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第59話 鍛冶屋での日常
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コウは鉱山での掘削を昼からも続け、その働きは当然ながら他のドワーフと比べてもダントツで一番であった。
ララノアは届け終えた弁当の空箱を回収して丁度帰るところであったが、周囲のドワーフ達がそのコウをこぞって褒めているので友人として少し誇りに感じていた。
「コウの『半人前』の意味がようやくわかってきた気がするわ。その姿に対して、親近感を持っての表現なのね」
ララノアはずっとコウが周囲のドワーフ達(髭なしグループを除く)が、活躍をして英雄的な扱いを受けているコウを未だに『半人前』と呼ぶ事だけが納得できていなかったのだが、鉱山を訪れてみて、これほどの人気がある事で、マイナスイメージがある言葉がコウと他のドワーフ達の距離を縮める言葉として受け入れられたのだ。
「俺達は当然、コウを『半人前』なんて誰も思っていないからな。それどころからドワーフ離れした活躍にみんな畏敬の念を感じてもおかしくないところだ。だが、その姿は他のドワーフと比べたら一人前の証明である髭もなく、筋骨隆々でもない半人前。その一点だけでみんなも英雄的なコウ唯一の欠点が逆に距離を縮めているのさ」
ダンカンは一番の友人としてコウを語る。
ララノアもそれがよく理解できたから頷く。
「そうだ、コウは鍛冶屋の仕事が入ったから、予定を変更して採掘作業は切り上げてもらうか」
ダンカンは、奥でどんどん掘り抜いていくコウに向かって坑道に声を反響させて伝える。
「おーい、コウ! お前は鍛冶仕事の予定が出来たんだから先に上がっていいぞ! ついでだからララちゃんと一緒に村に戻りな」
「はーい、わかりました!」
奥からコウの返事が聞こえる。
そうすると他の坑道から、コウに対して、
「「「俺達のツルハシ、よろしくな!」」」
とコウに注文したドワーフ全員からお願いの声が響いてくるのであった。
それに対してまた、コウが返事を返しつつ、ララノアのもとに戻ってくる。
「それじゃあ、行こうか」
コウはララノアの手にしていた弁当の空箱の山を魔法収納鞄で回収すると、鉱山をあとにするのであった。
村には大きな広場があり、その周囲には村長宅や治療院など重要なお店などが、優先して軒を連ねている。
そして大通りが続き、その通りには職人達のお店が並んでいるのだが、そこに鍛冶屋はない。
単に、音がどの店舗よりもうるさいという事で、村の外れに土地を与えられていたのだ。
だが、それは店主の一人であるイッテツも望んでいた事なので、問題はない。
そこにコウが鉱山のドワーフ達から、ツルハシの注文を受けた事を伝えた。
「ようやく、『コウテツ』ブランド商品の仕上げが終わって一息ついたところだったのに、また仕事かよ。──何? 『コウテツ』の刻印なしで大丈夫? ──だからデザインも凝らなくていいのか? それなら、まだ、楽か。だが、そうなると大変なのはコウだがいいのか?」
イッテツはデザインや仕上げが中心で、金属の鍛錬はコウに任せている。
聞けば、予約本数は二十本。
相当な数である。
「五等級の魔鉱鉄製でいいらしいので比較的に楽かなと」
「五等級ならまだ大丈夫か……。 うん? いや、おいおい……。魔鉱鉄製の六等級を打つのにも職人は普通に大変なんだが!?」
イッテツはここのところずっと、コウと一緒に『コウテツ』の超魔鉱鉄製の二、三等級を製作していた事で感覚が麻痺していたから、コウに一瞬応じかけた。
しかし、すぐにそれが違う事を思い出し、ツッコミを入れる。
「あ、すみません。どうしても超魔鉱鉄製と比べてしまって……」
コウもイッテツと同じだったらしく、感覚が麻痺していた事に気づいて謝るのであった。
こうして二人は、普段の仕事のレベルから多少手を抜いて、五等級の魔鉱鉄製ツルハシを二十本作る事にした。
ちなみに、一等級から三等級が、超魔鉱鉄製になるのだが、これには魔力を込める前の金属の質も含まれる。
そこに超一流の技術的な仕上げが行われる事で、その等級にふさわしい製品になるのだ。
続いて四等級から六等級が基本は魔鉱鉄製。
これも、同じで最低ラインが魔鉱鉄製である事から始まり、技術が伴う事で四等級や五等級になる。
七等級から下がただの金属を鍛えた製品になるのだが、これが一般的でだろう。
それに庶民が使用する中には等級外、つまり、ブランド名の入っていない無級も普通に存在するので、五等級がいかに凄い製品なのかわかってもらえるだろうか?
他に、一等級の上にも初段級、二段級、三段級と続いているが、これはそもそも使用している金属も特殊過ぎで国宝扱いだから今のコウ達にはあまり関係ないところである。
コウとイッテツはそんな三大ブランドに並ぶ製品を作り出す事が出来る技術や才能を持ち合わせていたから、当たり前のように五等級のツルハシを作れているのだが、コウだけだと、超魔鉱鉄製に金属を鍛え上げても、イッテツに比べたら技術でかなり落ちるから三等級が精々というところ。
そこに職人として一流の技術を持つイッテツの仕上げが加わる事で上の等級になっていくのだ。
コウとイッテツは二人が組む事でお互いの足りない部分を補って三大ブランドとタメを張るレベルまで昇華しているのであった。
数日後。
コウはイッテツと鍛冶屋に籠って、ドワーフ達に注文された五等級、それもブランドの刻印なしで形も一般的なツルハシと変わらないという代物を作り上げてしまった。
「……コウの提案のまま作ってはみたが、これはこれで、アンバランスさが面白いな」
イッテツは仕上げを怠る事はないから、きっちり全て五等級に仕上げている。
「一見すると普通のツルハシ。でも、使用すると五等級。宣伝にはならいないですが、ドワーフのみんなが入手できるコストで提供できるのもいいですね」
コウもイッテツに納得しつつ、鉱山の仕事が捗るだろうと思うと、嬉しさに笑みがこぼれる。
「これから、他のドワーフからも同じのを注文されそうだが……、この価格だと利益はあまりでないんだよな。わははっ!」
イッテツがそう言うのも当然である。
原材料である金属の代金が大半を占め、人件費と技術的なものは沢山の注文がある事で成立している状態だからだ。
「でも、この村の発展に繋がるなら、トントンでも良い気がします」
コウが笑って応じると、
「違いない! わははっ!」
とイッテツも同意して笑うのであった。
ララノアは届け終えた弁当の空箱を回収して丁度帰るところであったが、周囲のドワーフ達がそのコウをこぞって褒めているので友人として少し誇りに感じていた。
「コウの『半人前』の意味がようやくわかってきた気がするわ。その姿に対して、親近感を持っての表現なのね」
ララノアはずっとコウが周囲のドワーフ達(髭なしグループを除く)が、活躍をして英雄的な扱いを受けているコウを未だに『半人前』と呼ぶ事だけが納得できていなかったのだが、鉱山を訪れてみて、これほどの人気がある事で、マイナスイメージがある言葉がコウと他のドワーフ達の距離を縮める言葉として受け入れられたのだ。
「俺達は当然、コウを『半人前』なんて誰も思っていないからな。それどころからドワーフ離れした活躍にみんな畏敬の念を感じてもおかしくないところだ。だが、その姿は他のドワーフと比べたら一人前の証明である髭もなく、筋骨隆々でもない半人前。その一点だけでみんなも英雄的なコウ唯一の欠点が逆に距離を縮めているのさ」
ダンカンは一番の友人としてコウを語る。
ララノアもそれがよく理解できたから頷く。
「そうだ、コウは鍛冶屋の仕事が入ったから、予定を変更して採掘作業は切り上げてもらうか」
ダンカンは、奥でどんどん掘り抜いていくコウに向かって坑道に声を反響させて伝える。
「おーい、コウ! お前は鍛冶仕事の予定が出来たんだから先に上がっていいぞ! ついでだからララちゃんと一緒に村に戻りな」
「はーい、わかりました!」
奥からコウの返事が聞こえる。
そうすると他の坑道から、コウに対して、
「「「俺達のツルハシ、よろしくな!」」」
とコウに注文したドワーフ全員からお願いの声が響いてくるのであった。
それに対してまた、コウが返事を返しつつ、ララノアのもとに戻ってくる。
「それじゃあ、行こうか」
コウはララノアの手にしていた弁当の空箱の山を魔法収納鞄で回収すると、鉱山をあとにするのであった。
村には大きな広場があり、その周囲には村長宅や治療院など重要なお店などが、優先して軒を連ねている。
そして大通りが続き、その通りには職人達のお店が並んでいるのだが、そこに鍛冶屋はない。
単に、音がどの店舗よりもうるさいという事で、村の外れに土地を与えられていたのだ。
だが、それは店主の一人であるイッテツも望んでいた事なので、問題はない。
そこにコウが鉱山のドワーフ達から、ツルハシの注文を受けた事を伝えた。
「ようやく、『コウテツ』ブランド商品の仕上げが終わって一息ついたところだったのに、また仕事かよ。──何? 『コウテツ』の刻印なしで大丈夫? ──だからデザインも凝らなくていいのか? それなら、まだ、楽か。だが、そうなると大変なのはコウだがいいのか?」
イッテツはデザインや仕上げが中心で、金属の鍛錬はコウに任せている。
聞けば、予約本数は二十本。
相当な数である。
「五等級の魔鉱鉄製でいいらしいので比較的に楽かなと」
「五等級ならまだ大丈夫か……。 うん? いや、おいおい……。魔鉱鉄製の六等級を打つのにも職人は普通に大変なんだが!?」
イッテツはここのところずっと、コウと一緒に『コウテツ』の超魔鉱鉄製の二、三等級を製作していた事で感覚が麻痺していたから、コウに一瞬応じかけた。
しかし、すぐにそれが違う事を思い出し、ツッコミを入れる。
「あ、すみません。どうしても超魔鉱鉄製と比べてしまって……」
コウもイッテツと同じだったらしく、感覚が麻痺していた事に気づいて謝るのであった。
こうして二人は、普段の仕事のレベルから多少手を抜いて、五等級の魔鉱鉄製ツルハシを二十本作る事にした。
ちなみに、一等級から三等級が、超魔鉱鉄製になるのだが、これには魔力を込める前の金属の質も含まれる。
そこに超一流の技術的な仕上げが行われる事で、その等級にふさわしい製品になるのだ。
続いて四等級から六等級が基本は魔鉱鉄製。
これも、同じで最低ラインが魔鉱鉄製である事から始まり、技術が伴う事で四等級や五等級になる。
七等級から下がただの金属を鍛えた製品になるのだが、これが一般的でだろう。
それに庶民が使用する中には等級外、つまり、ブランド名の入っていない無級も普通に存在するので、五等級がいかに凄い製品なのかわかってもらえるだろうか?
他に、一等級の上にも初段級、二段級、三段級と続いているが、これはそもそも使用している金属も特殊過ぎで国宝扱いだから今のコウ達にはあまり関係ないところである。
コウとイッテツはそんな三大ブランドに並ぶ製品を作り出す事が出来る技術や才能を持ち合わせていたから、当たり前のように五等級のツルハシを作れているのだが、コウだけだと、超魔鉱鉄製に金属を鍛え上げても、イッテツに比べたら技術でかなり落ちるから三等級が精々というところ。
そこに職人として一流の技術を持つイッテツの仕上げが加わる事で上の等級になっていくのだ。
コウとイッテツは二人が組む事でお互いの足りない部分を補って三大ブランドとタメを張るレベルまで昇華しているのであった。
数日後。
コウはイッテツと鍛冶屋に籠って、ドワーフ達に注文された五等級、それもブランドの刻印なしで形も一般的なツルハシと変わらないという代物を作り上げてしまった。
「……コウの提案のまま作ってはみたが、これはこれで、アンバランスさが面白いな」
イッテツは仕上げを怠る事はないから、きっちり全て五等級に仕上げている。
「一見すると普通のツルハシ。でも、使用すると五等級。宣伝にはならいないですが、ドワーフのみんなが入手できるコストで提供できるのもいいですね」
コウもイッテツに納得しつつ、鉱山の仕事が捗るだろうと思うと、嬉しさに笑みがこぼれる。
「これから、他のドワーフからも同じのを注文されそうだが……、この価格だと利益はあまりでないんだよな。わははっ!」
イッテツがそう言うのも当然である。
原材料である金属の代金が大半を占め、人件費と技術的なものは沢山の注文がある事で成立している状態だからだ。
「でも、この村の発展に繋がるなら、トントンでも良い気がします」
コウが笑って応じると、
「違いない! わははっ!」
とイッテツも同意して笑うのであった。
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