九十九神と過ごす陰陽道

たつき

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東野宮紫苑

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「何なのよ急に」

弥生はいきなり詰め寄る紫苑に対して困惑した表情を浮かべる。

「いいからさ殴ってくれ」

「やめてよ、気持ち悪い」

「気持ち悪いんだったら、殴っていいから」

しつこく詰め寄る紫苑がなにを考えてるのか理解できない。弥生からいつもの威勢の良さがなくなっていた。

「なあってば」

「急に何なのよ」

詰め寄ってくる紫苑を弾き返せず一歩一歩後退りしている。

「きゃあ」

「あぶない!」

弥生がバランスを崩し後ろに倒れこむ。紫苑は咄嗟に弥生の手を掴んだが、耐え切れず2人してその場に倒れた。

「弥生、大丈夫か?」

弥生の心配をした紫苑であったが、その眼に映る光景に自分が大丈夫じゃない未来を察した。

紫苑の手はそれほど大きくはないが、しっかりと育った弥生の胸元を捉えていた。

「うん。…ってどこ触ってるのよ!」

弥生の渾身の蹴りが紫苑の鳩尾にクリーンヒットした。

「うっ。そこはダメだろ」

紫苑は腹を抑えその場にうずくまる。

「うっさいバカ」

弥生はその後、うずくまる紫苑に数発の蹴りを入れると見るからに怒った様子でその場から立ち去った。

「さて」

1人痛みに悶え終えた紫苑は仏像の前に正座し、瞑想していた。

紫苑は何の考えもなしに、ただ殴られたいから弥生に殴れと言ったわけではなかった。

弥生からの攻撃に何かを感じた。その感覚をより鮮明にするために殴られたのだ。

あの感触を頭の中で呼び起こす。

大きさはないが、張りは良かった。

「違う違う」

煩悩に負けながらも、弥生に殴打された感覚を思い出す。

内部から外部に衝撃がくる感じ。
そう、この感覚だ。

紫苑は瞑想をやめるとその感覚を忘れないうちに、仏像に手を伸ばした。

『カタカタ』

仏像の中に自分の力を流し込む。

次第に仏像が小刻みに動き始めた。

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