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第25話 続・一騎打ち
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コウは先の戦いでは、領兵達の盾を紙のように一閃したり、男の戦士を真っ二つにしたが、それは装備自体、大した事がなかったからでもある。
コウの戦斧は自身が大量の魔力を注ぎ込んで作った超魔鉱鉄製の特別品だ。
その切れ味は、ドワーフの戦斧の中でも超一級品である事は、一流の戦士である『太っちょイワン』が欲しがった事からもわかるというものである。
そんな物を作り出したコウから見ても、領兵隊長の持つ盾や剣は一流の品である事がすぐにわかった。
あちらも魔鉱鉄製のブランド品だ。
さすがにコウはブランド品とは縁のないドワーフ人生だったから、その辺りについては全く詳しくないが、盾の表面にある剣とそれに絡みつく茨の紋章には見覚えがある。
確か武器・防具で有名な老舗ブランド『アーマード』商会のものだ。
以前、他のドワーフが、マルタの街の人族相手の鍛冶屋通りでガラス越しに『アーマード』の戦斧を羨ましそうに見ていたのを思い出した。
「ちびモグラ! その戦斧でこの『アーマード』の盾と剣を破壊できるかやってみろ!」
隊長はコウを蔑称で呼んで煽ると、自慢げに剣で盾を叩いて威圧してきた。
だがコウも馬鹿ではない。
先程の領兵の盾は鉄で補強もしていない安い木製だった。
真っ二つにした男の戦士は革鎧。
だが、さすがに一流ブランド『アーマード』の盾を真っ二つにする自信はコウにもなかったから、挑発には乗れないし、時間稼ぎの為にもこちらは相手にビビっていると思わせた方がいい。
コウは戦斧を構えて迎撃態勢を取った。
「ふん! さすがにビビったか! お前達、私がこいつを始末したら、他のドワーフの捕縛と接収作業はしっかりやれよ!?」
隊長はにわかに余裕が持てたのか、領兵達に発破をかける。
あれ? 今、隙だらけだけど、これ罠?
コウは隊長があまりに隙だらけだったので、時間稼ぎ云々の前に倒せるのではないかと、判断した。
だから体も瞬間的に動く。
コウはその大きな戦斧を振りかぶってジャンプすると隊長に叩き落とす。
だが、隊長はそれは計算済みであった。
「卑怯なドワーフらしい!」
と応じながら盾を構えて防御姿勢を取る。
コウは引くに引けないから、とりあえず盾に戦斧を振り下ろした。
やはり、ブランド『アーマード』の盾である。
コウ自慢の戦斧に防がれる手応えがあった。
だが、それも一瞬の事で、戦斧は盾を両断し、その刃は隊長の頭部に叩き込まれる。
隊長は鉄製の兜も装着していたから、兜と接触した戦斧は火花を散らす。
だが、コウの馬鹿力も相まって戦斧は鉄製の兜を割り、頭部を両断して胴体の鉄製の鎧に食い込んだところで止まった。
これには、隊長の勝利を応援していた領兵達、そして、鉱山責任者ダンも、一瞬、呆然とし、すぐにその残酷な結果を理解して凍り付く。
「た、隊長が一撃……?」
「ば、馬鹿な……。あの盾は日頃自慢していた『アーマード』製だぞ……!?」
「隊長が死んだ……?」
領兵達は目の前の厳然たる事実を目撃しているはずなのに、理解が追いつかない。
その間にコウは隊長の鎧に食い込んだままの戦斧を抜く為に鎧に足をかけると、力任せに引っこ抜いた。
少年のような姿のドワーフであるコウのその行為を見て、ようやく領兵達は見る見るうちに青ざめる。
「隊長を一撃で倒すような奴に勝てるわけがねぇ……」
「だが、みんなで斬りかかればもしかしたら……」
「重装備隊の盾を横一線で両断したの見てなかったのか!? あのドワーフの戦斧にかかれば、俺達なんてその辺の小枝を折るように粉砕されるぞ!」
領兵の中にはまだ戦う気力がある者もいたが、コウの圧倒的な力の前にほとんどは戦意喪失しつつあった。
「さあ、次は誰が相手だ!? 僕はまだ、全然疲れていないぞ!」
コウは領兵の反応を見て、戦意を完全に挫くべく、そう告げると、戦斧をまた一振りして突風を起こして見せた。
その強い風に一番前の領兵達は「ひっ!」と悲鳴を上げる。
「う、狼狽えるな! 敵はただのドワーフ一匹だ! 日頃の訓練を思い出せ! 全員で掛かれば、あっという間に倒せるぞ!」
鉱山責任者のダンが、この流れを変えるべく、隊長を失った領兵達を激励した。
コウはここが勝負どころと見た。
そう、この鉱山責任者のダンを討ち取れば、流れをこちらに来る。
そうなれば、逃避行中のドワーフ達は安全に南の領境まで退避できる時間がかなり稼げるはずだ。
コウはそう思案すると、戦斧を左手に持ち替え、魔法収納から中古のスコップを取り出す。
そして、右手に握ったスコップを振りかぶり、領兵達を煽る鉱山責任者のダンに迷う事なく投げつけた。
スコップは矢のような早さで真っ直ぐダンの胸元に飛んでいくと、サクッと突き刺さり、ダンは背にした大木に釘付けになり、その場で絶命する。
領兵達はダンの言葉に気持ちを切り替えようとしていた者もいたが、そのダンが一瞬で屍になった事で、恐慌状態に陥った。
「隊長もダンさんもやられちまった!」
「に、逃げろ!」
「「「わー!」」」
二百名もの領兵達は、叫ぶと倒木で塞がれている道に殺到する。
みんななりふり構わず、倒木を登って越えようとするから、一人、二人と転げ落ちる。
そして、その上を他の領兵達が踏みつけて逃げようとするものだから、怪我はおろか死傷者が出る有様であった。
コウはそれを戦斧を持って仁王立ちしたまま静観し、生存者が一兵残らず退散するのをひたすら待つ。
そして、領兵の死傷者が複数残された状態になってようやく、
「……僕も退散しないと」
と緊張が切れたのかコウは疲れたようにぽつりと一言漏らすのであった。
コウの戦斧は自身が大量の魔力を注ぎ込んで作った超魔鉱鉄製の特別品だ。
その切れ味は、ドワーフの戦斧の中でも超一級品である事は、一流の戦士である『太っちょイワン』が欲しがった事からもわかるというものである。
そんな物を作り出したコウから見ても、領兵隊長の持つ盾や剣は一流の品である事がすぐにわかった。
あちらも魔鉱鉄製のブランド品だ。
さすがにコウはブランド品とは縁のないドワーフ人生だったから、その辺りについては全く詳しくないが、盾の表面にある剣とそれに絡みつく茨の紋章には見覚えがある。
確か武器・防具で有名な老舗ブランド『アーマード』商会のものだ。
以前、他のドワーフが、マルタの街の人族相手の鍛冶屋通りでガラス越しに『アーマード』の戦斧を羨ましそうに見ていたのを思い出した。
「ちびモグラ! その戦斧でこの『アーマード』の盾と剣を破壊できるかやってみろ!」
隊長はコウを蔑称で呼んで煽ると、自慢げに剣で盾を叩いて威圧してきた。
だがコウも馬鹿ではない。
先程の領兵の盾は鉄で補強もしていない安い木製だった。
真っ二つにした男の戦士は革鎧。
だが、さすがに一流ブランド『アーマード』の盾を真っ二つにする自信はコウにもなかったから、挑発には乗れないし、時間稼ぎの為にもこちらは相手にビビっていると思わせた方がいい。
コウは戦斧を構えて迎撃態勢を取った。
「ふん! さすがにビビったか! お前達、私がこいつを始末したら、他のドワーフの捕縛と接収作業はしっかりやれよ!?」
隊長はにわかに余裕が持てたのか、領兵達に発破をかける。
あれ? 今、隙だらけだけど、これ罠?
コウは隊長があまりに隙だらけだったので、時間稼ぎ云々の前に倒せるのではないかと、判断した。
だから体も瞬間的に動く。
コウはその大きな戦斧を振りかぶってジャンプすると隊長に叩き落とす。
だが、隊長はそれは計算済みであった。
「卑怯なドワーフらしい!」
と応じながら盾を構えて防御姿勢を取る。
コウは引くに引けないから、とりあえず盾に戦斧を振り下ろした。
やはり、ブランド『アーマード』の盾である。
コウ自慢の戦斧に防がれる手応えがあった。
だが、それも一瞬の事で、戦斧は盾を両断し、その刃は隊長の頭部に叩き込まれる。
隊長は鉄製の兜も装着していたから、兜と接触した戦斧は火花を散らす。
だが、コウの馬鹿力も相まって戦斧は鉄製の兜を割り、頭部を両断して胴体の鉄製の鎧に食い込んだところで止まった。
これには、隊長の勝利を応援していた領兵達、そして、鉱山責任者ダンも、一瞬、呆然とし、すぐにその残酷な結果を理解して凍り付く。
「た、隊長が一撃……?」
「ば、馬鹿な……。あの盾は日頃自慢していた『アーマード』製だぞ……!?」
「隊長が死んだ……?」
領兵達は目の前の厳然たる事実を目撃しているはずなのに、理解が追いつかない。
その間にコウは隊長の鎧に食い込んだままの戦斧を抜く為に鎧に足をかけると、力任せに引っこ抜いた。
少年のような姿のドワーフであるコウのその行為を見て、ようやく領兵達は見る見るうちに青ざめる。
「隊長を一撃で倒すような奴に勝てるわけがねぇ……」
「だが、みんなで斬りかかればもしかしたら……」
「重装備隊の盾を横一線で両断したの見てなかったのか!? あのドワーフの戦斧にかかれば、俺達なんてその辺の小枝を折るように粉砕されるぞ!」
領兵の中にはまだ戦う気力がある者もいたが、コウの圧倒的な力の前にほとんどは戦意喪失しつつあった。
「さあ、次は誰が相手だ!? 僕はまだ、全然疲れていないぞ!」
コウは領兵の反応を見て、戦意を完全に挫くべく、そう告げると、戦斧をまた一振りして突風を起こして見せた。
その強い風に一番前の領兵達は「ひっ!」と悲鳴を上げる。
「う、狼狽えるな! 敵はただのドワーフ一匹だ! 日頃の訓練を思い出せ! 全員で掛かれば、あっという間に倒せるぞ!」
鉱山責任者のダンが、この流れを変えるべく、隊長を失った領兵達を激励した。
コウはここが勝負どころと見た。
そう、この鉱山責任者のダンを討ち取れば、流れをこちらに来る。
そうなれば、逃避行中のドワーフ達は安全に南の領境まで退避できる時間がかなり稼げるはずだ。
コウはそう思案すると、戦斧を左手に持ち替え、魔法収納から中古のスコップを取り出す。
そして、右手に握ったスコップを振りかぶり、領兵達を煽る鉱山責任者のダンに迷う事なく投げつけた。
スコップは矢のような早さで真っ直ぐダンの胸元に飛んでいくと、サクッと突き刺さり、ダンは背にした大木に釘付けになり、その場で絶命する。
領兵達はダンの言葉に気持ちを切り替えようとしていた者もいたが、そのダンが一瞬で屍になった事で、恐慌状態に陥った。
「隊長もダンさんもやられちまった!」
「に、逃げろ!」
「「「わー!」」」
二百名もの領兵達は、叫ぶと倒木で塞がれている道に殺到する。
みんななりふり構わず、倒木を登って越えようとするから、一人、二人と転げ落ちる。
そして、その上を他の領兵達が踏みつけて逃げようとするものだから、怪我はおろか死傷者が出る有様であった。
コウはそれを戦斧を持って仁王立ちしたまま静観し、生存者が一兵残らず退散するのをひたすら待つ。
そして、領兵の死傷者が複数残された状態になってようやく、
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