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魔物の襲来

戦いの後②

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「あれは、魔物たちを追い払った翌日でした」

辺りから敵の気配が無くなったのを確認し、ロイがレムの眠っていた間に起きた事を話しはじめた。

ーーーーーーーー
「レムのやつ全く起きる気配ねえな。生きてんのかよ」

ライズがベッドに横たわるレムを眺めながら言う。

「貴様滅多な事を口に出すなよ」

その発言にレムのことを見守っていたロイがライズを睨みつける。

「こら!こんな場所で何してるのよ」

シズナはレムが寝込んでいる場所で殺気を醸し出す2人を見つけると言う。

1人だけ頭をこつかれたライズは不満そうな顔をしていた。

「それにしてもよく眠ってるわね」

「この姿をみるとレムが眠り姫なんだって信じるしかないよな」

「ねえ、その辺の話を詳しく聞きたいのだけれど。教えてもらえるわよね?」

シズナはロイに向かって言う。

ロイは話してもいいものなのか躊躇ったが、2人のことを信頼していたレムの様子を思い出したことと、主であるユードと知り合いであったセバスの孫ということもあり打ち明けることにした。

「俺が知っている事でよければ」

ロイは2人にレムが王たちから追放され、王女ではなくなったこと。
この眠りは特別な力を使ったことによる代償だと説明した。

「眠りすぎてたから見捨てられたのかよ。なんで誰もレムのことを信じなかったんだ」

ライズは話もしっかり聞かずに、簡単に自分の身内を捨てる事に憤りを感じた。

「でも、あなたは信じているのね」

シズナはロイに言う。

「俺はユード様の話を信じているだけだ」

ロイは少し冷たい口調で言う。

「てめぇ」

レムの力を利用するだけしてその言い草に頭に来たようだ。

「やめときなさい」

「なんで止めるんだよ。あんなやつここから追い出してやる」

「ろくに食事もせず、ずっとそばで見守ってるのよ。彼らの関係なんて私たちには分からないけど、素直になれない理由があるんじゃないかしら」

ライズは心配そうにレムを見つめるロイの姿に振り上げようとした拳を解いた。

「さて、話も終わりましたし、出ていってくれますか。あなたは衛生上よくない。レム様も起きるに起きられないでしょう」

ロイはライズに向かって不潔だからとっとと出ていけと忠告する。

ライズは再び拳に力を込め振りかざそうとした。

「・・・!」

3人は何かを感じ取ったのか一瞬動きが止まる。

「結構いるな」

明らかにこちらへ敵意を向ける集団が向かっているようだ。

魔物は追い払ったことから、人間の集団だと思われる。

【ガチャ】

セバスが扉を開け顔を覗かせた。

「分かってますわ」

「お前はここに居ろよ。本来ここにはいない奴なんだから、絶対に出てくるなよ

どんな理由で向かってきているのか不明だが、レムとロイのことは隠す事にした。

「しかし」

レムの力を使ったことが原因ではないかと、ロイは自分が出ていくべきだと思っているようだ。

「きっと騎士団の奴らが、この区域を護った俺らに会いに来たんだろ。全て俺の手柄にして高待遇で入隊するんだから出てくるなよ」

ライズは頭をかきながらロイにそう言うと扉を閉めて出ていった。

感謝を述べに来たのなら、殺気混じりの敵意を向けた者が集団で気配を消そうとしながら来るわけがない事など、この場にいる誰もが理解していた。
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