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オーブル領
儀式
しおりを挟む「目が覚めたようね」
どれくらいの時間が経ったのだろうか、自分の意思に反して眠りについていたことに、眠り姫であった日々をレムは思い出す。
「どうしましたか?」
ミモザの表情が曇っている気がしたレムが尋ねる。
「王女様は民の変化によく気がつくのね。簡単に言うと最悪なケースの1つだったわ」
魔女はグツグツト煮た鍋に入れていたロープをとりだす
「それは?」
「あなた達の繋がりを断ち切るのよ」
「シープのことですか?」
「ああ、そんな名前だったっけ」
ミモザは思い出すように視線を上に向けながら言う。
「それにどういうことですか。私とシープのリンクをきるっていうのは」
「力の一部がこの国に縛られているのよ。ふつうはそんなことないんだけど。あなたはまだ器として未熟だった上に、幼少期から力を使いすぎてる。
幼いあんたの力だけで、あんな力使い続けれるわけないでしょ。常に眠りについていたとはいえ、足りない分をこの国の、そうね、生命力みたいなモノを利用していたのよ。
その結果、あなたの中の力がこの地に根付いてるみたいな状態になってるの」
ミモザのいうことが本当なのだろうとレムは思った。何年も魔物を抑えていたけれど、私にはあんなことができるだけの魔力もない。
力の影響で、眠り続けていたとはいえ、それだけのことであんな力を賄えているわけないのも理解できた。
「あの、シープとのリンクを切ったらどうなるのですか」
レムは想定した最悪な答えが来ないように願いながら、声を振り絞った。
「想像どうりよ。あんたの中からそれが消えるわ」
「そんなの嫌!」
レムは王女というにはふさわしくないほど取り乱して言う。
「こんなのが王女様とはね。あんたのためにどれだけ犠牲があったと思うの。さっきの、覚悟を決めた顔は何だったのさ」
魔女はレムの服をつかみ、そのまま壁に追い詰め強い口調で言う。
レムは軽い気持ちでシープの力を解除したこと。その結果、魔物によって崩壊された城下、逃げ惑う人。大切な人が死に悲しみにくれる人々。
私のことを受け入れてくれたセバス。力を貸してくれているシズナにライズ。
私を助けにきてくれたロイ。
わずかな間に起きた出来事が走馬灯のように頭に流れてきた。
「そうは言っても、私はこの国がどうなろうと知ったこっちゃないのよ。
ここまでしてあげただけで、あいつとの約束も守ったと言えるし。私の立場としては、別に強制はしないわよ」
ミモザはつかんだ胸倉から手を離すと、準備していいたまがまがしい品々を片付け始める。
「シープが消えてなくなるわけじゃないですよね」
レムの言葉にミモザが手を止めて答える。
「そうね」
「シープはどうなるのですか?」
「これは希望的な話よ」
ミモザがグラスと綿を手に取り説明を始めた。
「本来は先代の器が消えた時に次の器を求めてそこに宿るモノなのよ。あなたと母親のようにね。
でも今回は最適な器に宿ることを拒否してる状況なわけ。あなた以上の器が生まれれば、そこに宿るけれどそれまでは何も起きないはず」
「じゃあ、また私の中に戻ってくる可能性もあるってことですか?」
「強制的にリンクを切るわけだから、可能性としては低いわよ。ただ、0とは言わないでおいてあげる」
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