転生したのは推しの世界？悪役令嬢で処刑されるなんてゴメンです！

転生の令嬢

転生しました

どういう事なの。本物よね。

私は目の前にいる容姿端麗な青年、クリストフに目を奪われる。
その結果、クリストフのことを無視していたようで、何度も声をかけてきていたみたいです。

「どうかしたのか？」

「え、ちょっと」

突然顔を覗き込んできたクリストフに対して、反射的に手を出して顔をおさえた。

「嫌だったか？」

クリストフにしてみたら、私に拒絶されたように感じてしまったのでしょう少し気落ちした声をしていました。

「滅相もございません！少し驚いてしまっただけです」

私はクリストフに平身低頭、許しを乞うために謝ります。

「ならよかったが、少し傷ついたぞ」

クリストフはそう言いながら、私から目を背けました。

「か、かわいい」

クリストフが拗ねたところを、こんなふうに間近でみられるなんて。

「ば、ばか！何を言っているんだ」

心の中でとどめたつもりが、思わず声に出してしまっていたみたいです。

私は、そんなことなどは気にしないで、照れた顔を隠すクリストフの姿をまじまじと見つめ、脳裏に刻み込みました。
この夢の中の光景を、目が覚めた時に覚えて置けるように。

「本当に大丈夫か？」

クリストフが、さらに急接近してきます。

ちょっと、急にそういうことしないでくださいよ！心の準備をしないと耐え切れる自信が無いのですから！

私は心の中でクリストフに文句を言いながらも、表情はにやけるのを我慢して気持ち悪いものになっているだろうと思った。

私の不思議な表情が、さらにクリストフを心配にさせる。

クリストフは、熱でもいるのかと私の額に合わせ体温を測ろうとしたようで、グッと顔を近づけてきた。

「ちょっと待って！」

その時、私は目の前が真っ黒になりました。


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「うーん」

意識を取り戻した私は、目が覚めたことを実感してしまった。

私は目を閉じたままにゴロゴロとベッドの気持ちよさを満喫し、夢の中でのクリストフとの記憶を呼び起こそうとした。

「エレナーゼ様、お目覚めですか」

寝ぼけているのか、誰かの声が聞こえた気がした。

私は一人暮らしのはずですし、エレナーゼなどと言う名前でもありません。

まだねぼけているのかと思いましたが、ふいに、ベッドのこれほどまでにフカフカな感触と、身体を大の字にしてもあまりある大きさに違和感を覚えました。

私はどこにいるのでしょうか。まだ、夢の中なのでしょうか。

私はおそるおそる目を開け、声の主を確認します。

「クリストフ様が気を失ったエレナーゼ様を連れてきたときにはびっくりしましたよ。しっかりと食べてお休みになって下さいね」

視線の先には、とても可愛らしい衣装に深紅の髪が映えるメイドさんがいました。

ベッドでゴロゴロしていた私のことなときにする事なく、メイドさんは慣れた手つきで果物を切ると、ベッド脇のテーブルに飲み物と一緒に置きます。

「クリストフが私を連れてきたのですか？」

「そうですよ」

昨日の光景は夢じゃなかったんだ。
でも、今が夢の中なのだから結局は夢の中になるの？

「エレナーゼ様？」

側から見るとぼーっとしている私に、メイドさんが声をかけてきた。

「エレナーゼって、私のこと呼んでるんだよね？」

私はメイドさんの顔をじっと見つめると、自分のことを指差して尋ねた。

メイドさんは、まだ疲れているのですか？と言うと薬を持ってくると部屋から出ていきました。

私はベッドから起き上がると鏡をかくにんした。

「うそ。本当にエレナーゼだわ」

私は日本に住むアラサーのOLで、恋人は数年おらず、生き甲斐は乙女ゲーム。

自分で思い返してもパッとしないと思う。

つまり、私が知っている私は、こんなお屋敷で優雅に暮らすエレナーゼとは程遠い女のはずなのだ。