転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

文字の大きさ
12 / 190

第12話 力自慢

しおりを挟む
 マルタの鉱山街のドワーフのリーダーであるヨーゼフと信頼関係を結んだコウは、それからは数か月後の引っ越しに備えて、コウ自身も色々と準備を始めた。

 自分が選ばれるかはわからないが、一週間後には第一陣が新天地へ出発するらしく、荷馬車の確保や生活用品、食料なども大量に用意する為に多くのドワーフが動き始めていた。

 第一陣は住む場所の整地や家の建設などから始めないといけないから、材木の仕入れなども途中で行って現地に赴くらしく、かなり大変である事は話を聞いていてわかった。

 ちなみにコウはつい最近まで『半人前』だったので戦力としては考えられていないから、第一陣に選ばれる事はないだろう。

 そうなるとコウは今できる事をやるしかない。

 それは、鉱山での穴掘り、そして、バイト先である鍛冶屋でドワーフ達の為の道具一式を作る事だ。

 鍛冶屋のドワーフであるイッテツ曰く、

「悔しいがお前が打った道具は明らかにブランド品と遜色がないものに仕上がっている。だから、新天地に向かう仲間達の為にも質の良い道具を打つ事で仲間に貢献しないとな」

 という最高の褒め言葉をもらっていた。

 実際、ツルハシやスコップ、金槌に杭など鉱山ドワーフにとって大事な道具の注文は急増していたから、最近では鉱山仕事よりも鍛冶屋仕事に入る日を増やしているくらいだ。

 そして、なにより、特に増えている注文があった。

 それは武器や防具の新調と、修繕である。

 新天地は当然ながらゼロからのスタートであり、このマルタの街のように城壁に守られていないから、身を守るのは自分達しかいない。

 だからこそ、ドワーフ達は鍛冶屋に殺到しているのであった。

「最近は道具作りもかなりうまくなったし、コウ、お前、武器も叩いてみるか?」

 イッテツは仲間のドワーフが持ち込んだ戦斧の修繕を行いながら、コウに新たな仕事を促した。

「いいんですか!?」

 コウは信頼されている証だから思わず聞き返すが、やる気十分だ。

「ああ、やってみろ」

 イッテツはそう言うと、今や一番弟子として信頼するコウに注文の入っていた戦斧作りを任せるのであった。


 コウは前世の知識を利用して、これまでにない戦斧を作る事にした。

 通常この異世界では、溶かした鉄を型に流し込み、それを叩いて成形する。

 そして、研いで仕上げるというのが、簡単ではあるが一般的であった。

 だがコウは刀作りと同じように戦斧を三重構造で違う硬さの金属を組み合わせ魔力を込めて鍛錬するというのを以前から準備していてそのやり方に挑戦したのだ。

 コウは叩いて鍛えてあった超魔鉱鉄を中に入れる事で外から見ても普通の鉄にしか見えないというものを作り出そうとしていた。

 イッテツはコウの狙いがわかったのか、驚いた様子でチラチラと様子を伺っていたが、自分の仕事がおろそかになるのでそれもすぐになくなった。

 しばらくコウは集中して自前の金槌で戦斧の原型を叩いて鍛えていたが、一仕事終えて、ふとイッテツがその様子を見て慌てて止めに入った。

「おい、待て待て待て! それ以上魔力を込めてお前の馬鹿力で叩くと超一級品のものが仕上がっちまうだろう!」

 イッテツが止めた時にはすでに遅かった。

 コウは焼刃土を塗る「土置き」作業をしてから乾燥させ、もう一度全体を焼いて焼き入れをして、仕上げまでしていたから、イッテツはそれを確認するとそこには立派な超魔鉱鉄製の戦斧が出来上がっていたのである。

「……遅かったか。まあいい。それもお前用にしろ。あとはこっちで仕上げるから、今度は控えめに叩いて魔鉱鉄製のものを作るんだ」

 イッテツはコウが叩いて鍛えた戦斧に少しうっとり気味に感心しながら受け取る。

「すみません、親方」

 つい頑張り過ぎたコウは申し訳なさそうに謝ると今度は魔力控えめ、力も抑えて魔鉱鉄製の戦斧を鍛錬するのであった。

 コウが数本の戦斧を鍛え終わる頃、イッテツが預かって仕上げていたコウ専用戦斧が出来上がった。

「……ふー。こんな出来の戦斧、初めてだぞ……。刃の部分がいい具合に反って切れ味も凄そうだ。コウ、お前、こんな作り方、どこで学んだんだ?」

 イッテツは磨き上げた戦斧の頭に店の奥にしまっていた戦斧用の柄部分を付けてコウに渡す。

「誰からか聞いた事を覚えていたので試してみたんです」

 コウは前世の知識とは言えないので、うろ覚えとばかりに応じる。

「それにしては準備よく焼き入れ用の土まで用意しやがって、準備がよすぎるだろう。あんなものどこから見つけてきやがったんだ。──まあ、いい。俺も職人としてこんないい作品に携わる事が出来たのは自慢になる。──だが、お前、それ、振り回せるのか? 元はドワーフの中でも力自慢で有名な『太っちょイワン』用の大きさだから、大分重いだろ?」

 イッテツはコウに渡した戦斧がコウの大きさに見合っていないから心配した。

「そうですね……」

 コウはそう言うと、右手一本でその戦斧を握って軽く「ブン!」と振ってみた。

 すると熱気溢れる鍛冶屋内に風が起きてイッテツの髭が勢いよく靡く。

「……問題なさそうだな。お前も一人前のドワーフだからこれを振り回せば、舐められる事もないだろうさ。わははっ!」

 イッテツはコウの馬鹿力具合に呆れると、笑うのであった。

 そんなやり取りをしているところに、ドワーフにしては頭一つ分は大きなドワーフらしき男が入ってきた。

「イッテツさん、俺の頼んだもの、そろそろできたかい?」

 その大きなドワーフは大きなお腹が特徴的で、髪色と目は茶色で髭は当然立派に生えている。

「おお、イワン。丁度来たな。こっちがお前の注文の品だ。仕上げがまだだから、明日また来てくれ」

 イッテツはそう言うと、コウが力を控えめに叩いて作った戦斧を指差して答えた。

 イワンと呼ばれた太っちょドワーフは、コウの手に握られている見事な戦斧を見て、

「あれは駄目なのか?」

 と、指差して聞く。

「あれはコウが作ったコウの物だからな。駄目だな」

 イッテツはコウに戦斧を持って裏に回るように手で合図しながら答えた。

「『半人前』のコウが、そんな立派なもの持っていても使い道がないんじゃないか?金なら追加で払うぞ?」

 イワンはコウの物が余程良いものだと気づいたのか、引く様子がない。

「待ってくれ、イワン。こいつはもう、一人前のドワーフだ。見た目に反してとても力が強いし、いい仕事をする。最近では鉱山でもとんでもなく硬い岩盤を掘って、現場を驚かせているらしいしな。だから、『半人前』で呼ぶのは止めてやってくれ」

 イッテツは認めた弟子が『半人前』と呼ばれるのを嫌って訂正を求めた。

「……そんなに力が強いのなら、俺が試してみよう。ドワーフならわかるよな?」

 太っちょイワンはそう言うと、傍にあった鉱石の入った樽を片手で軽々と持ち上げひっくり返すと、コウとの間に置いてみせた。

「?」

 コウはイッテツとイワンの間で視線を往復させてその目を泳がせると困惑する。

「腕相撲だ。『半人前』のコウ。俺とその戦斧をかけて勝負だ」

 イワンはそう言うと樽の上にその太い腕をドンと置くのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...