上 下
5 / 8
暴虐の令嬢

3

しおりを挟む
さて、どうしましょうか。

私は自室にシュナを呼んで話をすることにしました。

お父様は私に任せると言ってくれましたが、相手は外交官ですから国際問題にもなりかねませんし。

転生者って前世の知識で無双するんじゃないですか?こんな経験したことのない問題に直面するとは。

まあなんの取り柄もなかったアラサーと王子の婚約者になるようなお嬢様だとそもそものレベルが違いすぎたんですね。

とりあえず難しいことは置いといて1番大事なことを確認しないとですよね。

「シュナはどうしたい?」

「私は最後までエレナーゼ様に尽くす所存です」

シュナのエレナーゼに対する忠義はかなりのようです。
こんないい子がなぜ悪役令嬢のエレナーゼにここまで心酔しているのかしら。

この子をこのまま私に仕えさせていいものでしょうか。
悪役令嬢として原作通りに死刑にされることがないようにするつもりですけど、婚約破棄はもちろんの事、この家からも追い出されるかもしれません。

婚約破棄をされ家柄も失った女に、他の有力な貴族たちからの貰い手などつくとは思えません。

「私は、シュナに幸せになって欲しいのです。側室とはいえ、悪い話でもないと思っています」

私は自分に仕え続けるよりも、貴族として受け入れられる方がいいに違いないとシュナに勧めました。

「私にとっての1番はエレナーゼ様です!お仕えできないなら生きている意味などありません!」

シュナが、これ程までに感情をあらわにしてきたことに、私は驚きました。

「これは珍しい光景っすね」

誰ともわからぬ男の声が、急に聞こえました。

声のした方を見ると、窓を開けて怪しげな面を被った男が顔を覗かせていました。

「誰ですか!人を呼びますよ!」

「ちょっと待ってください、俺ですよ」

男は面をとって顔を見せてきました。

「あなたなど知りません!妙な動きはしない方がいいですよ!」

ゲームの中でも見た事のない男の顔に、私は警戒心を強めました。

「いくら久しぶりだからって、それは辛いっすよ」

男は窓から上半身だけ乗り出してくると、そのまま前に倒れ込みました。

「エレナーゼ様、まだ記憶があやふやなのですか?」

シュナが、私のことを心配そうに見てきます。

「記憶が混濁してたんすね。最近、顔を出さなさすぎて、本当に忘れられたのかと思って焦りましたよ。よかったよかった」

「なにも良くない!エレナーゼ様の記憶がまだあやふやだったのよ!」

この男はシークと言い、シュナと同じく幼い頃からの知り合いらしい。
シークは隠密として働いているようで、たまに顔を見せにきているようです。

シークが来たおかげで、先ほどまでの空気が一気に和らいでいった気がしました。

シュナとシークのやりとりを眺めていると、乙女ゲーマーとしての私のアンテナが反応する。

「もしかして、シュナはシークのことが好きなの?サイエス様の話を断りたいのはそれもあるのかしら?」

「エレナーゼ様、なななっ」

シュナが言葉にならない言葉を発して固まってしまいました。

「エレナーゼ様、いったいなんの話すっか?」

私はこれまでの経緯を、シークに話しました。

「はっはー!こんなじゃじゃ馬を娶りたいなんて貴族は、この先現れないぞ」

「うるさい!黙って!」

シークといるシュナはいつもの落ち着いた雰囲気はなく、たしかにじゃじゃ馬と言われても違和感はないと思った。

「シークは話に乗るのが良いと思っていますか?」

「俺たちの出生から考えれば、貴族の家に入れるなんてこの上ない話ですよ。。。ただ今回に限っては反対っすね」

もしかして、シークもシュナのことが気に入っていて両思いなのかしら。

「エレナーゼ様の思ってるような事じゃないっすよ?サイエスって野郎がダメなんだ」

シークは、貴族であるサイエス様を呼び捨てにするほどに、感情がこもっていました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!

ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。 気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。

【完結】悪役令嬢に転生したけど『相手の悪意が分かる』から死亡エンドは迎えない

七星点灯
恋愛
絶対にハッピーエンドを迎えたい! かつて心理学者だった私は、気がついたら悪役令嬢に転生していた。 『相手の嘘』に気付けるという前世の記憶を駆使して、張り巡らされる死亡フラグをくぐり抜けるが...... どうやら私は恋愛がド下手らしい。 *この作品は小説家になろう様にも掲載しています

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

婚約破棄された悪役令嬢は、満面の笑みで旅立ち最強パーティーを結成しました!?

アトハ
恋愛
「リリアンヌ公爵令嬢! 私は貴様の罪をここで明らかにし、婚約を破棄することを宣言する!」  突き付けられた言葉を前に、私――リリアンヌは内心でガッツポーズ!  なぜなら、庶民として冒険者ギルドに登録してクエストを受けて旅をする、そんな自由な世界に羽ばたくのが念願の夢だったから!  すべては計画どおり。完璧な計画。  その計画をぶち壊すのは、あろうことかメインヒロインだった!? ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

高熱を出して倒れてから天の声が聞こえるようになった悪役令嬢のお話

下菊みこと
恋愛
高熱を出して倒れてから天の声が聞こえるようになった悪役令嬢。誰とも知らぬ天の声に導かれて、いつのまにか小説に出てくる悪役全員を救いヒロイン枠になる。その後も本物のヒロインとは良好な関係のまま、みんなが幸せになる。 みたいなお話です。天の声さん若干うるさいかも知れません。 小説家になろう様でも投稿しています。

【短編】転生悪役令嬢は、負けヒーローを勝たせたい!

夕立悠理
恋愛
シアノ・メルシャン公爵令嬢には、前世の記憶がある。前世の記憶によると、この世界はロマンス小説の世界で、シアノは悪役令嬢だった。 そんなシアノは、婚約者兼、最推しの負けヒーローであるイグニス殿下を勝ちヒーローにするべく、奮闘するが……。 ※心の声がうるさい転生悪役令嬢×彼女に恋した王子様 ※小説家になろう様にも掲載しています

おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 サロン勤めで拘束時間は長く、休みもなかなか取れずに働きに働いた結果。 貯金残高はビックリするほど貯まってたけど、使う時間もないまま転生してた。 そして通勤の電車の中で暇つぶしに、ちょろーっとだけ遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したっぽい? あんまり内容覚えてないけど… 悪役令嬢がムチムチしてたのだけは許せなかった! さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドを堪能してくださいませ? ******************** 初投稿です。 転生侍女シリーズ第一弾。 短編全4話で、投稿予約済みです。

処理中です...