
「腹くくって3人で話すか?」
「東さん……悔しいですけど、東さんに協力を、お願いしたいです」
「……聞いてやる」
大助は心底、悔しそうに、悲しそうに続ける。
「多分、俺が聞いても、民人くんは話してくれないと思います。正直、東さんが間に入ってくれた方が……俺より、東さんのほうが、話しやすいと思うんです」
「そんなもんか」
そういいながらも、東は否定はできないことは知っている。
東は、以前民人が他人の戸籍を取りたいと言っていたのを思い出す。
あれはおそらく、綺羅と、翠の関係を確認したかったのだろうと合点が言った。
そして、その話をそれとなく、自分には話していたが、大助には一切伝えていなかったのだから。
……でもそれは、大助が考えているような……彼が自信を失うような理由ではない。
大助だからこそ、大助のことを想っているからこそ、彼に言えないこともあるのだろう。
しかし、だからといって、東が伝言ゲームをするつもりはなかった。
あくまでも、これは大助と民人の問題。
彼らで乗り越えなければならない問題だから。
「結局はお前と民人の問題なんだから、お前らで話すべきだと、俺は思う。ただ……時間の問題もあるから。……考えがある」
とはいえ、乗りかかった船。
手遅れになる前に、一肌脱ぐくらいは許されるだろう。
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