上 下
45 / 89
魔物の襲来

シープの力③

しおりを挟む
「みんな気合いをみせろよ!」

ダイランが前線を張る部下達を鼓舞する。

ベンダーがいなくなったことで少しずつ魔物の侵攻が食い止められなくなっていた。

『ゴオオオ』

ダイラン達を襲う魔物に対して火の弾が炸裂した。

「大丈夫?」

「ノエルここまで出てきたのか」

「違うわよ。あなた達がここまで押されて来てるのよ」

ダイラン達はいつの間にか後方部隊のいる地点の近くまで押し込まれていたようだ。

「ここまで追い込まれたのはいつ以来だ」

いつも強気なダイランが珍しく弱音を吐いた。

「外に出ている部下達が戻るまでの辛抱よ。あなたがそんなだと士気にかかわるのよ」

ノエルはダイランの背中を叩く。

目の前は倒しても次々と湧いてくる魔物の群れ。
ノエルも表情にはだしていないが、いつまで凌ぎ切れるか不安を抱いていた。

「ノエル!」

前線を張る部隊を超え、目の前に3体のゴブリンが現れた。

「うそ、この魔物の群れにステルスの魔法を使えるのがいるの?」

魔物の群れに注意をとられていたことと、魔法による気配察知などしていなかったため姿を消して潜り込んできたゴブリンに気がつくのが遅れた。

「きゃあ」

不意を突かれ魔法の発動が間に合わないノエルにゴブリン達が短刀を振りかざす。

「ぐふっ」

ノエルとゴブリンのあいだにダイランが身体を入れ短刀を受け止めた。

ダイランの殺気に一瞬ゴブリンが怯んだが、さらに数体ゴブリンが現れダイランに追い討ちをかける。

「ギイイ」

ダイランは多数の攻撃を受けながらも、武器を握る手に力を込め襲いかかるゴブリン達を一蹴した。

「ダイラン!」

短刀とはいえ多数の刺し傷に、刺さりどころが悪いのか思ったよりも傷が深い場所もありの場に倒れた。

「俺だとこの場所の指揮なんかとれないからな。後は・・・」

そう言いながらダイランは意識を失ってしまった。

「貴方がいないと前線が保てないでしょ!」

ノエルは治癒魔法をかけながらダイランに声をかける。

ダイランの離脱により部隊の士気が目に見えるように下がっていく。
もはや迫り来る魔物を押さえつけることができない。

「ここまでなの」

ノエルの心が折れそうになったときあたり一面に濃い霧がかかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国の王子から婚約破棄&国外追放。追放された国で聖女の力に目覚めた私は神様になる。

夜にすみたい
ファンタジー
いきなり婚約破棄&国外追放を言い渡された聖女の候補の妖夢。 追放先で聖女の力に目覚めた私は神様に拾われ「次の世代の神になれ」と言われた。 その国の王子とも気が合いそうでうれしかったけどいきなり故郷の王子がきた。 「聖女妖夢よ!今帰ってくれば私との婚約破棄を無かったことにしてやろう!」 「何言ってるんですか?無理ですよ。私、半分竜ですから。」

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

神殿から追放された聖女 原因を作った奴には痛い目を見てもらいます!

秋鷺 照
ファンタジー
いわれのない罪で神殿を追われた聖女フェノリアが、復讐して返り咲く話。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

もういらないと言われたので隣国で聖女やります。

ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。 しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。 しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

親友に裏切られ聖女の立場を乗っ取られたけど、私はただの聖女じゃないらしい

咲貴
ファンタジー
孤児院で暮らすニーナは、聖女が触れると光る、という聖女判定の石を光らせてしまった。 新しい聖女を捜しに来ていた捜索隊に報告しようとするが、同じ孤児院で姉妹同然に育った、親友イルザに聖女の立場を乗っ取られてしまう。 「私こそが聖女なの。惨めな孤児院生活とはおさらばして、私はお城で良い生活を送るのよ」 イルザは悪びれず私に言い放った。 でも私、どうやらただの聖女じゃないらしいよ? ※こちらの作品は『小説家になろう』にも投稿しています

処理中です...