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ふたりの約束
ふたりの約束 6
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結局その日は、かなり盛り上がってしまい、ベッドで満足するまで致したあと、風呂場でも事に及んだ。
たまにはそういう日もあっていいかもしれないと思ったけど……そんなことをしていたらすっかり夜が更けてしまって、次の日は二人して、いつもより遅く起きた。
まどろみの中で、指に光るリングを見つめる。
首にかけるか迷ったけど、こちらのほうが失くさないと思って。
少し恥ずかしいけど、指にはめることにした。
「これが嬉しいなんて、僕も随分絆されてるなあ」
すやすやと眠る大助を起こさぬように起き上がり、朝の支度をしようと起き上がり、時計を見る。
水曜日、朝8時を少し回った頃。
そこで一気に、現実に引き戻される。
「……やばい、燃えるゴミの日だ! どうしよう、大助!!」
混乱のあまり、思わず大助を叩き起こす。
「んん……もえ……?」
「ちょっ……、と、とりあえず袋!」
部屋の燃えるゴミを高速でかき集めて、二袋。
そういえば前の収集日も、寝坊して間に合わなかったから、少し多い。
大助と2人慌てて外に飛び出すと、まだ収集はされていないようで、ほっと胸をなでおろした。
「危なかった……」
あとは落ち着いて収集所にごみ袋をおいて、ため息をつく。
無事、平穏な朝を取り戻した僕たちは、ゆったりとマンションに戻る。
「水曜日も目覚まし必須だな……」
「俺も、夏休みで気抜けてたわ」
「大学生の夏休みって長いんだね。高校生はもう新学期だってのに……あ」
マンションのエントランスに行くと、そこには同じ制服を着た、2人の女子学生が立ち話をしていた。
僕らの声に振り向いて、驚いたように目を見開く。
「あ、先生……! おはようございます」
それは、紛れもなく昨日授業をした杏奈ちゃんだった。
隣りにいる、長い金髪の子は、きっとお友達だろう。
彼女もまた、会釈したあと、僕たちを見て驚いたような顔をした。
「杏奈ちゃん、おはよう。こんな寝間着で会うなんて恥ずかしい……」
ぽかんとしていたのは、僕があんまりにもだらしない格好だったからだろう。
ああ、これから外出るときはちゃんとしないと。
「あ、いえ、私こそ引き止めちゃって。昨日はありがとうございました」
両手を振ってにこやかに笑う。
そして、大助の方を見やる。
大助はそれに、にっこりと微笑みで返す。
すると、杏奈ちゃんは恥ずかしそうに赤面した。
……大助、年下にモテそうだもんな。
「そ、それじゃあ私達は、学校行きますね!」
「うん、頑張ってね」
彼女はペコリとお辞儀をして、お友達とそそくさと去っていく。
「……ああ、恥ずかしい格好見られたな……」
今日はツイてないかもしれない。
大助はポリポリと頭をかいて、ボソリとつぶやく。
「もっと恥ずかしいもん見られた気がするけど……」
「え?」
「なんでもないよ。さ、戻ろう。」
「そうだね。ていうか大助、さっきの笑顔はなんだよ」
そう言うと、また同じように微笑む。
「なに? やきもち?」
「違うけど! なんか教育に悪い!」
「なんだよそれ」
僕にはあんなキメ顔しないくせに。
なんて少しモヤっとしたけど、黙っておくことにした。
***
一方、マンションを離れて登校していく学生たちは。
「あ~~びっくりした。まさか朝から会っちゃうなんて」
予想外の出来事に赤面した杏奈は、手でぱたぱたと顔を扇いでいた。
「あれ、さっきのが先生?」
マリアはかばんの中から、先日予備校でもらったうちわを差し出し、まだ赤面する杏奈に問いかける。
「うん。び、びっくりしたあ……お友達と一緒に住んでるって聞いたけど……きっとあの人だあ」
なるほどねえ、とマリアはつぶやく。
「あれは友達というより……」
マリアのその言葉に、杏奈は食い地味に聞き直す。
「ねえ、マリアもやっぱりそう思う?」
しまった、とばかりにマリアも顔を引きつらせる。
「うん、正直わたしもあれは、そう思わざるを得ない」
(背の高い方のあのドヤっとした彼氏面といい、それから家庭教師の方の、あの首の……。朝からとんでもないもの見させられた。大丈夫かしら、あれが家庭教師でこの子は……)
マリアは姉のように、杏奈の行く先を憂う。
そんな心配もよそに、マリアの言葉に、杏奈は目を輝かせる。
「そうだよね! 昨日話聞いたとき、もしかしたら……!? なんて思ってたんだよお。はあ、まさかこんなに早く確認できるなんて、朝からいいもの見たなあ~」
スキップでもしそうな雰囲気で早口で語る杏奈に、マリアは呆れて苦笑いをする。
「杏奈、ほんとそう言うの好きだよね」
「ふふ、馴れ初めとか聞きたいなあ。楽しみだな~」
(まあ、本人が嬉しそうだし良いか……)
昨日の食堂の会話で、過保護がちな彼女の兄が男性の家庭教師を許可したと言っていたのに驚いたが。
確かに男性の恋人がいるのであれば、兄も心配いらないと判断したのだろう。
ただ、彼女が男性同士の恋愛に異様な執着を見せることを除けば、だが。
それにしても、とマリアは家庭教師の顔を思い出す。
「杏奈、あの先生と面識あった?」
ようやく落ち着いた杏奈は、とぼけた顔で振り返る。
「え? 無いよお。先生もはじめましてって感じだったし。お兄ちゃんのお友達のお友達? だけど、会ったことなかったなあ」
「そう……名前は?」
「朝倉先生」
(なんか、どっかで見たことあるような……)
でも、聞いたことのない名前。
人違いか、雰囲気だけか。
でも、特徴的な青い髪。
杏奈は覚えていないということで、自分の記憶違いかも、と思う。
まあ、さして大切なことでも無かろうと、そのときは胸の中に引っかかりをしまっておいたのだった。
「それで、授業はどうだったの?」
「良かった! わかりやすくて。大学行って数学の先生になりたいんだって言ってたけど、うちの高校に来てほしいくらいだよ」
「ふーん、それは良かった」
たまにはそういう日もあっていいかもしれないと思ったけど……そんなことをしていたらすっかり夜が更けてしまって、次の日は二人して、いつもより遅く起きた。
まどろみの中で、指に光るリングを見つめる。
首にかけるか迷ったけど、こちらのほうが失くさないと思って。
少し恥ずかしいけど、指にはめることにした。
「これが嬉しいなんて、僕も随分絆されてるなあ」
すやすやと眠る大助を起こさぬように起き上がり、朝の支度をしようと起き上がり、時計を見る。
水曜日、朝8時を少し回った頃。
そこで一気に、現実に引き戻される。
「……やばい、燃えるゴミの日だ! どうしよう、大助!!」
混乱のあまり、思わず大助を叩き起こす。
「んん……もえ……?」
「ちょっ……、と、とりあえず袋!」
部屋の燃えるゴミを高速でかき集めて、二袋。
そういえば前の収集日も、寝坊して間に合わなかったから、少し多い。
大助と2人慌てて外に飛び出すと、まだ収集はされていないようで、ほっと胸をなでおろした。
「危なかった……」
あとは落ち着いて収集所にごみ袋をおいて、ため息をつく。
無事、平穏な朝を取り戻した僕たちは、ゆったりとマンションに戻る。
「水曜日も目覚まし必須だな……」
「俺も、夏休みで気抜けてたわ」
「大学生の夏休みって長いんだね。高校生はもう新学期だってのに……あ」
マンションのエントランスに行くと、そこには同じ制服を着た、2人の女子学生が立ち話をしていた。
僕らの声に振り向いて、驚いたように目を見開く。
「あ、先生……! おはようございます」
それは、紛れもなく昨日授業をした杏奈ちゃんだった。
隣りにいる、長い金髪の子は、きっとお友達だろう。
彼女もまた、会釈したあと、僕たちを見て驚いたような顔をした。
「杏奈ちゃん、おはよう。こんな寝間着で会うなんて恥ずかしい……」
ぽかんとしていたのは、僕があんまりにもだらしない格好だったからだろう。
ああ、これから外出るときはちゃんとしないと。
「あ、いえ、私こそ引き止めちゃって。昨日はありがとうございました」
両手を振ってにこやかに笑う。
そして、大助の方を見やる。
大助はそれに、にっこりと微笑みで返す。
すると、杏奈ちゃんは恥ずかしそうに赤面した。
……大助、年下にモテそうだもんな。
「そ、それじゃあ私達は、学校行きますね!」
「うん、頑張ってね」
彼女はペコリとお辞儀をして、お友達とそそくさと去っていく。
「……ああ、恥ずかしい格好見られたな……」
今日はツイてないかもしれない。
大助はポリポリと頭をかいて、ボソリとつぶやく。
「もっと恥ずかしいもん見られた気がするけど……」
「え?」
「なんでもないよ。さ、戻ろう。」
「そうだね。ていうか大助、さっきの笑顔はなんだよ」
そう言うと、また同じように微笑む。
「なに? やきもち?」
「違うけど! なんか教育に悪い!」
「なんだよそれ」
僕にはあんなキメ顔しないくせに。
なんて少しモヤっとしたけど、黙っておくことにした。
***
一方、マンションを離れて登校していく学生たちは。
「あ~~びっくりした。まさか朝から会っちゃうなんて」
予想外の出来事に赤面した杏奈は、手でぱたぱたと顔を扇いでいた。
「あれ、さっきのが先生?」
マリアはかばんの中から、先日予備校でもらったうちわを差し出し、まだ赤面する杏奈に問いかける。
「うん。び、びっくりしたあ……お友達と一緒に住んでるって聞いたけど……きっとあの人だあ」
なるほどねえ、とマリアはつぶやく。
「あれは友達というより……」
マリアのその言葉に、杏奈は食い地味に聞き直す。
「ねえ、マリアもやっぱりそう思う?」
しまった、とばかりにマリアも顔を引きつらせる。
「うん、正直わたしもあれは、そう思わざるを得ない」
(背の高い方のあのドヤっとした彼氏面といい、それから家庭教師の方の、あの首の……。朝からとんでもないもの見させられた。大丈夫かしら、あれが家庭教師でこの子は……)
マリアは姉のように、杏奈の行く先を憂う。
そんな心配もよそに、マリアの言葉に、杏奈は目を輝かせる。
「そうだよね! 昨日話聞いたとき、もしかしたら……!? なんて思ってたんだよお。はあ、まさかこんなに早く確認できるなんて、朝からいいもの見たなあ~」
スキップでもしそうな雰囲気で早口で語る杏奈に、マリアは呆れて苦笑いをする。
「杏奈、ほんとそう言うの好きだよね」
「ふふ、馴れ初めとか聞きたいなあ。楽しみだな~」
(まあ、本人が嬉しそうだし良いか……)
昨日の食堂の会話で、過保護がちな彼女の兄が男性の家庭教師を許可したと言っていたのに驚いたが。
確かに男性の恋人がいるのであれば、兄も心配いらないと判断したのだろう。
ただ、彼女が男性同士の恋愛に異様な執着を見せることを除けば、だが。
それにしても、とマリアは家庭教師の顔を思い出す。
「杏奈、あの先生と面識あった?」
ようやく落ち着いた杏奈は、とぼけた顔で振り返る。
「え? 無いよお。先生もはじめましてって感じだったし。お兄ちゃんのお友達のお友達? だけど、会ったことなかったなあ」
「そう……名前は?」
「朝倉先生」
(なんか、どっかで見たことあるような……)
でも、聞いたことのない名前。
人違いか、雰囲気だけか。
でも、特徴的な青い髪。
杏奈は覚えていないということで、自分の記憶違いかも、と思う。
まあ、さして大切なことでも無かろうと、そのときは胸の中に引っかかりをしまっておいたのだった。
「それで、授業はどうだったの?」
「良かった! わかりやすくて。大学行って数学の先生になりたいんだって言ってたけど、うちの高校に来てほしいくらいだよ」
「ふーん、それは良かった」
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