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オーブル領
レムの話
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「じゃあ私たちはミモザさんのお手伝いでもしてくるわ」
ミズキは部屋から出て行く。ホムラもその後をついて出ていった。
「話をしたいと言ったのは私ですけど、その、大丈夫ですか?」
レムは静かに座る3人の姿を見て、話す事をためらう。
レムは気持ちが落ち着いた事で気が付いたが、3人は怪我をしていて体調が悪そうだった。
「今更やめるってのか?」
「だって。今は私の話なんかより休んだ方が」
「レム様、私たちは大丈夫ですよ」
ロイが心配しないようにとレムに言う。
「レムが決心したんでしょ?聞かせて」
「分かった。でもその前に私が寝てる間に何があったの?」
レムはみんなの様子が気になって仕方なく何があったのか聞いた。
「ミモザ様の要求が大変だったのよ。この森にいる魔物が思ったより手強くてこんな有り様ね」
「あんなの普段なら余裕だって。最近の疲れが溜まってて苦戦しただけだろ」
レムは、自分のせいで逃亡生活をさせているライズたちに申し訳なさを感じて俯いた。
余計な事を口にするなと、ロイがライズに鋭い視線を向ける。
「とりあえずさ、話をするならさっさと始めようぜ」
シズナとロイからの視線を感じ取ったライズは、話を変えようとレムに言った。
レムが姿勢を正す。
「なんだよ改まって」
「私には、この国を守るための不思議な力があるんだ」
レムは語りかけるように、そして言葉を選びながら話し始めた。
「だけどその力は強くて、まだ幼い私には反動が大きすぎたみたい。足りないエネルギーを補うために私は眠りにつく時間が多かったの」
「それで、私たち国民の前に姿を見せる事がほとんどなかったのね」
「うん。それで眠り姫って呼ばれるようになっちゃったんだよね」
「眠り姫様には、そんな理由があったんだな」
「信じてくれるの?」
自分の話をすんなりと受け入れてくれるみんなにレムは問いかけた。
「レムはそんな嘘なんてつかないでしょ?」
「まあ、それらしいのも見てるしな」
シズナとライズはレムの言う力について話を受け止める。
「お父様やお兄様たちは私の話を信じてくれていなかったのに」
「ひっでえ家族だな」
ライズはそう言いながらロイの顔をチラリと見た。
「何ですかその目は。ユード様は別ですよ。ユード様はむしろレム様の力になろうとしていますから」
「ライズ、王族批判は辞めなさいよ。レムの家族なんだし」
「いまの私は家族でも王族でもないよ。あの日、あのセレモニーの日に眠ってしまった私はお父様にも見放されてしまったから」
シズナたちはレムの誕生日を祝うセレモニーの日を思い出した。
「じゃあその力のせいでレムは王族の立場を追われ、今こんな状況にいるわけか」
「そうなるかな。でもね、私はこの力、シープには感謝しかないの」
「シープ?」
シズナとライズが顔を見合わせるなか、ロイは以前見たレムの姿を思いだした。
「シープって言うのは、私の中に眠ってたこの国の守護獣のこと。シープの力を私は使わせてもらってた」
「レムの中には国の守護獣がいたのかよ。そりゃすげえに決まってるわ」
ライズはレムに対して狡いじゃないかと言った口調で絡む。
「そうなの。私は何もすごくなくて、全部シープのおかげで」
「じゃあさ、その守護獣様の力を借りて反撃に出る相談ってことか?」
ライズがどこか楽しそうな声で言った。
ミズキは部屋から出て行く。ホムラもその後をついて出ていった。
「話をしたいと言ったのは私ですけど、その、大丈夫ですか?」
レムは静かに座る3人の姿を見て、話す事をためらう。
レムは気持ちが落ち着いた事で気が付いたが、3人は怪我をしていて体調が悪そうだった。
「今更やめるってのか?」
「だって。今は私の話なんかより休んだ方が」
「レム様、私たちは大丈夫ですよ」
ロイが心配しないようにとレムに言う。
「レムが決心したんでしょ?聞かせて」
「分かった。でもその前に私が寝てる間に何があったの?」
レムはみんなの様子が気になって仕方なく何があったのか聞いた。
「ミモザ様の要求が大変だったのよ。この森にいる魔物が思ったより手強くてこんな有り様ね」
「あんなの普段なら余裕だって。最近の疲れが溜まってて苦戦しただけだろ」
レムは、自分のせいで逃亡生活をさせているライズたちに申し訳なさを感じて俯いた。
余計な事を口にするなと、ロイがライズに鋭い視線を向ける。
「とりあえずさ、話をするならさっさと始めようぜ」
シズナとロイからの視線を感じ取ったライズは、話を変えようとレムに言った。
レムが姿勢を正す。
「なんだよ改まって」
「私には、この国を守るための不思議な力があるんだ」
レムは語りかけるように、そして言葉を選びながら話し始めた。
「だけどその力は強くて、まだ幼い私には反動が大きすぎたみたい。足りないエネルギーを補うために私は眠りにつく時間が多かったの」
「それで、私たち国民の前に姿を見せる事がほとんどなかったのね」
「うん。それで眠り姫って呼ばれるようになっちゃったんだよね」
「眠り姫様には、そんな理由があったんだな」
「信じてくれるの?」
自分の話をすんなりと受け入れてくれるみんなにレムは問いかけた。
「レムはそんな嘘なんてつかないでしょ?」
「まあ、それらしいのも見てるしな」
シズナとライズはレムの言う力について話を受け止める。
「お父様やお兄様たちは私の話を信じてくれていなかったのに」
「ひっでえ家族だな」
ライズはそう言いながらロイの顔をチラリと見た。
「何ですかその目は。ユード様は別ですよ。ユード様はむしろレム様の力になろうとしていますから」
「ライズ、王族批判は辞めなさいよ。レムの家族なんだし」
「いまの私は家族でも王族でもないよ。あの日、あのセレモニーの日に眠ってしまった私はお父様にも見放されてしまったから」
シズナたちはレムの誕生日を祝うセレモニーの日を思い出した。
「じゃあその力のせいでレムは王族の立場を追われ、今こんな状況にいるわけか」
「そうなるかな。でもね、私はこの力、シープには感謝しかないの」
「シープ?」
シズナとライズが顔を見合わせるなか、ロイは以前見たレムの姿を思いだした。
「シープって言うのは、私の中に眠ってたこの国の守護獣のこと。シープの力を私は使わせてもらってた」
「レムの中には国の守護獣がいたのかよ。そりゃすげえに決まってるわ」
ライズはレムに対して狡いじゃないかと言った口調で絡む。
「そうなの。私は何もすごくなくて、全部シープのおかげで」
「じゃあさ、その守護獣様の力を借りて反撃に出る相談ってことか?」
ライズがどこか楽しそうな声で言った。
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