4 / 9
プロローグ
緋扇時雨
しおりを挟む
「おい、あれみろよ」
「相変わらず、美しすぎる」
視線の中心には、時雨の姿があった。
家の中では朱里と言い争いをしたり、からかったりと、どこか子供じみた面のある時雨も、外では猫をかぶっているため誰もが憧れる完璧な美人を演じていた。
「時雨さん。いつご飯に行きますか」
「いや、それよりも俺と映画いきませんか」
「えっと、またの機会に」
遠巻きに眺める男達から、時雨に話しかけ撃沈していく男たち。
「相変わらずお高くとまってるよね」
「絶対ああいう奴ほど性格悪いでしょ」
そしてそれを快く思わない女達の陰口。
(聞こえてるっつーの)
こんな毎日を過ごしていたら、家の中での時雨は仕方ないと思える。
「やあ」
「おはようございます。小金さん」
「愚民どもは散った散った」
最近の時雨の1番の悩みの種が現れた。
時雨の通う大学は名家の子息子女や政治家、医者、弁護士、など一流の親を持つ家庭に生まれた子供が多く通っている。
小金はその中でも上位1%のヒエラルキーにいる男だ。学園にも多額の寄付をしており、色々なところに顔も効く。
「時雨、今朝も美しいね」
「いえ、そんなことは」
「この、キャンパスでも一際輝いてるよ。ところでこの前の話の返事はいつくれるんだい?」
時雨は小金から言い寄られていた。それもかなり激しく。
「すみません、授業におくれてしまいますので」
そう言うと時雨は小金をなんとか振り切りその場から立ち去った。
「やっと帰れる」
一日中、小金につきまとわれ、取り巻きの女達の視線に疲れ果てていた。
学業よりも人間関係に疲れる毎日だ。
悩みのタネをどう払拭するべきか、
やっぱり薬で手っ取り早く片付けようかななどと思慮を巡らせながら帰路についていた。
帰宅途中、時雨の前に覆面をしたガタイのいい男達が現れた。
「大人しくしろ」
目の前の男達に気を取られていた
時雨は背後から口元にハンカチを当てられるとその場で、気を失った。
男達は気を失った時雨を黒塗りのボックスカーに連れ込む。
男たちは場所もあってか周囲を特段きにする様子もなかった。
「しかし、いい女だな」
「少しくらい手出してもよくねえか」
覆面の男は舐め回すように時雨を眺める。
「やめとけ、そんなことしたら依頼主を怒らせるだけだ。それよりたんまり貰う金で遊べばいいだろ」
「うっっ」
ニヤニヤと笑みを浮かべる男の表情が一転した。
男は突然苦しみ出すと口から泡をはいて、気を失う。
「おい!どーした!」
「こんな美人を適当に扱わないで欲しいわね」
「おまえ、なんで起きてるんだ!」
気を失ってたはずの時雨が目を覚ましていた。
「なんでって、なんででしょうね」
時雨はそう言うと運転席の男に注射針を差し込む。
「おい!おまえ何打ちやがった!」
突然なにかを注入された男は慌てふためき声を荒げる。
「そんなことより、ちゃんと前見て運転してくれますか?言うこと聞いたら解毒剤あげますから」
「おい!どういうつもりだ!」
「黙って運転できないんですか?」
男は恐怖心から時雨の言うことに素直に従った。
時雨を乗せた車は人気のない埠頭についた。
「連れてきた」
「流石、手際がいいね。報酬はここに。これからは赤の他人ということで」
「分かってる。二度と関わるか、俺たちは関係ない」
男は依頼主からアタッシュケースを受け取ると、近くに止めてた自分の車に乗り込みすぐその場を去った。
「はあ、何度見ても美しい。これで君は俺のものだ」
依頼主の男は自慢の派手なオープンカーの助手席で眠る時雨の髪を撫でる。
「やっぱりあなたですか。小金さん」
時雨は目を開けると、小金の腕を掴む。
「なんで、目を覚ましているんだ。薬をもったはずだろ!あいつらしくじったか」
予想外の出来事に小金は慌てたがすぐに落ち着きを取り戻す。
「まあいい。力づくで押さえつけるだけの話だ。いつまでたっても俺のものにならないおまえが悪いんだぞ。それにわかっただろ?俺はああいう人間も動かせる。逆らわない方が身のためだ」
小金は時雨の腕を振りほどくと逆に時雨の両腕を押さえつける。
「今日からおまえは俺のペットだ」
「やっぱり、あんたは気持ち悪い男だったみたいね」
「うるせえ!」
小金は時雨に襲いかかろうとしたが、首から下の身動きが取れない。
「おい!この俺になにをした!」
「ちょっと薬をもっただけですよ。動けなくなる薬をね」
時雨は小金の指を一本ずつ引き剥がしていく。
「なにするんだ。やめろ、やめろ!」
小金の指の1つを曲がってはいけない方向に無理やり曲げる。
「痛みも感じないでしょ?」
身体の動かない恐怖。痛みの感じない身体。そして、目の前にいる自分の知らない緋扇時雨。得体の知れない恐怖が小金を包み込む。
「おまえは何者なんだ」
「あなたも知ってるでしょ?私は緋扇時雨」
「おまえは俺の知ってる時雨じゃない」
「こっちの私も緋扇時雨ですよ?とてつもなく美人な大学生じゃなく、宵闇街の人間としての一面ってだけで」
時雨の言葉に小金は更に追い詰められる。
「宵闇街だと」
「あんなチンピラでも、裏の世界と繋がりあるなら聞いたことないですか?女王蜂と呼ばれる女の話」
「まさか、おまえが」
時雨の言った呼び名に小金は心当たりがあるようだった。
「宵闇街に住むというあらゆる毒を使う神出鬼没の女。でも、噂だろ。都市伝説の類だ。実際見たなんてやつ聞いたことない」
「まあ、見た人をそのまますんなり帰すわけないですよね」
「俺を殺すのか?なあ、助けてくれ。なんでもするから」
「どうしましょう」
時雨は冷たく笑いかけた。
「時雨ちゃん。遅いよー」
家に帰った時雨を朱里が出迎える。
「時雨姉、なにしてたの?」
「ちょっとね」
「例のストーカーに襲われたかと思ったんだからね」
朱里が潤んだ瞳で時雨の腕を掴む。
「なに?心配してくれたの?」
朱里がコクンと頷く
「時雨ねえなら大丈夫って言ってるだろ」
「空はもう少し心配しなさいよ」
「女王蜂様のなにを心配しろと」
「ふふ、空のことも刺してあげようか?」
時雨は不敵な笑みを浮かべた。
「相変わらず、美しすぎる」
視線の中心には、時雨の姿があった。
家の中では朱里と言い争いをしたり、からかったりと、どこか子供じみた面のある時雨も、外では猫をかぶっているため誰もが憧れる完璧な美人を演じていた。
「時雨さん。いつご飯に行きますか」
「いや、それよりも俺と映画いきませんか」
「えっと、またの機会に」
遠巻きに眺める男達から、時雨に話しかけ撃沈していく男たち。
「相変わらずお高くとまってるよね」
「絶対ああいう奴ほど性格悪いでしょ」
そしてそれを快く思わない女達の陰口。
(聞こえてるっつーの)
こんな毎日を過ごしていたら、家の中での時雨は仕方ないと思える。
「やあ」
「おはようございます。小金さん」
「愚民どもは散った散った」
最近の時雨の1番の悩みの種が現れた。
時雨の通う大学は名家の子息子女や政治家、医者、弁護士、など一流の親を持つ家庭に生まれた子供が多く通っている。
小金はその中でも上位1%のヒエラルキーにいる男だ。学園にも多額の寄付をしており、色々なところに顔も効く。
「時雨、今朝も美しいね」
「いえ、そんなことは」
「この、キャンパスでも一際輝いてるよ。ところでこの前の話の返事はいつくれるんだい?」
時雨は小金から言い寄られていた。それもかなり激しく。
「すみません、授業におくれてしまいますので」
そう言うと時雨は小金をなんとか振り切りその場から立ち去った。
「やっと帰れる」
一日中、小金につきまとわれ、取り巻きの女達の視線に疲れ果てていた。
学業よりも人間関係に疲れる毎日だ。
悩みのタネをどう払拭するべきか、
やっぱり薬で手っ取り早く片付けようかななどと思慮を巡らせながら帰路についていた。
帰宅途中、時雨の前に覆面をしたガタイのいい男達が現れた。
「大人しくしろ」
目の前の男達に気を取られていた
時雨は背後から口元にハンカチを当てられるとその場で、気を失った。
男達は気を失った時雨を黒塗りのボックスカーに連れ込む。
男たちは場所もあってか周囲を特段きにする様子もなかった。
「しかし、いい女だな」
「少しくらい手出してもよくねえか」
覆面の男は舐め回すように時雨を眺める。
「やめとけ、そんなことしたら依頼主を怒らせるだけだ。それよりたんまり貰う金で遊べばいいだろ」
「うっっ」
ニヤニヤと笑みを浮かべる男の表情が一転した。
男は突然苦しみ出すと口から泡をはいて、気を失う。
「おい!どーした!」
「こんな美人を適当に扱わないで欲しいわね」
「おまえ、なんで起きてるんだ!」
気を失ってたはずの時雨が目を覚ましていた。
「なんでって、なんででしょうね」
時雨はそう言うと運転席の男に注射針を差し込む。
「おい!おまえ何打ちやがった!」
突然なにかを注入された男は慌てふためき声を荒げる。
「そんなことより、ちゃんと前見て運転してくれますか?言うこと聞いたら解毒剤あげますから」
「おい!どういうつもりだ!」
「黙って運転できないんですか?」
男は恐怖心から時雨の言うことに素直に従った。
時雨を乗せた車は人気のない埠頭についた。
「連れてきた」
「流石、手際がいいね。報酬はここに。これからは赤の他人ということで」
「分かってる。二度と関わるか、俺たちは関係ない」
男は依頼主からアタッシュケースを受け取ると、近くに止めてた自分の車に乗り込みすぐその場を去った。
「はあ、何度見ても美しい。これで君は俺のものだ」
依頼主の男は自慢の派手なオープンカーの助手席で眠る時雨の髪を撫でる。
「やっぱりあなたですか。小金さん」
時雨は目を開けると、小金の腕を掴む。
「なんで、目を覚ましているんだ。薬をもったはずだろ!あいつらしくじったか」
予想外の出来事に小金は慌てたがすぐに落ち着きを取り戻す。
「まあいい。力づくで押さえつけるだけの話だ。いつまでたっても俺のものにならないおまえが悪いんだぞ。それにわかっただろ?俺はああいう人間も動かせる。逆らわない方が身のためだ」
小金は時雨の腕を振りほどくと逆に時雨の両腕を押さえつける。
「今日からおまえは俺のペットだ」
「やっぱり、あんたは気持ち悪い男だったみたいね」
「うるせえ!」
小金は時雨に襲いかかろうとしたが、首から下の身動きが取れない。
「おい!この俺になにをした!」
「ちょっと薬をもっただけですよ。動けなくなる薬をね」
時雨は小金の指を一本ずつ引き剥がしていく。
「なにするんだ。やめろ、やめろ!」
小金の指の1つを曲がってはいけない方向に無理やり曲げる。
「痛みも感じないでしょ?」
身体の動かない恐怖。痛みの感じない身体。そして、目の前にいる自分の知らない緋扇時雨。得体の知れない恐怖が小金を包み込む。
「おまえは何者なんだ」
「あなたも知ってるでしょ?私は緋扇時雨」
「おまえは俺の知ってる時雨じゃない」
「こっちの私も緋扇時雨ですよ?とてつもなく美人な大学生じゃなく、宵闇街の人間としての一面ってだけで」
時雨の言葉に小金は更に追い詰められる。
「宵闇街だと」
「あんなチンピラでも、裏の世界と繋がりあるなら聞いたことないですか?女王蜂と呼ばれる女の話」
「まさか、おまえが」
時雨の言った呼び名に小金は心当たりがあるようだった。
「宵闇街に住むというあらゆる毒を使う神出鬼没の女。でも、噂だろ。都市伝説の類だ。実際見たなんてやつ聞いたことない」
「まあ、見た人をそのまますんなり帰すわけないですよね」
「俺を殺すのか?なあ、助けてくれ。なんでもするから」
「どうしましょう」
時雨は冷たく笑いかけた。
「時雨ちゃん。遅いよー」
家に帰った時雨を朱里が出迎える。
「時雨姉、なにしてたの?」
「ちょっとね」
「例のストーカーに襲われたかと思ったんだからね」
朱里が潤んだ瞳で時雨の腕を掴む。
「なに?心配してくれたの?」
朱里がコクンと頷く
「時雨ねえなら大丈夫って言ってるだろ」
「空はもう少し心配しなさいよ」
「女王蜂様のなにを心配しろと」
「ふふ、空のことも刺してあげようか?」
時雨は不敵な笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説


ルナール古書店の秘密
志波 連
キャラ文芸
両親を事故で亡くした松本聡志は、海のきれいな田舎町に住む祖母の家へとやってきた。
その事故によって顔に酷い傷痕が残ってしまった聡志に友人はいない。
それでもこの町にいるしかないと知っている聡志は、可愛がってくれる祖母を悲しませないために、毎日を懸命に生きていこうと努力していた。
そして、この町に来て五年目の夏、聡志は海の家で人生初のバイトに挑戦した。
先輩たちに無視されつつも、休むことなく頑張る聡志は、海岸への階段にある「ルナール古書店」の店主や、バイト先である「海の家」の店長らとかかわっていくうちに、自分が何ものだったのかを知ることになるのだった。
表紙は写真ACより引用しています

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。


五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる