転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

文字の大きさ
46 / 190

第46話 報告の報酬

しおりを挟む
 ララノアは、ドワーフ達が作った村、『エルダーロック』で入手した情報を雇い主であるダーマス伯爵のその部下に報告した。

 ドワーフの村に誘ってくれたコウの事もあるが、調べた情報を報告する事が雇い主との契約だからだ。

「何? 井戸水の問題を自分達で解消している、だと!?」

 ダーマス伯爵の部下は、ララノアから情報を聞いて信じられないという驚きを見せた。

「……はい」

 ララノアは報告をする自分に、罪悪感を感じながら返事をする。

「それに廃坑を改めて掘り始めているのか? ──……まだ、掘り残しが? ……いや、あそこは代々の領主様の指示のもと、徹底的に掘り尽くしてもう鉱石はほとんどないはず……。こっちは心配する必要はないはずだ……」

 部下はぶつぶつとつぶやき、上司であるダーマス伯爵にどう報告したものかと頭を悩ませる。

「あの……。報酬を頂けますか……?」

 ララノアは人族としての証明書を発行してもらえるという約束のもとに雇われたのだ。

 と言っても自分の立場では命令されたら断る理由もない立場ではあったが。

「あん? ──……ほらよ」

 ダーマス伯爵の部下は思案中だったから、ララノアに声をかけられても、まだいたのかという感じで懐から革袋を取り出しその中から、銀貨を一枚投げて渡す。

「え? これだけ……ですか?」

「なんだ、文句があるのか! 半端者のお前を拾ってやったのは俺だぞ?」

 ダーマス伯爵の部下は、高圧的にララノアを睨む。

「それは感謝しています。……でも約束では、私の人族の証明書の発行と小金貨一枚のはずでは……?」

 ララノアはショックを押し隠して冷静に言葉を返す。

「それはただの口約束だ。それにこの情報なら銀貨一枚がせいぜいだろう。それに、ダークエルフの血が流れているお前に人族の証明書なんて純血を好むダーマス伯爵が発行してくれるわけがないだろうが!」

「そんな……! 待ってください! 約束を守ってください! 私困ります!」

 不安を押し殺していたララノアは、ダーマス伯爵の部下の非情な言葉に冷静さを失い、すがった。

「ええい、触るな! 汚れるわ! 黙って銀貨一枚で満足しろ! そうでないと無礼を働いたと伯爵に報告するぞ!」

 ララノアは足蹴にされて転倒する。

「うううっ……」

 ララノアは自分の未来の為に必要であった証明書が手に入らないとわかって、ショックが隠せず、涙を見せた。

 証明書の為にこれまで、つらい思いを我慢してここまでやってきたのだ。

 ダークエルフ族からは一族の半端者と追い出され、人族からは異種族との混血児と蔑まれ、その立場が曖昧なままだった。

 証明書さえあれば、人族の中で胸を張れる人生が送れると思っていたから、約束を反故にされた事はかなりショックであった。

 それにコウからの誘いも、ララノアは結果的に報告する事で裏切ったようなものであったから自分には何も残っていない気がする。

 ララノアは絶望感に苛まれたまま、屋敷を追い出されるのであった。


 ララノアはとぼとぼと領都の街中を歩いていた。

 どこをどう歩いていたのかは覚えていない。

 気づいたら、街外れのスラム地域にあるみすぼらしい小さな自分の家へと到着していた。

「……私の人生は銀貨一枚だったのね……」

 ララノアは銀貨を握りしめると、我慢に我慢を重ね、いろんな伝を頼ってようやくダーマス伯爵の部下に雇われるところまで辿り着いたのに、こんな結果だった事にうなだれた。

 そしてその目からは涙が零れ落ちる。

 これまで、前を向いて心折れそうな場面でも自分を奮い立たせてきたが、コウの優しい誘いを断ってまで選んだ道がこれであったから、その絶望感は計り知れないものがあった。

「ララ、荷物をまとめて。とっととこの街からおさらばするよ」

 背後から声がした。

 最近、一番嬉しかった言葉をかけてくれた声だ。

 ララノアは泣きながらゆっくり振り返る。

 そこには、コウが立っていた。

「……コウ……」

 ララノアはその綺麗な顔をくしゃくしゃにして、少年のような姿のドワーフの名を口にする。

「ほら、早く荷物をまとめなって」

 コウはララに再度声をかける。

「……大した荷物、ヒック……、ない……」

 ララノアは泣きながら、それだけ答えた。

「ほら、泣いてないで。今日はララの新たな門出なんだ。笑顔で新居に帰るよ」

 コウはそう言うとララの手を取る。

「ヒック……。……いいの?」

 ララノアはしゃくりを上げながら、コウに聞き返す。

 ドワーフの村の情報を報告してしまったのだ。

 それは親切なコウを裏切ったようなものであったから、聞き返さずにはいられなかった。

「はははっ、もちろんだよ! それに、大事な情報はララにも伝えてなかったから、気に病む必要はないよ?」

 コウは笑ってララノアの背中を摩る。

「それはそれで、酷い……、よー……!」

 ララノアは泣きながらコウを責める。

 もちろん、コウの優しさに冗談でツッコミを入れたのだが、泣きながらだから、はたから見ると責めているようにしか聞こえない。

「はははっ。ごめん、ごめん。じゃあ、行こうか!」

 コウはそう言うと、まだ、大泣きしているララノアの手を引いて、新居となるエルダーロックのわが家に向けて二人で帰路につくのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

処理中です...