ふたつの嘘

noriko

文字の大きさ
上 下
15 / 65
ふたりの約束

ふたりの約束 3

しおりを挟む
19時。
帰りのエレベータに乗ったら、思わずため息が漏れた。
2時間、なんとかなったとはいえ、すごく疲れた。
心臓がバクバク言っているし、手にほんのり汗を感じる。
「学校の先生はこれを毎日、大人数相手に何時間もやるんだ……大変だあ」
杏奈ちゃんには、学校の先生よりわかりやすいって言ってもらえたけど、先生、すごいです。

大助は普段、この曜日は20時に帰ってくるので、夕飯の準備を進めなきゃ。
そう思いながらエレベーターを降りると、ちょうど僕たちの部屋の前に、大助が佇んでいた。
「あれ、大助早いね」
声をかけると、大助はにこやかに返事をくれる。
「ああ、民人くんお疲れ様。今日は俺もやるよ」
「いいのに」
どうやら朝と同じく、僕を気遣って早く帰ってきてくれたようだ。
「気にしないでよ、俺も民人君と一緒にいたいだけだから」
玄関で靴を抜いている間に、後ろからそんなことを言われる。
大助はなんの気無しに放った言葉だろうけど、ちょうど僕の耳元で言われる形になって、顔に熱が集まる。
「へっ……またそういうこと言う」
「なんだよ民人くん、顔真っ赤。俺まで恥ずかしくなるじゃん」
「ちょっとは恥ずかしがれよ、そんな直球でさあ」

そんなわけで、分担して作った夕飯を、今日の話で盛り上がりながら平らげた。
その後は、ソファでぐったり。
「疲れた……」
お疲れ様、と大助はダイニングで紅茶を飲みながら、僕を見て笑う。
「あ、そうだ。民人くんちょっとまってて」
「え?」
大助は、急に何かを思い出した様子で、リビングをあとにする。
程なくして戻ってきたときには、小さな紙袋を手にしていた。
「プレゼント。俺もバイトして買ってみた」
「ええ!?」
渡された紙袋に、思わず居直る。
「開けてみて」
紙袋から、ジュエリーブランドと見受けられるが、まさか。
「……そのまさかだ」
中に入っていたのは、指輪と、チェーン。
「2つ理由があってね、1つ目は、俺はずっと民人くんのそばにいるから。2つ目は、これから民人くんは色んな所に行くけれど、民人くんには俺という恋人がいるから、みんなに知ってほしくて。自分でも重いと思うけど……よかったら受け取って欲しい」
「つまりは、お守りで、魔除け?」
「虫除けかな」
その言葉に、彼の独占欲の強さを再認識させられる。
笑顔でサラリととんでもないことを言う。
「僕に寄ってくる物好き、大助くらいだと思うけど……」
「あのおまわりさんみたいに、いるでしょ」
「東さんはただの……まあいいや。1つ目の理由だけでも、もらっておくね」
なんて言ってみたけれど、本当はものすごく嬉しい。
衝動で思わず、大助の肩を引き寄せる。
「民人くん、ちょっと……」
自分から大助に、キス、してしまうくらいに。
「ありがとう」
「……すげえご褒美」
大助は赤面して、頭を掻く。
「そんなに?」
「だって、民人くんからなんて、そんなに……」
なにかものすごく大事なものでも扱うかのように、自らの口を手で覆う。
「そりゃ、僕だってそういう時くらいあるよ」
「民人くん、好き」
腰をかがめて、僕の首に手を回す。
頬に大助の短い髪があたってこそばゆい。
ソファに倒れ込んでみると、そのまま大助が覆いかぶさるように崩れ込んでくる。
大助は僕に体重をかけないように支えているみたいだけれど、少しの重みが、どうしようもなく愛おしい。
彼の唇が、何度も僕のそれをついばむ。
「大助、今日だから言うけど……昨日の夜、ちょっと寂しかった」
「……それ、誘ってる? いいの? 疲れてるでしょ」
「そうだけど……それより、大助が良ければ……ん……」
続きの言葉は、彼に塞がれる。
静まり返った部屋に、時折響くリップノイズは耳を支配する。
口吻は次第に深くなっていき、大助の舌が僕の歯列をなぞる。
僕も負けじと彼の舌に吸い付く。
「はぁ……ア、……ン……」
苦しい、でも、もっと。
互いを貪るように絡み合ったあと、糸を引いて名残惜しそうに離れていく。
大助の赤い瞳が、僕をまっすぐに見つめる。
「そんな事言われて、断れるわけ、ないでしょ」
息も絶え絶えに言い放つ彼は、シャツのボタンを一つはずしてから、僕の腰に手を回す。
そのままゆっくりと背中を伝いあげ、僕の服はかんたんに捲くりあげられる。
外気にさらされた突起は、2日ぶりの刺激を期待してすでに固くなっているのを感じる。
それに大助の視線が注がれているのを感じて、思わず体を丸める。
「な、なんだよ」
「俺が民人くんの身体、そんなにしたと思ったら、嬉しくて」
「喜ぶなよ……」
「ごめん。でも、ほんとに、民人くんが俺のこと求めてくれるの、嬉しい」
だから、全部見せて。
そう言われたら、観念するしかない。
僕は身体の前で交差した手をほどき、胴を優しく撫でるその手を受け入れる。
「……はぁ……っ」
尖ったそこを手がかすめるたび、吐息が漏れる。
じれったい快感を逃すために開いた口を待ちわびたように、彼の唇が逃げ場を奪う。
「んっ……ぁ……アァ……」
口の中と身体をなぶり回されて、何も考えられない。
でも、どこまでも満たされていく。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...