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処刑執行
待ち伏せ②
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「お兄様、この先へ行かせてください」
「この先へ通したとして、何をするつもりなんだ?」
「明日の処刑を止めるようお願いします」
「彼の処刑は公正な審議によって決められたんだ。いまさら覆すことなんて不可能だ」
「でも!セバスは無実なんです!」
レムは暗闇の先にいるであろうマルクスに向かって訴えかける。
「そうだろうね。だって全ては俺の計画だから」
レムは思いもよらないマルクスの言葉に言葉を失った。
マルクスが暗闇の中から2人の前に現れる。
「な、何故そのようなことをされたのですか!」
マルクスの姿を見たレムは、考えがまとまらないままでマルクスに問いかけた。
「全ては俺の欲しいモノを手に入れるためだよ」
マルクスはゆっくりと2人に近づきながら答える。
「この国の民や、国を守る騎士を見に覚えのない罪で裁いてまで何が欲しいのですか」
マルクスは感情を昂らせて声を上げるレムの目の前に立つと、手を伸ばした。
「全てはお前を手に入れるためだよ。正確にはお前の中の」
「レム様から離れろ!」
レムのアゴに手を当て品定めをするようにレムを眺めるマルクスに向かって言う。
「誰に剣を振りかざしたのか分かっているのかい?」
自らに向けられた切っ先を掴みながら言う。切っ先を自分に向けられるのを変えようとしたが、ロイの剣はびくともせずにマルクスに向かっている。
「私はレム様を守る剣だ。相手が誰だろうと関係ない」
「礼儀のなってない奴だな」
ロイとマルクスはずっと視線を合わせお互いに譲らない。
「ロイやめて。お兄様もやめてください」
一束触発の雰囲気に、レムがロイを抑えようと腕を捕まえながら言う。
「明日の処刑をやめると約束をし、王に進言すると言うなら見逃してもいいぞ」
「黙れ愚民が」
マルクスは王族である自分に対して、上からの物言いが頭にきた様子だ。
そして剣を掴んでいた手を離すと剣に対してデコピンをかました。
マルクスは素手でロイの剣を振り払った。あまりの勢いにロイは手から剣を離しそうになる。
「なんだこの力」
マルクス王子のどこにそんな力があるのか、ロイは今起きたことが信じられないと言う表情をしていた。
「この俺が何もなく1人でこんな場所にいるとでも?」
ロイは目の前にいるはずのマルクスが暗く深い闇に消え去っているかのように感じ、そして目の前にいたはずのマルクスが消えていくような感覚を感じた。
「おまえは誰だ」
ロイは自分の背後にレムを誘導して守りながら、ロイに向かって自然と言葉にしていた。
「へえ、この力に気づくなんてなかなかやるみたいだね。ご褒美にいいモノを見せてあげるよ」
マルクスは左手を上にして自分の前で広げた。すると、手のひらに黒い渦が発生した。
マルクスはその渦の中から黒い細剣を取り出した。
レムは目の前で起きた光景が信じられず言葉が出ない。
「一国の王子が魔物の力に屈したのか」
「みくびらないでくれ。この俺が魔物なんかに屈するなどあり得ないだろ」
禍々しい雰囲気を醸し出す剣を、自分の手のひらから抜き出すとロイに向かって振り下ろす。
「くっ」
ロイは咄嗟にマルクスの攻撃を止めた。
止めはしたが勢いを殺しきれず通路の壁に思い切り打ち付けられる。手に握る剣もヒビが入ってしまっていた。
「兄様、待ってください!わたしは言う通りにしますから!」
「レム様・・・」
ロイは薄れゆく意識の中で、マルクスに連れて行かれるレムの姿に手を伸ばした。
「この先へ通したとして、何をするつもりなんだ?」
「明日の処刑を止めるようお願いします」
「彼の処刑は公正な審議によって決められたんだ。いまさら覆すことなんて不可能だ」
「でも!セバスは無実なんです!」
レムは暗闇の先にいるであろうマルクスに向かって訴えかける。
「そうだろうね。だって全ては俺の計画だから」
レムは思いもよらないマルクスの言葉に言葉を失った。
マルクスが暗闇の中から2人の前に現れる。
「な、何故そのようなことをされたのですか!」
マルクスの姿を見たレムは、考えがまとまらないままでマルクスに問いかけた。
「全ては俺の欲しいモノを手に入れるためだよ」
マルクスはゆっくりと2人に近づきながら答える。
「この国の民や、国を守る騎士を見に覚えのない罪で裁いてまで何が欲しいのですか」
マルクスは感情を昂らせて声を上げるレムの目の前に立つと、手を伸ばした。
「全てはお前を手に入れるためだよ。正確にはお前の中の」
「レム様から離れろ!」
レムのアゴに手を当て品定めをするようにレムを眺めるマルクスに向かって言う。
「誰に剣を振りかざしたのか分かっているのかい?」
自らに向けられた切っ先を掴みながら言う。切っ先を自分に向けられるのを変えようとしたが、ロイの剣はびくともせずにマルクスに向かっている。
「私はレム様を守る剣だ。相手が誰だろうと関係ない」
「礼儀のなってない奴だな」
ロイとマルクスはずっと視線を合わせお互いに譲らない。
「ロイやめて。お兄様もやめてください」
一束触発の雰囲気に、レムがロイを抑えようと腕を捕まえながら言う。
「明日の処刑をやめると約束をし、王に進言すると言うなら見逃してもいいぞ」
「黙れ愚民が」
マルクスは王族である自分に対して、上からの物言いが頭にきた様子だ。
そして剣を掴んでいた手を離すと剣に対してデコピンをかました。
マルクスは素手でロイの剣を振り払った。あまりの勢いにロイは手から剣を離しそうになる。
「なんだこの力」
マルクス王子のどこにそんな力があるのか、ロイは今起きたことが信じられないと言う表情をしていた。
「この俺が何もなく1人でこんな場所にいるとでも?」
ロイは目の前にいるはずのマルクスが暗く深い闇に消え去っているかのように感じ、そして目の前にいたはずのマルクスが消えていくような感覚を感じた。
「おまえは誰だ」
ロイは自分の背後にレムを誘導して守りながら、ロイに向かって自然と言葉にしていた。
「へえ、この力に気づくなんてなかなかやるみたいだね。ご褒美にいいモノを見せてあげるよ」
マルクスは左手を上にして自分の前で広げた。すると、手のひらに黒い渦が発生した。
マルクスはその渦の中から黒い細剣を取り出した。
レムは目の前で起きた光景が信じられず言葉が出ない。
「一国の王子が魔物の力に屈したのか」
「みくびらないでくれ。この俺が魔物なんかに屈するなどあり得ないだろ」
禍々しい雰囲気を醸し出す剣を、自分の手のひらから抜き出すとロイに向かって振り下ろす。
「くっ」
ロイは咄嗟にマルクスの攻撃を止めた。
止めはしたが勢いを殺しきれず通路の壁に思い切り打ち付けられる。手に握る剣もヒビが入ってしまっていた。
「兄様、待ってください!わたしは言う通りにしますから!」
「レム様・・・」
ロイは薄れゆく意識の中で、マルクスに連れて行かれるレムの姿に手を伸ばした。
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