43 / 65
かくしごと、またひとつ
かくしごと、またひとつ 4
しおりを挟む
「そうだ民人くん。今週末、大学祭だけど……本当に行く?」
シャワーを浴び直してから、ベッドに戻ってきた後。
秋の終わり、少し肌寒くなった部屋の中で二人、布団にくるまる。
しばらくの沈黙を破るように、ベッドに寝転ぶ大助が話を切り出す。
それは、少し前にした約束だった。
「うん、もちろんだよ。楽しみにしてる」
忘れるはずがない。
カレンダーにしっかり書いておいたんだから。
大学がどんな所か入ってみたいといったら、大助が提案してくれた、大助の通う大学の、大学祭。
屋台もあるし、ゼミや研究室の展示もあると聞いて、ホームページをずっと眺めていた。
「どっちを?」
僕がどれくらい楽しみにしているのか、具体的に言おうとしたときに、大助から質問される。
ドキリ、として、とりあえず聞き返す。
「どっちって?」
「俺とのデートか、それとも、大学に行くことか」
「りょ、両方だよ……」
……当然、それが大助との初めてのデートらしいデートだということも、覚えてはいる。
ただ、僕が主に大学に行くことを楽しみにしてたのは、言わなくてもお見通しのようだった。
というか大助、大学にすら嫉妬するとか、どれだけ嫉妬深いんだよ。
大助は僕を少し冷たい目で見てから、ゆっくり瞬きをして続ける。
「ならいいけど。民人くんはどこの研究室を回りたいかは目星付けてると思って」
そういって枕元においてある携帯端末を触る。
「よくわかってるね……」
「そりゃ、恋人だから? ……それで、俺は屋台と休憩スペースは確認したから。今日はもう疲れたと思うし、明日の夜にでも照らし合わせてコース決めよう」
「うん、ありがとう。……やっぱ旅行好きは違うね」
そう言うと大助は、少し口をへの字に曲げた後、表情をくるりと変えて得意げに続ける。
「民人くん、褒めるところがちょっとずれてるよ。俺は、デートの、た、め、に、準備してるんだから」
今日の大助はなんだか余裕がなくて新鮮だったけれど、いつものように飄々と歯が浮くようなことを言う大助が、ちょっと可笑しかった。
「そりゃ、どうも……」
「……あと、民人くん」
僕がヘラヘラと笑っていると、彼は急に、真面目な……というよりも、すこし不安そうな表情に切り替わる。
「……どうしたの」
「絶対、俺から離れて、一人にならないでね」
「それって……」
握られた手が冷たくて。
またお得意の嫉妬かよ、とふざけて返そうとしたけれど、どうもそれだけではないようで。
大助の目をしばらく見てから、……なるべく見ながら、僕なりに真面目に返答する。
「……わかった。大助はあんまり興味ないかもしれないけど、研究室回るの、付き合ってくれる?」
そういうと、柔らかい表情が戻り、
「もちろんだよ」
と優しい声が帰ってきた。
シャワーを浴び直してから、ベッドに戻ってきた後。
秋の終わり、少し肌寒くなった部屋の中で二人、布団にくるまる。
しばらくの沈黙を破るように、ベッドに寝転ぶ大助が話を切り出す。
それは、少し前にした約束だった。
「うん、もちろんだよ。楽しみにしてる」
忘れるはずがない。
カレンダーにしっかり書いておいたんだから。
大学がどんな所か入ってみたいといったら、大助が提案してくれた、大助の通う大学の、大学祭。
屋台もあるし、ゼミや研究室の展示もあると聞いて、ホームページをずっと眺めていた。
「どっちを?」
僕がどれくらい楽しみにしているのか、具体的に言おうとしたときに、大助から質問される。
ドキリ、として、とりあえず聞き返す。
「どっちって?」
「俺とのデートか、それとも、大学に行くことか」
「りょ、両方だよ……」
……当然、それが大助との初めてのデートらしいデートだということも、覚えてはいる。
ただ、僕が主に大学に行くことを楽しみにしてたのは、言わなくてもお見通しのようだった。
というか大助、大学にすら嫉妬するとか、どれだけ嫉妬深いんだよ。
大助は僕を少し冷たい目で見てから、ゆっくり瞬きをして続ける。
「ならいいけど。民人くんはどこの研究室を回りたいかは目星付けてると思って」
そういって枕元においてある携帯端末を触る。
「よくわかってるね……」
「そりゃ、恋人だから? ……それで、俺は屋台と休憩スペースは確認したから。今日はもう疲れたと思うし、明日の夜にでも照らし合わせてコース決めよう」
「うん、ありがとう。……やっぱ旅行好きは違うね」
そう言うと大助は、少し口をへの字に曲げた後、表情をくるりと変えて得意げに続ける。
「民人くん、褒めるところがちょっとずれてるよ。俺は、デートの、た、め、に、準備してるんだから」
今日の大助はなんだか余裕がなくて新鮮だったけれど、いつものように飄々と歯が浮くようなことを言う大助が、ちょっと可笑しかった。
「そりゃ、どうも……」
「……あと、民人くん」
僕がヘラヘラと笑っていると、彼は急に、真面目な……というよりも、すこし不安そうな表情に切り替わる。
「……どうしたの」
「絶対、俺から離れて、一人にならないでね」
「それって……」
握られた手が冷たくて。
またお得意の嫉妬かよ、とふざけて返そうとしたけれど、どうもそれだけではないようで。
大助の目をしばらく見てから、……なるべく見ながら、僕なりに真面目に返答する。
「……わかった。大助はあんまり興味ないかもしれないけど、研究室回るの、付き合ってくれる?」
そういうと、柔らかい表情が戻り、
「もちろんだよ」
と優しい声が帰ってきた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる