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ふたつの夢がありました
ふたつの夢がありました 2
しおりを挟む大助の夏休みが始まり、半月が経った。
大学生は一般的に元気だと思うけれど、大助も例外ではないらしい。
「大助、ほんとに、朝から、いい加減にして」
ぼんやりと、最後に自分の部屋で寝たのはいつだろう、と思い出すけれど、大助と恋人になる前だ……と項垂れる。
実際、昨日もあれだけ、……あれだけ僕を弄んでおいて、僕はもうくたくたなのに、大助はまだ僕を離してくれない。
「無理、今までどれだけ我慢したと思ってるの」
大助の答えは、いつもこの問いだ。
「そんなの知らないし……ひぁっ!」
そして、後ろから抱きすくめられて、胸の突起を押し潰される。
「文句言いながら、民人君のここ、すっかり出来上がってきたんじゃない?」
「ああっ……もう、お前がそんなんだから!」
いつになったら飽きるのだろう、という思いと、なんだかんだで、このダラダラとした時間が続いて欲しい、という思いが絡まる。
結局、何事も無く幸せなのだ。
「たまには、友達とかと、遊びに……っん」
「せっかくの夏休みなのに?」
こんなかんじで、いつも絆されて、大助の為すがままにされるのも日課と化していた。
「んっ……夏休みだから、だよ……っ!」
「うーん、でも、民人くんのここ、初めからこれくらい敏感だったかも」
聞いてないし。
飽きもせず、男の胸を弄り続ける大助。
知ってる、こういうの変態っていうんだ。
でも、ゴツゴツとした乾いた手が、心地良い。
「知るか!」
最後の理性を振り絞り、大助の胸を殴った。
――どうせ、一分後にはなくなっているのだろうけど。
「まったく、素直じゃないよな」
にこりと笑い、子供をなだめるように、年下のそいつは僕の髪をかきあげる。
そして、僕の瞳をまっすぐに見つめながら、もう片方の手を僕の頬へ添えた。
ああ、また、とろけてしまう。
瞳を閉じ、大助に体重を預けたその時。
「……チッ」
珍しく、この時間にチャイムがなった。
(今、大助舌打ちしたよね)
「民人くん、俺が行くから」
大助はよそ行きの返事をしてから手早く服を来て、そのまま出て行ってしまった。
「……僕、どうすればいいんだ」
宅配便か何かで、さっさと大助に戻ってきて欲しいと思ってしまった。
――イヤイヤ、と言っておきながら、身体はもう準備万端だった。
その状態で放り出されて、もう途方に暮れていた。
「なかなか帰ってこないし」
諦めてシャワーを浴びに行こうにも、客人の前に出られる格好ではない。
時間からしたらそんなに経っていないのだろうけど、感覚としては非常に長い。
ぼんやりと、扉の向こうから聞こえる音を拾う。
どうやら大助は随分と話し込んでいるみたいだから、残念ながら宅配便ではなかった。
「……というか、聞いたことある声だな」
寝ぼけた頭では、とっさの判断は出来なかったけれど。
どう考えても。
「――東さん!?」
気だるそうな話し方、最高に悪い言葉遣い。
どう考えても、東さんだ。
東さんと大助が二人で話しているという状況、かなりまずい。
あれからも三日に一回、大助が居るのに東さんは遊びにやってきたが、気まずいなんてもんじゃなかった。
すっと背筋に冷たさが走り、頭を覚ました。
長いこと二人にはして置けない。
なんたって、大助は東さんのことが嫌いだ(僕のせいで)。
仕方ない、東さんならいいや、と昨日来ていた部屋着を探し、袖を通す。
幸い湧いていた熱は、この状況で随分と収まった。
「あ、東さん! まあ上がってくださいよ!」
部屋から出て声をかける僕を見て、大助と東さんは目を丸くし、会話を止める。
「え、どうしたの?」
大助は頭を抱え、東さんは、にんまりと笑った。
「おいおい、お盛んなこったな。そこお前の部屋じゃねえだろ?」
「……あ」
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