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処刑執行
処刑当日⑧
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「こんなこと、もうやめてください!」
騎士団の中には知る顔もいるし、彼らは国のために力を奮っている。
シズナ達は罠に嵌められた大切な人を救い出したいだけなのに、国に仇をなす犯罪者として見られている。
レムは眼前で繰り広げられる争いで、傷つけいていく者たちを見ていることに耐えられなくなっていた。
「やめるもなにも、処刑の邪魔をしているのはそっちじゃないか。俺の予定とは違うが、これはこれで余興としては申し分ないか。」
マルクスは、処刑場で繰り広げられている騒乱を、優雅にワインを片手に楽しそうに眺めている。
「おお、磔にされている2人まで脱出したぞ。このままでは処刑すら出来ないではないか」
広場から目を背けていたレムだったが、マルクスの言葉に広場に目を向けた。
レムの視界には、崩れ落ちる磔から逃げ出す2つの人影が映る。
「みんな、このまま逃げて!」
「いや、それは面白くないからダメだ」
マルクスは、ワインの瓶を手に取るとそのまま床に垂れ流し始めた。
そして、こぼれ落ちていく液体に手をかざすと、液体が凝固し先端の尖ったつららのように変化していく。
更にそれが複数に分裂し、何本もの鋭く尖った物質へと形を変えた。
「何をするつもりですか!」
「困っている部下を少し助けてやるだけだよ。これで反逆者達の四肢を貫いて、動きを止めてやるだけ。だって、この俺が手を下すほどでもないからね」
マルクスは、高らかに笑うと作り出したものを広場に向けて放とうとする。
「待ってください!マルクス兄様の言うことなんでも聞きますから!兄様の目的は私なんでしょ!」
「自惚れるなよ。俺の目的はお前の中に眠る力だけだ。俺と交渉できるとするなら、お前の中に眠る女神、シープだけだ」
「だったら、」
レムは、シープに力を借りようと眠りの世界に入ろうと試みる。しかし、マルクスの魔法により強制的に意識を起こさせられるためシープと繋がることができない。
「無理だよ。シープには会いたいけど、何されるか分かったものじゃないからね。宿主をお前から移した後に、彼女と会わせてもらうさ」
マルクスは溢れる笑みが抑えきれなくなるくらい心の底から目の前の光景を楽しんでいる。
「まずは、絶望から与えてることにしよう。ほら、今から死んでゆく仲間たちの姿をしっかりと目に焼き付けておけよ」
「シープ助けて!」
『レム・・・。信じられる?』
レムは、自分の言葉にシープの反応を僅かながら、感じ取れたような気がした。
「私はシープのこと信じるよ」
そして、全ての意識を感じとったシープの力に集中させた。
【ピカッ】
青白い光が辺り一面を一瞬包み込む。
「レム。おまえ、何をした!なんだその姿は!」
視界が戻ったマルクスの前には、自由を封じられているはずのレムが、椅子から立ち上がっていた。
騎士団の中には知る顔もいるし、彼らは国のために力を奮っている。
シズナ達は罠に嵌められた大切な人を救い出したいだけなのに、国に仇をなす犯罪者として見られている。
レムは眼前で繰り広げられる争いで、傷つけいていく者たちを見ていることに耐えられなくなっていた。
「やめるもなにも、処刑の邪魔をしているのはそっちじゃないか。俺の予定とは違うが、これはこれで余興としては申し分ないか。」
マルクスは、処刑場で繰り広げられている騒乱を、優雅にワインを片手に楽しそうに眺めている。
「おお、磔にされている2人まで脱出したぞ。このままでは処刑すら出来ないではないか」
広場から目を背けていたレムだったが、マルクスの言葉に広場に目を向けた。
レムの視界には、崩れ落ちる磔から逃げ出す2つの人影が映る。
「みんな、このまま逃げて!」
「いや、それは面白くないからダメだ」
マルクスは、ワインの瓶を手に取るとそのまま床に垂れ流し始めた。
そして、こぼれ落ちていく液体に手をかざすと、液体が凝固し先端の尖ったつららのように変化していく。
更にそれが複数に分裂し、何本もの鋭く尖った物質へと形を変えた。
「何をするつもりですか!」
「困っている部下を少し助けてやるだけだよ。これで反逆者達の四肢を貫いて、動きを止めてやるだけ。だって、この俺が手を下すほどでもないからね」
マルクスは、高らかに笑うと作り出したものを広場に向けて放とうとする。
「待ってください!マルクス兄様の言うことなんでも聞きますから!兄様の目的は私なんでしょ!」
「自惚れるなよ。俺の目的はお前の中に眠る力だけだ。俺と交渉できるとするなら、お前の中に眠る女神、シープだけだ」
「だったら、」
レムは、シープに力を借りようと眠りの世界に入ろうと試みる。しかし、マルクスの魔法により強制的に意識を起こさせられるためシープと繋がることができない。
「無理だよ。シープには会いたいけど、何されるか分かったものじゃないからね。宿主をお前から移した後に、彼女と会わせてもらうさ」
マルクスは溢れる笑みが抑えきれなくなるくらい心の底から目の前の光景を楽しんでいる。
「まずは、絶望から与えてることにしよう。ほら、今から死んでゆく仲間たちの姿をしっかりと目に焼き付けておけよ」
「シープ助けて!」
『レム・・・。信じられる?』
レムは、自分の言葉にシープの反応を僅かながら、感じ取れたような気がした。
「私はシープのこと信じるよ」
そして、全ての意識を感じとったシープの力に集中させた。
【ピカッ】
青白い光が辺り一面を一瞬包み込む。
「レム。おまえ、何をした!なんだその姿は!」
視界が戻ったマルクスの前には、自由を封じられているはずのレムが、椅子から立ち上がっていた。
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