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早朝のサンタモニカ学園には、美しい庭園が広がっている。高級感のある校舎と、庭園には花々が咲き乱れ、美しい噴水が噴き上がっている。そんな風景を背景に、生徒たちが次々に校門をくぐっていく。
「エレノア様、ごきげんよう」
女生徒の一人に声を掛けられる。
「ごきげんよう」
私は聖女の役目を務めているけれど、まだ16歳。同年代の貴族階級の子弟たちと、ここサンタモニカ学園に通っている。
私は教室に入ると自分の席で机に顔を突っ伏した。
憂鬱だわ
なぜなら今日はこの学園で年に一度開催されるダンス交流会の日だからだ。
婚約破棄されてすぐにこんなイベントがあるなど気分も落ちる。
レオポールに婚約破棄をされたことが、学園中に広まってしまうからだ。
例えば、お父様が聖女の一族に取り入って今の地位を手に入れただとか、私が聖女の地位を盾にレオポールに言い寄ったなどの陰口はたたかれている。そこに婚約破棄が知れ渡ると思うと憂鬱な気分にもなる。
「エレノアさん。朝からどうかした?」
声をかけられて顔を上げると、そこにはクラスメイトのアレクサンドル君がいました。
この学園には珍しく、きらびやかで派手なことはしないで静かな印象です。
目の隠れる長い前髪に、あまり目立ちたくないようでおどおどしている姿をよく見かけていました。
「エレノアさん?」
「アレクサンドル君。ごきげんよう。どうしたのですか?」
そんなアレクサンドル君の方から声をかけられたことが初めてで驚いてしまい、反応が遅れ聞き返してしまう。
「いや、その。元気がないように見えたからつい」
私はアレクサンドル君が人知れず学園の花々に水を上げている姿が頭に浮かびました。
あまり自分から話しかけない印象の彼が、声をかけてくれるなんて相当ひどい空気を出していたみたのね。
「今日のダンス交流会が少し」
「エレノアさんってダンスできないのだっけ?」
「そんなところです。アレクサンドル君は?」
「僕もあまり自信がなくて、それに踊ってくれる相手もいないから参加するつもりはないんだ」
「そっか。そうですね。参加しないって手段もありますね!ただ、アレクサンドル君は心優しいし、ピッシとしたらスタイルもいいのですから声をかけてみたら相手は見つかるのでは?」
「僕なんかが声をかけても大丈夫なのかな?」
「もちろんですよ。ただ、その時は相手の目を見れるように前髪を上げた方が成功率上がるかもしれませんね」
「あの!エレノアさんー」
「エレノアちゃん!今日のダンス会の準備どうしよっか?」
アレクサンドル君の言葉を遮るように、ミレイちゃんが教室に入りながら声をかけてきた。
「あ、ミレイ邪魔しちゃったかな?」
私の席まで来たミレイちゃんがアレクサンドル君を見ながら言う。
「じゃあ僕はこれで」
アレクサンドル君が教室から出て行った。
「何話してたの?」
「私が落ち込んでたから声をかけてくれて」
「へえ。あの根暗君から声をかけるなんて相当だね。それともエレノアちゃんをダンスの相手に誘うつもりで声かけてたりして。まあ悪い奴じゃないと思うけど、エレノアちゃんにはレオポール様がいるのにね」
「エレノア様、ごきげんよう」
女生徒の一人に声を掛けられる。
「ごきげんよう」
私は聖女の役目を務めているけれど、まだ16歳。同年代の貴族階級の子弟たちと、ここサンタモニカ学園に通っている。
私は教室に入ると自分の席で机に顔を突っ伏した。
憂鬱だわ
なぜなら今日はこの学園で年に一度開催されるダンス交流会の日だからだ。
婚約破棄されてすぐにこんなイベントがあるなど気分も落ちる。
レオポールに婚約破棄をされたことが、学園中に広まってしまうからだ。
例えば、お父様が聖女の一族に取り入って今の地位を手に入れただとか、私が聖女の地位を盾にレオポールに言い寄ったなどの陰口はたたかれている。そこに婚約破棄が知れ渡ると思うと憂鬱な気分にもなる。
「エレノアさん。朝からどうかした?」
声をかけられて顔を上げると、そこにはクラスメイトのアレクサンドル君がいました。
この学園には珍しく、きらびやかで派手なことはしないで静かな印象です。
目の隠れる長い前髪に、あまり目立ちたくないようでおどおどしている姿をよく見かけていました。
「エレノアさん?」
「アレクサンドル君。ごきげんよう。どうしたのですか?」
そんなアレクサンドル君の方から声をかけられたことが初めてで驚いてしまい、反応が遅れ聞き返してしまう。
「いや、その。元気がないように見えたからつい」
私はアレクサンドル君が人知れず学園の花々に水を上げている姿が頭に浮かびました。
あまり自分から話しかけない印象の彼が、声をかけてくれるなんて相当ひどい空気を出していたみたのね。
「今日のダンス交流会が少し」
「エレノアさんってダンスできないのだっけ?」
「そんなところです。アレクサンドル君は?」
「僕もあまり自信がなくて、それに踊ってくれる相手もいないから参加するつもりはないんだ」
「そっか。そうですね。参加しないって手段もありますね!ただ、アレクサンドル君は心優しいし、ピッシとしたらスタイルもいいのですから声をかけてみたら相手は見つかるのでは?」
「僕なんかが声をかけても大丈夫なのかな?」
「もちろんですよ。ただ、その時は相手の目を見れるように前髪を上げた方が成功率上がるかもしれませんね」
「あの!エレノアさんー」
「エレノアちゃん!今日のダンス会の準備どうしよっか?」
アレクサンドル君の言葉を遮るように、ミレイちゃんが教室に入りながら声をかけてきた。
「あ、ミレイ邪魔しちゃったかな?」
私の席まで来たミレイちゃんがアレクサンドル君を見ながら言う。
「じゃあ僕はこれで」
アレクサンドル君が教室から出て行った。
「何話してたの?」
「私が落ち込んでたから声をかけてくれて」
「へえ。あの根暗君から声をかけるなんて相当だね。それともエレノアちゃんをダンスの相手に誘うつもりで声かけてたりして。まあ悪い奴じゃないと思うけど、エレノアちゃんにはレオポール様がいるのにね」
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