転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

文字の大きさ
63 / 190

第63話 精霊のお仕事

しおりを挟む
 コウの山の斜面に作る棚田の提案は、村長のヨーゼフも目からウロコであった。

 元々ドワーフの大半は農業に興味がないものが多いし、そんな知識もないから思いつきもしないものだからだ。

「……それなら、山の斜面も活用できるな……。よし、コウ。何人か人を回すから、お前の指示で早速、始めてくれ」

 ヨーゼフはそう言うと、立ち上がりコウの家から飛び出していく。

 善は急げという事だろう。

 それに、ヨサク達農業系ドワーフも、自分達の扱いがどうなるか心配だろうから、この決定を伝えれば少しは安心するだろうという判断であった。

 村長のヨーゼフは自宅に泊めているヨサクにこの事を伝えると、安堵してその案に賛同した。

 実はヨサクもこのエルダーロックの村を一日、見学して畑用に向いた土地があまりないと思っていたからだ。

 翌日には、コウの指揮の下、鉱山で出るクズ石を使って斜面に石積みを始める事になるのであった。


 棚田の石積み作業は大きな石小さな石を組み合わせて積み重ねる。

 斜面も削って整地していく。

 棚田は段々畑と違って、水はけよりも耕す土の下に粘土を入れて水が流れ出ないようにする処理も必要なので面倒だが、斜面の土には粘土も多く含まれていたので、その作業は楽であった。

 逆に上に敷く土の方が足りないくらいで、それは麓の村から運ばなくてはいけないくらいである。

 最初の数日は土運搬問題は後にして、石積みと整地作業を優先した。

 一つ一つ完成に近づくごとにヨサク達農業系ドワーフのグループは、笑顔が生まれつつあった。

 これが完成すれば、自分達の存在意義がこの村で生まれそうだと、思えていたからだろう。

 誰もこの重労働に不満を漏らす事なく、女子供も含めて自分のできる事をせっせと行うのであった。

 その数日後の夜。

 コウは村の傍にある丘まで来ていた。

 その丘は村の整地の際に生まれた土を積んでできたもので、言わば邪魔な存在だったから、ここを崩して斜面の棚田に運び込もうという事になっていた。

 ただし、棚田予定地の斜面まで距離もあるし、傾斜もきつい。

 そこに土を運び込む作業は何か月かかるかわからない話だ。

「あまり目立つ事をしたくなかったけど、ヨサクさん達に希望の笑顔が生まれてきているからなぁ。出し惜しみしている場合じゃない」

 コウは一人そうつぶやくと、土魔法を唱えてその丘の土を一部盛り上げた。

 そして、次の瞬間にはその盛り上がった土は、コウの魔法収納付き鞄に吸い込まれて消えていく。

 コウの魔法収納付き鞄は出入り口が狭いので大量の土を一気に入れる事が出来ないのだ。

 だから、土魔法で一部の土を盛り上げてそれを鞄に詰めていくという事を繰り返した。

 幸いコウの魔力は底がない。

 というか『大地の力吸収』というチートのような能力持ちのコウにとって、魔力は消費した分、大地からもらって補填している感じだから、多少の魔法使用は何でもないのである。

 そして、その日の夜のうちに、コウは村の外れの丘を消し去る事になるのだが、それに村人たちが気付いたのは、翌朝の事であった。

「ふぁ~……! 今日もいい朝だなぁ。……うん? 景色が変わった気が……。やけに視界が広がってないか? あれ……? 丘がない!?」

 ドワーフの一人が家の窓を開けて換気をする時に、その事に気づいた。

「どうしたんだい、あんた?」

 奥さんのドワーフが、夫の異変に気付いて、後ろから声をかける。

「そ、外を見てくれ! 目の前にあったはずの丘が無くなっているんだ!」

「何を言っているんだい、あんた。まだ、寝ぼけているのかい? ──嘘でしょ……? 本当にないわ!」

 奥さんも夫のわけのわからない言葉を疑ったが、一緒に窓を覗いて、いつもの光景である丘がない事に気づいて驚くのであった。

 もちろん、その丘は、コウが全て土として回収し、山の棚田予定の斜面に一夜のうちに運び込んでしまっている。

 そして、ヨサク達の方も朝一番で棚田予定地に誰よりも早く足を運んで前日までと様子が違う事に気づいた。

「ここが数か月後には、立派な棚田になるのかぁ……。完成して作物をここで作った時、この村の一員として迎えられる事になるだろう……、って、なんじゃこりゃ!?」

 ヨサク達は棚田予定地が、すでに棚田として立派な土が敷き詰められている事に、気づいて目を剥く。

 それは他のドワーフ達も一緒であった。

「こ、これはどういう事だ!?」

「奇跡だ……。奇跡が起こったぞ!」

「これなら、すぐに二条大麦が作れるかもしれん!」

 ヨサク達農業系ドワーフ達は、土が敷き詰められた棚田に興奮してその奇跡に感謝する。

 農家にとって作物を回収した時、その達成感を味わい、喜びを感じるのだが、棚田作りだけでも数か月は要するだろうと思っていたから、それまではこの村の厄介者扱いになると思っていただけに、嬉しさもひとしおであった。

「土の精霊、ノームに感謝だ! いや、このエルダーロックの村は鉱山の精霊ノッカーを大事にしているらしいからそっちにも感謝しておこう!」

 ヨサク達農業系ドワーフ達はそう言うと、棚田に向かって長い時間、拝むのであった。

 その時、前世でそれに近い発音の名前だった野架公平(のか こうへい)ことコウは、自分の部屋のベッドでぐっすりと寝ていた。

「コウ、今日も棚田作りでしょ? 起きなくていいの?」

 部屋の扉をノックして同居人のダークエルフであるララノアがコウを起こしに来た。

「……え……、むにゃむにゃ……。 ふぁー……! もう朝かぁ……。あ、棚田は夜のうちに働き者の精霊が土運びをしたから大丈夫だよ、はははっ」

 とコウは寝起きながら、ララノアの言葉に冗談で返すのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...