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処刑執行

処刑当日⑩

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「何も見えねえじゃねえか!あのクソ死刑囚の2人はどこにいった!逃すんじゃねえぞ!」

高みの見物を決め込み、2人の処刑を酒のつまみに上機嫌になっていたドンベルだったが、後少しのところで逃げ出した2人への怒りが込み上げていた。

「きゃあ」

酒を注いでいた女を払い除けると、周りを囲んでいた護衛の部下たちに怒鳴り散らす。

「お前ら、このまま逃しましたで済むとおもうなよ!」

ドンベルの怒号に部下たちは青ざめた表情を見せると、すぐさま煙の中へと駆けて行った。

「騎士団のエリートも案外使えないようですね」

「バカを言うな。精鋭どもをこんな茶番、あいつらの処刑のために連れ回すほどバカじゃねえよ。そもそもお前の責任じゃねえのか」

ドンベルの八つ当たりに対して、レグロスは不服そうであったが、今はこの場を沈めるのが先決だと相手にすることをやめた。

「ドンベル殿と違い能無しな私は、精鋭と共に取り掛からせてもらいます」

レグロスの指示にどこに潜んでいたのか突如として複数の黒服が現れた。

あれが噂のレグロスの剣となっている部隊なのだろうと周りの団員たちが眺めている。

「おい!今すぐ精鋭部隊を呼べ!レグロスのやつ、全ての責任を俺になすりつけるに違いねえ!」

「ドンベル団長それは無理です」

「団長である俺の指示が聞けねえってのか!」

「ドンベル団長の指示で、ガドリ隊長が精鋭部隊を連れて任務にあたっております」

部下の男はドンベルの顔色を伺いながら恐る恐る告げた。

「くそ、ガドリのやつめつかえぬな。ならばオレ直々にが忌々しいジジイ達の息の根を止めてくれるわ」

ドンベルは重い腰をあげ武器を手に取るが、上機嫌で飲んでいた酒に当てられ、足取りがおぼつかなかった。

「これでは何も見えぬわ!お前らなんとかしろ」

ドンベルは、数歩進んだところであまりの視界の悪さに、尻餅をつくと部下達に言った。



「シズナ無事か」

「ライズよかった」

シズナとライズは霧に乗じて騎士団達を撒くことに成功し合流した。

「この霧ってレムだよな」

「おそらくそうね」

「あいつ来ちまったのか。王女様なんだから、俺たちみたいなのに関わらなければいいのによ」

ライズは口ではそういいつつ、嬉しそうな表情が隠せていない。

「レム、こんなところで眠ってて大丈夫かしら。ロイがついてるとは思うけど」

「仕方ねえな。俺はレム達のこと探してくる。安全そうならそのまま置いて来るからな。わざわざ巻き込む必要ないだろ」

「そうね。私はおじいさまと合流するわ」

「じゃあ、後でな!死ぬなよ」

2人は霧の中へ別々の方向に走り出した。
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