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魔物の襲来
容疑者達②
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【コツ、コツ】
地下牢に乾いた音が響く
ドンベルが地下牢に部下を連れてやってきた。
「あのベンダーがこうも無様な姿になるとはな。旧友として悲しくなるよ」
ドンベルは手錠に足枷をはめられたベンダーの姿を見て言う。
その表情は悲しいといったものではなく、うすら笑みを浮かべていた。
「なあ、白状する気になったか?」
「私は何も知らん」
ベンダーは弱っていることを見せまいと、自分を見下すドンベルを睨みつけ言葉に強さがこもっている。
「そうでないと面白くない。まだ尋問も1日しかしてないからな!」
ドンベルはもはや楽しんでいることを隠そうともせずに、部下達と笑い合いながらベンダーに言う。
「騎士団の団長がこんなに下衆とわな」
誰もいないと思っていたドンベルは後ろの牢から聞こえた声に驚いたようだ。
「罪人が俺様にそんな口聞いていいと思っているのか!」
しかし、すぐに落ち着くと罪人が牢にいるような奴に舐めた口を聞かせまいと、威圧的に言葉を発する。
「ほー、偉くなったもんだの」
セバスはドンベルに全く臆することなく、むしろ上からモノを言うように言う。
「な!なぜ貴様がいるのだ」
ドンベルは目の前にいる最も苦手な男の姿にうろたえた。
ドンベルは新人の頃、セバスの部隊でこれでもかとしごかれた過去がフラッシュバックした。
「剣の腕は鍛えたが、性根も叩き直しておかねばならんかったかの」
ドンベルは人生における天敵にたじろいでいる。
しかし、今の現状を冷静に踏まえた結果、ドンベルはニヤリと悪い顔をした。
「今の私は、騎士団の団長ですよ。それに反して貴様は牢に繋がれている罪人だろ。何の罪かは知らないが尋問してやるよ」
そう言うとドンベルは部下にセバスの牢を開けさせようとする。
「ドンベル!隊長に何する気だ」
「ちょっと話を聞くだけだよ。お前のように強情だと嬉しいけどな」
ベンダーは何もできない自分が不甲斐なく、ドンベルに叫ぶことしかできなかった。
「ドンベルよ、そんな事して良いのか?」
とうのセバスは落ち着いた様子でドンベルに言う。
「俺は騎士団の団長だぞ」
ドンベルは何をしても問題ないとそう言った。
「わしは執務隊に捕まっておるんじゃよ」
セバスの言葉にドンベルの部下の手が止まり、ドンベルの方を見た。
執務隊の案件には下手に手が出せないとドンベルも分かっている様子だ。
「ひとつ教えてやるとするなら、わしの捕まった理由は此度の騒動の犯人としてだぞ」
ドンベルはセバスの言葉に更に驚いた様子になる。
(執務隊が出てくるということは、セバスの犯行を裏付ける理由があるはずだ。それではベンダーに罪を被せることができないではないか。それに、無実の隊長格にこんな事をしたのが国民達にも知れてしまえば俺の地位が危なくなる)
ドンベルは今の現状を飲み込み、まずいなといった表情を浮かべた。
「いくぞ」
ドンベルは部下に言うと足早に地下牢から出ていった。
「これでお主へのひどい尋問はなくなるかもしれんな」
地下牢に乾いた音が響く
ドンベルが地下牢に部下を連れてやってきた。
「あのベンダーがこうも無様な姿になるとはな。旧友として悲しくなるよ」
ドンベルは手錠に足枷をはめられたベンダーの姿を見て言う。
その表情は悲しいといったものではなく、うすら笑みを浮かべていた。
「なあ、白状する気になったか?」
「私は何も知らん」
ベンダーは弱っていることを見せまいと、自分を見下すドンベルを睨みつけ言葉に強さがこもっている。
「そうでないと面白くない。まだ尋問も1日しかしてないからな!」
ドンベルはもはや楽しんでいることを隠そうともせずに、部下達と笑い合いながらベンダーに言う。
「騎士団の団長がこんなに下衆とわな」
誰もいないと思っていたドンベルは後ろの牢から聞こえた声に驚いたようだ。
「罪人が俺様にそんな口聞いていいと思っているのか!」
しかし、すぐに落ち着くと罪人が牢にいるような奴に舐めた口を聞かせまいと、威圧的に言葉を発する。
「ほー、偉くなったもんだの」
セバスはドンベルに全く臆することなく、むしろ上からモノを言うように言う。
「な!なぜ貴様がいるのだ」
ドンベルは目の前にいる最も苦手な男の姿にうろたえた。
ドンベルは新人の頃、セバスの部隊でこれでもかとしごかれた過去がフラッシュバックした。
「剣の腕は鍛えたが、性根も叩き直しておかねばならんかったかの」
ドンベルは人生における天敵にたじろいでいる。
しかし、今の現状を冷静に踏まえた結果、ドンベルはニヤリと悪い顔をした。
「今の私は、騎士団の団長ですよ。それに反して貴様は牢に繋がれている罪人だろ。何の罪かは知らないが尋問してやるよ」
そう言うとドンベルは部下にセバスの牢を開けさせようとする。
「ドンベル!隊長に何する気だ」
「ちょっと話を聞くだけだよ。お前のように強情だと嬉しいけどな」
ベンダーは何もできない自分が不甲斐なく、ドンベルに叫ぶことしかできなかった。
「ドンベルよ、そんな事して良いのか?」
とうのセバスは落ち着いた様子でドンベルに言う。
「俺は騎士団の団長だぞ」
ドンベルは何をしても問題ないとそう言った。
「わしは執務隊に捕まっておるんじゃよ」
セバスの言葉にドンベルの部下の手が止まり、ドンベルの方を見た。
執務隊の案件には下手に手が出せないとドンベルも分かっている様子だ。
「ひとつ教えてやるとするなら、わしの捕まった理由は此度の騒動の犯人としてだぞ」
ドンベルはセバスの言葉に更に驚いた様子になる。
(執務隊が出てくるということは、セバスの犯行を裏付ける理由があるはずだ。それではベンダーに罪を被せることができないではないか。それに、無実の隊長格にこんな事をしたのが国民達にも知れてしまえば俺の地位が危なくなる)
ドンベルは今の現状を飲み込み、まずいなといった表情を浮かべた。
「いくぞ」
ドンベルは部下に言うと足早に地下牢から出ていった。
「これでお主へのひどい尋問はなくなるかもしれんな」
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