ふたつの嘘

noriko

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かくしごと、またひとつ

かくしごと、またひとつ 4

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「そうだ民人くん。今週末、大学祭だけど……本当に行く?」
シャワーを浴び直してから、ベッドに戻ってきた後。
秋の終わり、少し肌寒くなった部屋の中で二人、布団にくるまる。
しばらくの沈黙を破るように、ベッドに寝転ぶ大助が話を切り出す。
それは、少し前にした約束だった。
「うん、もちろんだよ。楽しみにしてる」
忘れるはずがない。
カレンダーにしっかり書いておいたんだから。
大学がどんな所か入ってみたいといったら、大助が提案してくれた、大助の通う大学の、大学祭。
屋台もあるし、ゼミや研究室の展示もあると聞いて、ホームページをずっと眺めていた。
「どっちを?」
僕がどれくらい楽しみにしているのか、具体的に言おうとしたときに、大助から質問される。
ドキリ、として、とりあえず聞き返す。
「どっちって?」
「俺とのデートか、それとも、大学に行くことか」
「りょ、両方だよ……」
……当然、それが大助との初めてのデートらしいデートだということも、覚えてはいる。
ただ、僕が主に大学に行くことを楽しみにしてたのは、言わなくてもお見通しのようだった。
というか大助、大学にすら嫉妬するとか、どれだけ嫉妬深いんだよ。
大助は僕を少し冷たい目で見てから、ゆっくり瞬きをして続ける。
「ならいいけど。民人くんはどこの研究室を回りたいかは目星付けてると思って」
そういって枕元においてある携帯端末を触る。
「よくわかってるね……」
「そりゃ、恋人だから? ……それで、俺は屋台と休憩スペースは確認したから。今日はもう疲れたと思うし、明日の夜にでも照らし合わせてコース決めよう」
「うん、ありがとう。……やっぱ旅行好きは違うね」
そう言うと大助は、少し口をへの字に曲げた後、表情をくるりと変えて得意げに続ける。
「民人くん、褒めるところがちょっとずれてるよ。俺は、デートの、た、め、に、準備してるんだから」
今日の大助はなんだか余裕がなくて新鮮だったけれど、いつものように飄々と歯が浮くようなことを言う大助が、ちょっと可笑しかった。
「そりゃ、どうも……」
「……あと、民人くん」
僕がヘラヘラと笑っていると、彼は急に、真面目な……というよりも、すこし不安そうな表情に切り替わる。
「……どうしたの」
「絶対、俺から離れて、一人にならないでね」
「それって……」
握られた手が冷たくて。
またお得意の嫉妬かよ、とふざけて返そうとしたけれど、どうもそれだけではないようで。
大助の目をしばらく見てから、……なるべく見ながら、僕なりに真面目に返答する。
「……わかった。大助はあんまり興味ないかもしれないけど、研究室回るの、付き合ってくれる?」
そういうと、柔らかい表情が戻り、
「もちろんだよ」
と優しい声が帰ってきた。
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