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前編

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「はあ……僕にもその強運、分けてくれないかなあ」
「二人でこうして分け合ってるじゃん」

今度はなんでも、知り合いの結婚式の二次会で温泉のペアチケットを当ててきたということで、二人で有名な温泉地へ旅行に行くことになった。
こういうのって、当たるやつは何回でも当たるし、当たらない人は全く当たらないよね。

彼がホテルのペアチケットを当ててきてから4ヶ月、つまり、彼が僕の恋人となってから、4ヶ月。
とんでもない始まり方だった僕たちだけれど、なんだかんだでうまくやっている。

電車を乗り継いで3時間。
平日だからか、すでに昼過ぎと時間が遅いからか、人の少ないボックス席で、互い違いに座って他愛もない話をする。
「楽しみだなあ。部屋に露天風呂がついてるんでしょ」
「贅沢だよな。……司会の人にさ、聞かれたんだよ。誰と行きますか? て。……この前、ホテルが当たったときは言えなかったけど、今回は、恋人と行きますって言えた」
聞いてもないのに嬉しそうに、口元を抑えながら。
「それ、僕に言う?」
こいつ、こうやって惚気けるんだな、と思うと、おかしくて笑いがこみ上げる。
「はは。そういえば、初めてだよね。こんな遠出」
「そうだね。ちょうど夏休みで良かった」
こんなに早く来れたのも、大学は夏休み、僕も長めのお休みをたまたまもらえていたからだ。
休みは何しようね、なんて言ってたときに、大助がまたチケットをもらって来たのだ。

温泉地へは、更にバスを乗り継ぐ。
海沿いを走るバスの中から、白い砂浜にちらつく海水浴客や、海産物のお土産屋さんなど、観光地らしい賑わいが見て取れた。
とくにノープランできてしまったが、時間が足りないくらい楽しめそうだな、と思う。
バスはちょうど、旅館の前で停車した。
少し高台にあるエントランスまで登りつめると、ズラリと並んだ仲居さんたちが、一斉に同じ角度でお辞儀をして、「おかえりなさいませ」と出迎えてくれる。
「た、ただいま……?」
などとしどろもどろする僕の隣で、大助はまた手慣れた様子で仲居さんと話し、荷物を預けていた。
その光景に、見覚えがあり、大助にこっそりと耳打ちする。
「……今日はダブルじゃないよね?」
「旅館だから、布団だね。なに、別にダブルでもいいじゃん。どうせやること変わらないし」
僕の心配に、ド直球の返答。
「い、いや……そういうことじゃなくてさあ……」
「ふーん。じゃあどういうことよ?」
素直な僕の気持ちだったが、大助は少し面白くなさそうに口を尖らせた。
程なくして仲居さんが、僕たちを部屋に案内してくれるとのことで、高級感あるエレベーターに誘導された。

……さっきの会話でわかったこと。
旅行、観光、それもいいけど僕たちの頭には一番に、セックスがある。
大助だけじゃなくて、僕だってそうだ。
だって、恋人と二人、旅館に行くのだから、少しは期待してしまう。
お土産や観光は楽しみながらも、そっちの準備も万端だった。
それで、大助もやる気満々だというのを言葉で示してきたから、勝手に緊張してしまう。

「それでは、ごゆっくりお過ごしください」
仲居さんの案内が終わり、二人で部屋に取り残された。
思ったよりも広く、景色のいい角部屋。
「……広いなあ。あ、そうだ露天風呂!」
突き当りのガラス戸を開けた先にあった露天風呂からは、海が一望できた。
「わあ……非日常」
「天気良くてよかったなあ」
心地良い風が入ってきて、青い海はキラキラと輝く。
白い砂浜とのコントラストが絶妙だった。
「ほんとだね。結構広いし、足思いっきり伸ばせ……」
「うん、これなら、二人で入れるね?」
僕の言葉を遮るように、ニコニコとしながら大助は言うが。
言ってることが相変わらず、盛ってるというか。
「……大助、ちょっと気が早くない?」
「そう?」
「だって、まだ来たばっかじゃ……ん……」
言い切る前に、大助の唇が合わさる。
いつの間にか僕の腰に回された腕にガッチリと体を引き寄せられ、抵抗も虚しく口の中をかき回される。
ふと、ここで考える。
今は15時、夕飯までは3時間。
観光は別に、旅館を出てからでもできるし。
だったらべつに、今からでも……。
「なにいってんの、俺たち最初にセックスしたの、朝食前だったのに」
――大助も、同じ考えのようだった。

露天風呂の前に置かれた長椅子に、どちらからともなくもつれ込む。
大助は僕の唇を貪りながら、自らのベルトを外し、ズボンのチャックを下ろす。
僕は僕で、ひと思いに下着ごとズボンを下ろし、下半身をさらけ出す。
「は、う……んっ……」
「民人くん、なんだかんだ、やる気満々じゃん」
「そりゃ、僕だって、やりたいし……」
どちらからともなく熱を帯びかけたそれを重ね合わせ、互いを触れ合わせるうち、からだもだんだんその気になってきた。
大助は僕の首元に吸い付いたと思ったら、すぐに僕のシャツをまくりあげた。
そして、いつものことながら、胸元にも吸い付く。
どうにも大助は僕の胸が好きらしく、この瞬間が一番生き生きとしている、気がする。
「ずっと楽しみだったんだ、この部屋で民人くん抱くの。悪いけど、たぶん明日まで止まんない」
ぐちぐちと音を立てながら、互いのさらけ出した高まりを刺激する。
「あっ……あーっ、そこ、……んっ」
「はあ……あ、う、今日は、早い、かも」
湯が循環する水音、遠くで聞こえる人の声、波の音。
個室とはいえ屋外で昼間から乱れあっていることに、少なからず背徳感を覚える。
――しかし、それが僕たちの媚薬にもなる。
どうせ露天風呂なら、浴衣でシたかったな、とか、せっかくとっておきの下着も持ってきたのにな、とか思うところもあるが、そんなことより、今シたかった。
……あと、大助も言ったように、これで終わらないし。
いいところに当たるように腰を上下させると、大助の吐息が荒くなるのを感じた。
「はっ、あ……みんと、くん……そんな、……はあ」
「あっ……んっ、大助の、固くて、きもちい……」
彼の手は相変わらず僕の胸を弄り、すっかり彼の愛撫を覚えてぷっくりと育った先端を刺激する。
「みんとくん、ほんと、エロい」
「はあ、大助には、言われたく、ないかな……」
「いや、ホント……っ、はあ、も、そこ、ヤバ……」
眉をしかめる大助の表情が官能的で、ゾクゾクする。
たまらなくて、彼のバキバキに硬くなったそれに手を添える。
「ほら、大助……一回出して」
「あっ……くそ……止めて……イく……っ」
手で刺激を与えると、程なくして暴発するように果てた。
ドクドクと熱い液があふれる様を見ると、体が疼いて仕方ない。
ああ、早くナカに欲しい。
「民人君……今日は手加減無し……?」
「僕も、余裕あるうちに、ね」
「はは。余裕じゃ負けてるかも。……ここ、寝てると痛いよね。立ってシない?」
「立って……?」
たしかに長椅子はゴツゴツして痛いとは思ってたが。
「海見ながら。そこの柵、掴まって」
せっかく外でするんだから、と言いたげな表情に、若干引く。
「大助、こういうの好きだね……」
そこに乗っかる僕も、なかなかだけれど。
柵に掴まって、尻を突き出す体勢になる。
海辺ではしうゃぐ人はこちらからは見えるけど、そこそこの高層だから、こちらは果たして見えるかどうか。
「あんまり大きい声出すと、バレちゃうかもね」
そう言って、僕を後ろからだきすくめる。
片腕は相変わらず、突き出した僕の胸をいじるが、もう片方の腕が、先程果てそこねた先端を刺激する。
「早く俺の欲しいでしょ、俺の、もっかい勃たせてよ」
「あっ……いってることと、やってること……おかし……」
「気持ち良さそうなところ、見せてよ」
「はあっ……あ、や……きも、ち……」
二本の指で、先端から溢れる液を絡めとり、くるくるとなぞられる。
そのもどかしい刺激に腰が動く。
「民人くんの感じてる顔……俺が感じさせてる顔……見せてると思うと、やばいな……」
早く刺激が欲しくてヒクつく後穴には、昂りを取り戻した大助のそれがピッタリと擦りつけられる。
「や……大助、はやく、ほし……」
はやく絶頂したくて、自分の手で自らを握る。
それに気づいた大助は、僕に触れる手を止めた。
「イきたい……、だいすけぇ……あ、はっ……ん」
そういえば、声は聞かれたことあるけど、大助の前でひとりでするのは初めてかもしれない。
しかもこんな、屋外で。
「……っ、はやく、民人くんと繋がりたい」
再び大助のぬくもりが戻り、絶頂へ導かれる。
「あ……も、……イく……!」
ボタボタと溢れる白濁を搾り取るように、果てたそれを刺激される。
自分で立っていられず、僕の腰を支える大助の腕に身体を委ねた。
「うしろ、いい?」
だらしなく開いた口を、大助の指がかき回す。
「うん……ああっ」
僕は喘ぎながらうなずき、大助を受け入れる。
ずっと欲しがっていたところに、ずぷり、と刺激が与えられる。
昨晩も大助に愛されたそこは、すんなりと彼のごつごつした指を受け入れた。
「はあ、大助え、そこ、……っは、いい」
「民人君がひとりでシてるとこ、一回最初から最後までちゃんと見てみたいな」
「あっ……はあ、そんなの、いやに、きまって……」
「いいじゃん、恥ずかしがらなくてもいいのに」
「お前がいたら、あっ、……欲しくなる、だろ」
指じゃ足りない。
その言葉に、大助の手が止まる。
「……今、ほしい?」
指の代わりに押し付けられたのは、彼の昂り。
いつの間にか取り付けられた薄い被膜をひやりと感じ、ちょっと寂しさを覚えた。
「ナマがいい……」
「だめ、今日は長いよ」
そう言って、張り詰めた彼がめりめりと、僕のナカに侵入する。
「は……はぁ……っ」
皮膜越しに感じるそれが少し新鮮なのは、
体勢が違うからか、この空の下裸体をさらけ出してるせいか。
いずれにせよ、ナマがいいとゴネておきながらも、僕の奥まで突き刺してくるそれに、結局は歓喜するしかできなかった。
「あ、やっ……はあ、きもち、っ……」
「奥、届いてる?」
「うん……もっと、ゴリゴリしてっ……」
ふふ、と耳元で笑う声が聞こえる。
彼が動くたび、普段当たらない場所が刺激される。
「あっ……はぁ、そこ、あ、はっ……」
「素直、いいとこ、みつけた?」
「うんっ、そこ、へんに、なる」
「なんか、いつもより、吸い付いて、くる」
「あつい、外でするの、クセになりそっ……」
思いの外、昼間から屋外でのセックスが愉しくて、いつも以上に興奮している。
ああ、このまま。
「ほんと、民人くん、エッチ好きだね」
脳みそがとろとろになりながら、大助の質量を全身で感じる。
「うん、あ、はあっ……ずっと、シてたい……」
「ふふ。その、つもり、だけど」
大助の手ががっしりと僕の腰を掴む。
そして、僕の奥を何度も、何度も突き上げる。
「はっ、あっ、あっ、あぁっ、あ、あ、っはぁ」
快感に逃げ場のない僕は、柵にしがみつき喘ぐしかできず。
「はあ、みんとくん、声、おおきい。聞こえてるかも。民人くんが、俺で、感じてる声」
「あっ、はあっ、この、へんたい、あっ、や、も……っ」
ゴリゴリと、僕の弱いところに先端をおしつけられる。
ひときわ強く押し付けられたときに、頭の中が真っ白になる。
「はっ……やば、締まった……そろそろ、俺っ……」
「あ、あっ、ぼくも、クるっ……」
大助の動きが緩くなり、皮膜しに大助のそれが脈打つのを感じる。
ゆっくりと引き抜かれたあと、僕の額の汗を拭い、軽く口づけた。
「はあ……もう、服ぐしょぐしょだね」
「時間あるし……ふろ、入る?」

そう言って大助は、隣にあるひのきの浴槽を指差す。
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