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ふたりの関係
ふたりの関係 1
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警察官と研修医。
久々に長めの休みを合わせられた二人は、彼らの故郷である西部へ現実からの逃避行に向かっていた。
行き着く先は、東が少し奮発して抑えたスイートルーム(後に、千菜と割り勘が決まった)。
それは、日頃の逢瀬でも、兄としての杏奈への配慮を忘れられない千菜へのねぎらいと、遠慮なんて一切捨ててほしい東の下心が込められた旅だった。
「あー、もう戻りたくねえ」
「今回ばかりは否定しない……」
決して短くない中央部での暮らしは、二人が大学に進学したときから始まった。
もともと中学からの同級生で、単なる友人であった彼ら。
進学先も中央部だったとはいえ、別々の大学ではあった。
しかし、土地勘も周囲に知り合いもない彼らは時折寂しさを埋めるように連絡を取り合うようになった。
それから東の猛アプローチに根負けする形で、なし崩し的に恋人と呼ばれる関係に至っている。
中央部での暮らしが始まってから、もうすぐ8年。
小競り合いは日常茶飯事ではあるものの、大きな喧嘩もなく関係が続いているのは、口ではなんと言おうと、お互いがお互いを思う気持ちはまったく冷めないから、というのもあるだろう。
生まれ育った街を一望できる大きな窓を備えた、キングサイズのベッドルームに横たわって見つめ合う二人は、互いの手を握りながら、話を続ける。
「明日の昼は別行動?」
「まあ、昼間だけだ。従兄弟が帰ってくるなら顔見せろってうっせーの」
東は面倒くさそうに前髪をかきあげる。
「何してようかなぁ……」
空白の時間を持て余す千菜は、ぼんやりと考える。
「俺の帰りを待って一人エッチしてくれてても全然構わねえぞ」
「だ……誰がそんなことするか!」
赤面して東の手を振りほどき、そっぽを向く。
「冗談。さっさと済ませるから、な」
なだめるように、ぐしゃりと色素の薄い髪を撫でる。
「……絶対しないからな」
「二度言わんでもいい」
期待くらいさせてくれてもいいだろ、とぼやく。
「そういえば、家庭教師」
千菜が背中を向けながら、話題を変える。
「ああ、民人か。何か聞いた?」
「杏奈がいたく気に入ってる。わかりやすいらしい」
「そりゃよかった。あいつ才能あんだなあ」
機嫌を直した? 千菜は、ぐるりと東の方向に向き直る。
「にしても、どういう人なんだ? 男の恋人がいるくらいしか知らないんだが」
「それだけで充分安心できるだろ、お前は」
「……あまりにも素性が謎すぎる」
「そうは言ってもなぁ、悪い奴じゃないってことくらいしか俺も……」
はあ? と千菜は声を荒らげる。
「その程度の情報で紹介するか?」
「いや、わりいわりい。言い方が悪かった。過去の記憶がないんだと。あ、これは本人から言っていいって言われてるやつな。……だから素性は不明だけど、知り合って2年たつから、悪いやつじゃないのは本当」
その言葉を聞いて、安心半分、面白くない気持ちが半分の千菜は、膨れ面をやめない。
「……お前がそこまで気に入る奴の顔、見てみたいな」
その言葉を聞いて、東は意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「かわいい顔してるぜ」
「その言い草、やっぱり浮気の報告だろ」
「冗談。超コワイ番犬みたいな彼氏いるから、絶対無理」
「彼氏いなきゃ浮気してたと!?」
「も~、千ちゃんコワイ」
お前の可愛さには負けるって、と頭をかき回せば、うっとりとした表情でこちらを見る。
しかし、一度火がついた千菜のジェラシーは止まらない。
「……彼には、俺のこと言ってるのか」
「え?」
「言ってるのか、お前に恋人がいると。俺がいると。言ってないなら今すぐ言え」
そういえば、言っていなかった気がすると、記憶をたどって気づく。
「い、今すぐは無理……わかった、今度紹介するから」
「言ってなかったんだな!? お前のこと好きになったらどうするつもりだったんだ!?」
「ああ、それはない、ないから。民人にも相手はいるし。本当に申し訳ないから、な?」
東はふと、たしかにあれだけ彼の家に通っておいて、もし民人が自分に気でもあったらどうするつもりだったのかと、千菜の怒りを受けて猛省する。
――実際、民人があまりにも大助以外眼中になく、明らかに自分が民人と大助の恋路に利用されているせいで、なんの心配もなく悪ノリしていたこともあり、そこまで考えるにも至らなかったのだが。
それにしても千菜はかなり、頭に来ているようで、目が真っ赤になっていた。
「……お前は昔からモテるし、そうやってすぐ誑かすから、心配になる」
「千ちゃん……」
東は、つっけんどんでありながらヤキモチ焼きの千菜が愛おしくてたまらない。
だから、時折小学生の男子のようにからかってしまう。
ただ、泣きそうな彼を見て、もう潮時か、と思う。
そうして、愛おしい真っ赤になったまぶたを、指でなぞる。
「俺が猛アタックしたのなんて、先にもあとにもお前だけだって」
「そんなん、信じられるか」
そろそろ恋人になって7年。
学生の時分ならいつまでも一緒にいられたが、今では互いのプライベートを縫って、時間をなんとか共有している。
そんな貴重な時間に、彼と過ごさない時間があるのに、千菜のジェラシーを試すような真似は、彼を傷つけて縛るような真似は、もう引き際だろう。
彼の妹も、来年には大学生、一人で暮らしていける年令になる。
彼の頬を撫でると、くすぐったそうに目を閉じた。
「ごめん、千菜。……明日の昼、一緒に帰らないか」
その言葉に、千菜は目を見開く。
「なんで」
「それで、春から一緒に住もう、2人で」
「……杏奈は」
「俺からお願いする」
「……部屋は」
「一緒に決めよう。なんなら杏奈ちゃんの部屋と隣でどうだ」
「……なんでこんなときに言うんだ」
「ごめん。本当はもっと、服着て、ちゃんとしたところで言うつもりだったけど。今まで寂しい思いさせてたのわかって、腹くくろうって思った」
「……本気だな」
「本気。ずっと千ちゃんと一緒にいたい」
彼の手を握れば、指を絡め返される。
「絶対だぞ」
「絶対だ。命でもなんでも……いや、お医者さまに言うことじゃねえな」
そのまま彼を手繰り寄せ、東の腕の中に閉じ込める。
「東……」
東より少し背の高い千菜が呟く言葉は、東の耳元を刺激する。
「久々に名前言ってくれたと思ったら、そんな声で呼ぶなよ。ムラムラするだろ」
「……させてるんだ」
「そういうことね」
千菜の首に手を回し、顔を上げる。
離したくないという気持ちが溢れるように、互いの唇を貪る。
「今日、すげえ期待してるよな」
太ももに当たる固いものを感じ、千菜の耳元でささやく。
「ふぅっ……そこで、しゃべるな……」
耳元のこそばゆさに、思わず息を漏らす。
「ほんと、耳よえーな」
東はにやりと笑い、彼の耳を口で食む。
「んっ……」
もう片方の耳は、指で、手のひらで、触れるか触れないかのところで刺激する。
「ほら、気持ちいいだろ?」
「うっ……あ……」
淫靡な水音をわざと立ててやれば、千菜は余計に声を深く漏らす。
「下、当たってるけど。当ててんの?」
「あててない……」
耳元への刺激で身体をよじる彼の芯は、強い刺激を求めるかのように、東のからだに擦り付けられていた。
その淫靡な姿に思わず、東は喉を鳴らす。
「その割にはめっちゃ動いてんじゃん」
「うごいて……ああっ……!」
固くなったそれをゆっくりと指でなぞると、千菜はより高い声を上げた。
「いままでたまってた分、空っぽにしてやるよ」
久々に長めの休みを合わせられた二人は、彼らの故郷である西部へ現実からの逃避行に向かっていた。
行き着く先は、東が少し奮発して抑えたスイートルーム(後に、千菜と割り勘が決まった)。
それは、日頃の逢瀬でも、兄としての杏奈への配慮を忘れられない千菜へのねぎらいと、遠慮なんて一切捨ててほしい東の下心が込められた旅だった。
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「今回ばかりは否定しない……」
決して短くない中央部での暮らしは、二人が大学に進学したときから始まった。
もともと中学からの同級生で、単なる友人であった彼ら。
進学先も中央部だったとはいえ、別々の大学ではあった。
しかし、土地勘も周囲に知り合いもない彼らは時折寂しさを埋めるように連絡を取り合うようになった。
それから東の猛アプローチに根負けする形で、なし崩し的に恋人と呼ばれる関係に至っている。
中央部での暮らしが始まってから、もうすぐ8年。
小競り合いは日常茶飯事ではあるものの、大きな喧嘩もなく関係が続いているのは、口ではなんと言おうと、お互いがお互いを思う気持ちはまったく冷めないから、というのもあるだろう。
生まれ育った街を一望できる大きな窓を備えた、キングサイズのベッドルームに横たわって見つめ合う二人は、互いの手を握りながら、話を続ける。
「明日の昼は別行動?」
「まあ、昼間だけだ。従兄弟が帰ってくるなら顔見せろってうっせーの」
東は面倒くさそうに前髪をかきあげる。
「何してようかなぁ……」
空白の時間を持て余す千菜は、ぼんやりと考える。
「俺の帰りを待って一人エッチしてくれてても全然構わねえぞ」
「だ……誰がそんなことするか!」
赤面して東の手を振りほどき、そっぽを向く。
「冗談。さっさと済ませるから、な」
なだめるように、ぐしゃりと色素の薄い髪を撫でる。
「……絶対しないからな」
「二度言わんでもいい」
期待くらいさせてくれてもいいだろ、とぼやく。
「そういえば、家庭教師」
千菜が背中を向けながら、話題を変える。
「ああ、民人か。何か聞いた?」
「杏奈がいたく気に入ってる。わかりやすいらしい」
「そりゃよかった。あいつ才能あんだなあ」
機嫌を直した? 千菜は、ぐるりと東の方向に向き直る。
「にしても、どういう人なんだ? 男の恋人がいるくらいしか知らないんだが」
「それだけで充分安心できるだろ、お前は」
「……あまりにも素性が謎すぎる」
「そうは言ってもなぁ、悪い奴じゃないってことくらいしか俺も……」
はあ? と千菜は声を荒らげる。
「その程度の情報で紹介するか?」
「いや、わりいわりい。言い方が悪かった。過去の記憶がないんだと。あ、これは本人から言っていいって言われてるやつな。……だから素性は不明だけど、知り合って2年たつから、悪いやつじゃないのは本当」
その言葉を聞いて、安心半分、面白くない気持ちが半分の千菜は、膨れ面をやめない。
「……お前がそこまで気に入る奴の顔、見てみたいな」
その言葉を聞いて、東は意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「かわいい顔してるぜ」
「その言い草、やっぱり浮気の報告だろ」
「冗談。超コワイ番犬みたいな彼氏いるから、絶対無理」
「彼氏いなきゃ浮気してたと!?」
「も~、千ちゃんコワイ」
お前の可愛さには負けるって、と頭をかき回せば、うっとりとした表情でこちらを見る。
しかし、一度火がついた千菜のジェラシーは止まらない。
「……彼には、俺のこと言ってるのか」
「え?」
「言ってるのか、お前に恋人がいると。俺がいると。言ってないなら今すぐ言え」
そういえば、言っていなかった気がすると、記憶をたどって気づく。
「い、今すぐは無理……わかった、今度紹介するから」
「言ってなかったんだな!? お前のこと好きになったらどうするつもりだったんだ!?」
「ああ、それはない、ないから。民人にも相手はいるし。本当に申し訳ないから、な?」
東はふと、たしかにあれだけ彼の家に通っておいて、もし民人が自分に気でもあったらどうするつもりだったのかと、千菜の怒りを受けて猛省する。
――実際、民人があまりにも大助以外眼中になく、明らかに自分が民人と大助の恋路に利用されているせいで、なんの心配もなく悪ノリしていたこともあり、そこまで考えるにも至らなかったのだが。
それにしても千菜はかなり、頭に来ているようで、目が真っ赤になっていた。
「……お前は昔からモテるし、そうやってすぐ誑かすから、心配になる」
「千ちゃん……」
東は、つっけんどんでありながらヤキモチ焼きの千菜が愛おしくてたまらない。
だから、時折小学生の男子のようにからかってしまう。
ただ、泣きそうな彼を見て、もう潮時か、と思う。
そうして、愛おしい真っ赤になったまぶたを、指でなぞる。
「俺が猛アタックしたのなんて、先にもあとにもお前だけだって」
「そんなん、信じられるか」
そろそろ恋人になって7年。
学生の時分ならいつまでも一緒にいられたが、今では互いのプライベートを縫って、時間をなんとか共有している。
そんな貴重な時間に、彼と過ごさない時間があるのに、千菜のジェラシーを試すような真似は、彼を傷つけて縛るような真似は、もう引き際だろう。
彼の妹も、来年には大学生、一人で暮らしていける年令になる。
彼の頬を撫でると、くすぐったそうに目を閉じた。
「ごめん、千菜。……明日の昼、一緒に帰らないか」
その言葉に、千菜は目を見開く。
「なんで」
「それで、春から一緒に住もう、2人で」
「……杏奈は」
「俺からお願いする」
「……部屋は」
「一緒に決めよう。なんなら杏奈ちゃんの部屋と隣でどうだ」
「……なんでこんなときに言うんだ」
「ごめん。本当はもっと、服着て、ちゃんとしたところで言うつもりだったけど。今まで寂しい思いさせてたのわかって、腹くくろうって思った」
「……本気だな」
「本気。ずっと千ちゃんと一緒にいたい」
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「絶対だぞ」
「絶対だ。命でもなんでも……いや、お医者さまに言うことじゃねえな」
そのまま彼を手繰り寄せ、東の腕の中に閉じ込める。
「東……」
東より少し背の高い千菜が呟く言葉は、東の耳元を刺激する。
「久々に名前言ってくれたと思ったら、そんな声で呼ぶなよ。ムラムラするだろ」
「……させてるんだ」
「そういうことね」
千菜の首に手を回し、顔を上げる。
離したくないという気持ちが溢れるように、互いの唇を貪る。
「今日、すげえ期待してるよな」
太ももに当たる固いものを感じ、千菜の耳元でささやく。
「ふぅっ……そこで、しゃべるな……」
耳元のこそばゆさに、思わず息を漏らす。
「ほんと、耳よえーな」
東はにやりと笑い、彼の耳を口で食む。
「んっ……」
もう片方の耳は、指で、手のひらで、触れるか触れないかのところで刺激する。
「ほら、気持ちいいだろ?」
「うっ……あ……」
淫靡な水音をわざと立ててやれば、千菜は余計に声を深く漏らす。
「下、当たってるけど。当ててんの?」
「あててない……」
耳元への刺激で身体をよじる彼の芯は、強い刺激を求めるかのように、東のからだに擦り付けられていた。
その淫靡な姿に思わず、東は喉を鳴らす。
「その割にはめっちゃ動いてんじゃん」
「うごいて……ああっ……!」
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