眠り姫な私は王女の地位を剥奪されました。実は眠りながらこの国を護っていたのですけれどね

たつき

文字の大きさ
上 下
58 / 89
処刑執行

待ち伏せ②

しおりを挟む
「お兄様、この先へ行かせてください」

「この先へ通したとして、何をするつもりなんだ?」

「明日の処刑を止めるようお願いします」

「彼の処刑は公正な審議によって決められたんだ。いまさら覆すことなんて不可能だ」

「でも!セバスは無実なんです!」

レムは暗闇の先にいるであろうマルクスに向かって訴えかける。

「そうだろうね。だって全ては俺の計画だから」

レムは思いもよらないマルクスの言葉に言葉を失った。

マルクスが暗闇の中から2人の前に現れる。

「な、何故そのようなことをされたのですか!」

マルクスの姿を見たレムは、考えがまとまらないままでマルクスに問いかけた。

「全ては俺の欲しいモノを手に入れるためだよ」

マルクスはゆっくりと2人に近づきながら答える。

「この国の民や、国を守る騎士を見に覚えのない罪で裁いてまで何が欲しいのですか」

マルクスは感情を昂らせて声を上げるレムの目の前に立つと、手を伸ばした。

「全てはお前を手に入れるためだよ。正確にはお前の中の」

「レム様から離れろ!」

レムのアゴに手を当て品定めをするようにレムを眺めるマルクスに向かって言う。

「誰に剣を振りかざしたのか分かっているのかい?」

自らに向けられた切っ先を掴みながら言う。切っ先を自分に向けられるのを変えようとしたが、ロイの剣はびくともせずにマルクスに向かっている。

「私はレム様を守る剣だ。相手が誰だろうと関係ない」

「礼儀のなってない奴だな」

ロイとマルクスはずっと視線を合わせお互いに譲らない。

「ロイやめて。お兄様もやめてください」

一束触発の雰囲気に、レムがロイを抑えようと腕を捕まえながら言う。

「明日の処刑をやめると約束をし、王に進言すると言うなら見逃してもいいぞ」

「黙れ愚民が」

マルクスは王族である自分に対して、上からの物言いが頭にきた様子だ。

そして剣を掴んでいた手を離すと剣に対してデコピンをかました。

マルクスは素手でロイの剣を振り払った。あまりの勢いにロイは手から剣を離しそうになる。

「なんだこの力」

マルクス王子のどこにそんな力があるのか、ロイは今起きたことが信じられないと言う表情をしていた。

「この俺が何もなく1人でこんな場所にいるとでも?」

ロイは目の前にいるはずのマルクスが暗く深い闇に消え去っているかのように感じ、そして目の前にいたはずのマルクスが消えていくような感覚を感じた。

「おまえは誰だ」

ロイは自分の背後にレムを誘導して守りながら、ロイに向かって自然と言葉にしていた。

「へえ、この力に気づくなんてなかなかやるみたいだね。ご褒美にいいモノを見せてあげるよ」

マルクスは左手を上にして自分の前で広げた。すると、手のひらに黒い渦が発生した。

マルクスはその渦の中から黒い細剣を取り出した。

レムは目の前で起きた光景が信じられず言葉が出ない。

「一国の王子が魔物の力に屈したのか」

「みくびらないでくれ。この俺が魔物なんかに屈するなどあり得ないだろ」

禍々しい雰囲気を醸し出す剣を、自分の手のひらから抜き出すとロイに向かって振り下ろす。

「くっ」

ロイは咄嗟にマルクスの攻撃を止めた。
止めはしたが勢いを殺しきれず通路の壁に思い切り打ち付けられる。手に握る剣もヒビが入ってしまっていた。

「兄様、待ってください!わたしは言う通りにしますから!」

「レム様・・・」

ロイは薄れゆく意識の中で、マルクスに連れて行かれるレムの姿に手を伸ばした。

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

聖女は2人もいらない!と聖女の地位を剥奪されました。それならば、好きにさせてもらいます。

たつき
恋愛
世界でも有数の国家【アルカディア王国】 戦の女神を宿すブレイズ家 守護の女神を宿すエターニア家 そして、この国の始祖であるアルカディア王家 この三軸がこの国を支え強大な国へと発展させてきた。 アルカディア王国は国の始まり以降、魔物による甚大な被害は起きておらず、もっとも安全な国と言われている。 しかし、長い年月は三家のバランスを少しずつ狂わせる。 そしてとうとう崩壊を迎えた。 「テレサ。ブレイズ家はもう聖女として認めない。ルーカス・アルカディアの名の下に聖女としての権利を剥奪する」 テレサはルーカス皇太子によって聖女としての立場を剥奪されてしまった。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います

菜花
ファンタジー
 ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】

小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。 しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。 そして、リーリエルは戻って来た。 政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

聖女として豊穣スキルが備わっていたけど、伯爵に婚約破棄をされました~公爵様に救済され農地開拓を致します~

安奈
ファンタジー
「豊穣スキル」で農地を豊かにし、新鮮な農作物の収穫を可能にしていたニーア。 彼女は結婚前に、肉体関係を求められた婚約者である伯爵を拒否したという理由で婚約破棄をされてしまう。 豊穣の聖女と呼ばれていた彼女は、平民の出ではあったが領主である伯爵との婚約を誇りに思っていただけに非常に悲しんだ。 だがニーアは、幼馴染であり現在では公爵にまで上り詰めたラインハルトに求婚され、彼と共に広大な農地開拓に勤しむのだった。 婚約破棄をし、自らの領地から事実上の追放をした伯爵は彼女のスキルの恩恵が、今までどれだけの効力を得ていたのか痛感することになるが、全ては後の祭りで……。

戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜

黄舞
ファンタジー
 侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。  一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。  配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。  一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。

影の聖女として頑張って来たけど、用済みとして追放された~真なる聖女が誕生したのであれば、もう大丈夫ですよね?~

まいめろ
ファンタジー
孤児だったエステルは、本来の聖女の代わりとして守護方陣を張り、王国の守りを担っていた。 本来の聖女である公爵令嬢メシアは、17歳の誕生日を迎えても能力が開花しなかった為、急遽、聖女の能力を行使できるエステルが呼ばれたのだ。 それから2年……王政を維持する為に表向きはメシアが守護方陣を展開していると発表され続け、エステルは誰にも知られない影の聖女として労働させられていた。 「メシアが能力開花をした。影でしかないお前はもう、用済みだ」 突然の解雇通知……エステルは反論を許されず、ろくな報酬を与えられず、宮殿から追い出されてしまった。 そんな時、知り合いになっていた隣国の王子が現れ、魔導国家へと招待することになる。エステルの能力は、魔法が盛んな隣国に於いても並ぶ者が居らず、彼女は英雄的な待遇を受けるのであった。

処理中です...