19 / 190
第19話 楽しみの先延ばし
しおりを挟む
コウの活躍で、契約内容を一部変更する事に成功したドワーフ達はリーダーであるヨーゼフが中心になって、ドワーフ達の新天地になるであろう土地への先遣隊の選別に入る事になった。
話し合いの場所は鉱山の街であるマルタ郊外にあるドワーフ居住区の一角にある広場だ。
「やはり、ここはリーダーであるヨーゼフが先にみんなを率いて指揮してもらうしかないだろう?」
「いや、こっちの事も考えないといけない事が多いぞ? 誰がこの街の長に次回以降の契約を断りつつ、この居住区の土地の整理をするんだ? うまく調整できる人物じゃないと揉めるぞ」
「それなら、言葉数は少ないが、リーダーの側近でもある『太っちょイワン』に先遣隊を任せていいんじゃないか? 細かい部分については補佐に誰か付ければいいだろ」
「……そうだな。新天地は城壁もなく魔物もいる土地だから、イワンが先に行って安全を確保してくれるとありがたいかもしれん。第二陣以降は、引っ越しの準備が出来た者から隊を組んで送り出せばいい。ヨーゼフにはリーダーとして事後処理や女子供を新天地に導いてもらうというのが、一番じゃないか?」
主だったドワーフ達がそれぞれ意見を出し合う。
その間、ヨーゼフは黙ってみんなの話を聞いている。
ちなみにコウは、広場の一番端っこで、この話を聞いていた。
みんなの話す場所から少し離れているので、聞き逃さないように必死だ。
「……わかった。新天地への先遣隊はイワンに任せよう。補佐には土地購入の際に俺に同行していた連中を付ける。──イワン。あっちに着いたら、まずはやる事はわかっているな?」
ヨーゼフは意見を聞き終わって、ようやく口を開いた。
「……ああ。みんなの住むところの確保だな? 資材調達はみんなに任せて俺は力仕事と周辺の魔物を討伐してみんなを守る」
『太っちょイワン』はコウを除けば、一番の力持ちであり、戦斧を持たせたら、一番の戦士でもあったから、誰もが頼りにしており、この人選は間違っていないだろう。
「ああ、頼む。──それではみんな、ここに残りたい者がいたら、自由にしてくれ、強制はしない。こちらに友人、知人がいる者もいるだろうし、慣れ親しんだ土地を離れたくない者もいるだろう。そして、何もない新天地に不安を感じる者もいるだろう。残るかどうかの判断は各自に任せる。──だが、ドワーフだからと差別され、安い給料で働かされた日々も、君達の判断次第でもうすぐおさらばできる。数か月後、生活は今より厳しくなるかもしれないが、誰に気兼ねする事なく生きられる土地で自由に暮らそうじゃないか!」
ヨーゼフが広場に集まったドワーフ達に演説する。
すると、
「そうだ! 新天地で自由に生きよう!」
「俺はヨーゼフを信じるぞ!」
「私もよ!」
「新天地でドワーフが差別されない場所を作ろう!」
と色んな前向きな声が上がった。
コウも同じドワーフとして差別されてきたから、この土地から解放されるのは嬉しい。
そういう意味では新天地は、バラ色の人生しかないと思えたから、コウは先遣隊に希望するつもりでいるのであった。
「……と夢に見ていた時期もありました……」
コウは少し落ち込んでいた。
それは、先遣隊メンバーから漏れてしまったからだ。
集会ではその後、先遣隊メンバーの選出が行われたのだが、大体は戦士としての実績がある者や、職人、大工仕事ができる者など技術を持っている者が中心に選ばれていった。
コウはイワン以上の力持ちではあるが、残念ながら技術者としてドワーフ内では実績が皆無だったから、選ばれなかったのである。
とはいえ、コウには怪力以外にも、魔法収納持ちだから、役に立てそうだが、それについてはまだ、みんなに秘密にしていたので、自分の有用性をアピールする事が出来ないでいた。
「まあ、焦るなコウ。俺達も先遣隊からは漏れた口だが、第二陣以降にも役目はあるぞ。荷物を運ぶ力持ちも必要になってくるし、それにリーダーのヨーゼフが指名されたように最後は事後処理をする者達が必要だ。最後の隊が女子供も多くなるだろうからその護衛も必要だしな」
髭を剃ってつるつるした顔のダンカンが、落ち込んでいるコウの背中を叩いて励ました。
他の髭無しドワーフ達もダンカンの言葉に頷いて、コウを励ます。
そして、ダンカンは続ける。
「もしかしたら、ヨーゼフが敢えてお前の事は先遣隊から外したのかもしれないな」
「え?」
コウは思わず聞き返した。
「考えてみろ。イワンよりも力持ちのお前が戦力でないはずがないだろう? それに、この街のドワーフのほとんどが、引っ越しするとなったら、大事なのは、先遣隊と事後処理をする最後の方まで残るメンバーだろう。先遣隊にイワンとコウを一緒にしたら、最後が不安にならないか? 問題が起きた時に対応できるのがヨーゼフだけで、腕っぷしの強い連中が残っていなかったら、最後に移動する大多数の女子供が危険になるかもしれない。そうならない為に、コウは切り札として最後まで残る事になるかもしれないぞ」
ダンカンはコウを励ます為に大袈裟にそう言ったのであったが、これが的中して先遣隊が旅立ってから続々と第二陣、第三陣と出発する中、コウの名前が呼ばれる事はないのであった。
「……本当に、選ばれないなぁ……。ダンカンさんの言う通り、頼られているのか、忘れられているのか……。って、ダンカンさん達髭無し集団も、選ばれていない事を考えると問題児扱いで避けられている気がしてきた……!」
コウはいつでも旅立てる準備は出来ていたのだが、ドワーフの数が毎回減っていく集会で、ポツンと一人端っこで呼ばれるのを待っているのであった。
「自分で言っておいてなんだが、ここまで来るとコウ、俺達も含め、他のドワーフ達から髭剃りアピールが問題視されて、後回しにされている気がしてきたぜ……」
集会の最中、ダンカンがコウの横にやって来てそう漏らした。
ダンカンはコウを励ます為に言った事であったが、自分達まで名前を呼ばれない状況に不安を覚えていてそう漏らした。
「ご迷惑おかけしてすみません……」
コウは自分の為に色々してくれているダンカンと髭無しドワーフの友人達にお詫びする。
「いや、呼ばれないのは仕方がないな! 俺も仲間のドワーフ達がこの街からかなり減って不安を覚えちまったが、俺達も新天地に向かうんだ、楽しみが少し先に延びたと思って待つとしようか! わははっ!」
ダンカンは改めてコウを励ますと、笑うのだった。
話し合いの場所は鉱山の街であるマルタ郊外にあるドワーフ居住区の一角にある広場だ。
「やはり、ここはリーダーであるヨーゼフが先にみんなを率いて指揮してもらうしかないだろう?」
「いや、こっちの事も考えないといけない事が多いぞ? 誰がこの街の長に次回以降の契約を断りつつ、この居住区の土地の整理をするんだ? うまく調整できる人物じゃないと揉めるぞ」
「それなら、言葉数は少ないが、リーダーの側近でもある『太っちょイワン』に先遣隊を任せていいんじゃないか? 細かい部分については補佐に誰か付ければいいだろ」
「……そうだな。新天地は城壁もなく魔物もいる土地だから、イワンが先に行って安全を確保してくれるとありがたいかもしれん。第二陣以降は、引っ越しの準備が出来た者から隊を組んで送り出せばいい。ヨーゼフにはリーダーとして事後処理や女子供を新天地に導いてもらうというのが、一番じゃないか?」
主だったドワーフ達がそれぞれ意見を出し合う。
その間、ヨーゼフは黙ってみんなの話を聞いている。
ちなみにコウは、広場の一番端っこで、この話を聞いていた。
みんなの話す場所から少し離れているので、聞き逃さないように必死だ。
「……わかった。新天地への先遣隊はイワンに任せよう。補佐には土地購入の際に俺に同行していた連中を付ける。──イワン。あっちに着いたら、まずはやる事はわかっているな?」
ヨーゼフは意見を聞き終わって、ようやく口を開いた。
「……ああ。みんなの住むところの確保だな? 資材調達はみんなに任せて俺は力仕事と周辺の魔物を討伐してみんなを守る」
『太っちょイワン』はコウを除けば、一番の力持ちであり、戦斧を持たせたら、一番の戦士でもあったから、誰もが頼りにしており、この人選は間違っていないだろう。
「ああ、頼む。──それではみんな、ここに残りたい者がいたら、自由にしてくれ、強制はしない。こちらに友人、知人がいる者もいるだろうし、慣れ親しんだ土地を離れたくない者もいるだろう。そして、何もない新天地に不安を感じる者もいるだろう。残るかどうかの判断は各自に任せる。──だが、ドワーフだからと差別され、安い給料で働かされた日々も、君達の判断次第でもうすぐおさらばできる。数か月後、生活は今より厳しくなるかもしれないが、誰に気兼ねする事なく生きられる土地で自由に暮らそうじゃないか!」
ヨーゼフが広場に集まったドワーフ達に演説する。
すると、
「そうだ! 新天地で自由に生きよう!」
「俺はヨーゼフを信じるぞ!」
「私もよ!」
「新天地でドワーフが差別されない場所を作ろう!」
と色んな前向きな声が上がった。
コウも同じドワーフとして差別されてきたから、この土地から解放されるのは嬉しい。
そういう意味では新天地は、バラ色の人生しかないと思えたから、コウは先遣隊に希望するつもりでいるのであった。
「……と夢に見ていた時期もありました……」
コウは少し落ち込んでいた。
それは、先遣隊メンバーから漏れてしまったからだ。
集会ではその後、先遣隊メンバーの選出が行われたのだが、大体は戦士としての実績がある者や、職人、大工仕事ができる者など技術を持っている者が中心に選ばれていった。
コウはイワン以上の力持ちではあるが、残念ながら技術者としてドワーフ内では実績が皆無だったから、選ばれなかったのである。
とはいえ、コウには怪力以外にも、魔法収納持ちだから、役に立てそうだが、それについてはまだ、みんなに秘密にしていたので、自分の有用性をアピールする事が出来ないでいた。
「まあ、焦るなコウ。俺達も先遣隊からは漏れた口だが、第二陣以降にも役目はあるぞ。荷物を運ぶ力持ちも必要になってくるし、それにリーダーのヨーゼフが指名されたように最後は事後処理をする者達が必要だ。最後の隊が女子供も多くなるだろうからその護衛も必要だしな」
髭を剃ってつるつるした顔のダンカンが、落ち込んでいるコウの背中を叩いて励ました。
他の髭無しドワーフ達もダンカンの言葉に頷いて、コウを励ます。
そして、ダンカンは続ける。
「もしかしたら、ヨーゼフが敢えてお前の事は先遣隊から外したのかもしれないな」
「え?」
コウは思わず聞き返した。
「考えてみろ。イワンよりも力持ちのお前が戦力でないはずがないだろう? それに、この街のドワーフのほとんどが、引っ越しするとなったら、大事なのは、先遣隊と事後処理をする最後の方まで残るメンバーだろう。先遣隊にイワンとコウを一緒にしたら、最後が不安にならないか? 問題が起きた時に対応できるのがヨーゼフだけで、腕っぷしの強い連中が残っていなかったら、最後に移動する大多数の女子供が危険になるかもしれない。そうならない為に、コウは切り札として最後まで残る事になるかもしれないぞ」
ダンカンはコウを励ます為に大袈裟にそう言ったのであったが、これが的中して先遣隊が旅立ってから続々と第二陣、第三陣と出発する中、コウの名前が呼ばれる事はないのであった。
「……本当に、選ばれないなぁ……。ダンカンさんの言う通り、頼られているのか、忘れられているのか……。って、ダンカンさん達髭無し集団も、選ばれていない事を考えると問題児扱いで避けられている気がしてきた……!」
コウはいつでも旅立てる準備は出来ていたのだが、ドワーフの数が毎回減っていく集会で、ポツンと一人端っこで呼ばれるのを待っているのであった。
「自分で言っておいてなんだが、ここまで来るとコウ、俺達も含め、他のドワーフ達から髭剃りアピールが問題視されて、後回しにされている気がしてきたぜ……」
集会の最中、ダンカンがコウの横にやって来てそう漏らした。
ダンカンはコウを励ます為に言った事であったが、自分達まで名前を呼ばれない状況に不安を覚えていてそう漏らした。
「ご迷惑おかけしてすみません……」
コウは自分の為に色々してくれているダンカンと髭無しドワーフの友人達にお詫びする。
「いや、呼ばれないのは仕方がないな! 俺も仲間のドワーフ達がこの街からかなり減って不安を覚えちまったが、俺達も新天地に向かうんだ、楽しみが少し先に延びたと思って待つとしようか! わははっ!」
ダンカンは改めてコウを励ますと、笑うのだった。
22
あなたにおすすめの小説
辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる