聖女は2人もいらない!と聖女の地位を剥奪されました。それならば、好きにさせてもらいます。

たつき

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使者との会話が弾んでいると、馬車が止まった。  
使者に促されて馬車から降りる。

「案内しますので着いてきていただけますか」

王宮の中を使者の後について進んでいく。

「こちらでお待ちください。ルーカス様をお呼びしてきます」

使者は中で待つように告げると、頭を下げてその場から離れた。
テレサは言われたとおりに部屋に入って待つ事にした。

部屋の中には、壁に掛かる絵画こそあれど他豪華な装飾品などは何もなく普通の部屋だった。

テレサは部屋の雰囲気は豪華すぎるよりも落ち着くなと思ったが、同時に何か嫌な予感もしていた。

「いったい何の話があるというの」

この国の聖女であるテレサは国の要人の1人になる。そのような地位の人を簡素な部屋に通して1人待たせるような事をするだろうか。

普通ならメイドが紅茶の一杯でも用意して、丁重にもてなすはずである。

テレサはそのような歓迎を受けたいわけではないが、この違和感と部屋の空気に緊張の糸が張った気分になった。

『ガチャリ』

どれくらいの時間が経ったのだろうか、体感では10分以上は経った気がする。

「やあテレサ。よく来てくれたね」

部屋の扉が開いてルーカスが入ってきた。

「ルーカス様、お久しぶりです」

テレサは立ち上がりルーカスに挨拶をする。

「ああ」

ルーカスはぶっきらぼうに返事をし、テレサの前に座ると足を組んだ。

「本日はどのようなご用件でしょうか」

「お前の話を小耳に挟んでな。酔っ払いの喧嘩を仲裁したとか?本当か?」

「本当ですが、それがどうかしましたか?」

「テレサ、お前は聖女なんだよな?それが聖女の勤めなのか?」

「私は聖女としてこの国の安寧を望んでいます。僅かな諍いかもしれませんが、『ガタン』」

テレサの話を遮るように、ルーカスがテーブルに足を乗せる。

「そんな事は憲兵の仕事だと思うんだけど?違うか?」

ルーカスの言葉にテレサは返答に詰まる。

「聖女ってのはさ、どうにもできない事をその力で救ってきたんだろ?いまのお前は聖女って言えるのか?」

「私は聖女です!確かに聖女としての力を使ってはいませんが、勤めは果たしているつもりです。それに、私の力は戦の女神の加護によるもの。強大な魔物が襲ってこない平和な今の暮らしでは使う事がないのです」

テレサは自分の存在を否定されたような気がして、ルーカスに強く訴えた。

「強大な魔物が襲ってこないからねえ。それはさ、フィオナが聖女の務めを果たしてるからだろ?フィオナの祈りによってこの国を守る結界が維持されてるし、フィオナは定期的に近隣の街も回って祈りを捧げてるんだよ。昨日だって力を使って疲れてる様子だったぞ?お前は本当に聖女としての勤めを果たしてるとフィオナに向かって言えるのか?」

確かにフィオナが役目を果たしているのはテレサもわかっている。
だからと言って、自分が役目を放棄していると言われる筋合いもない。

「フィオナ様が聖女の力を使ってご尽力しているのは知っています。でもそれは、聖女としての役割が違うからです。私は今の私ができることは果たしていると思っています」

「はあ」

ルーカスは呆れたようにため息を吐いて、テーブルから足を下ろした。
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