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125おっさんオメガと押せ押せ運命の番
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35歳のおっさんオメガは、運命の番と出会った。
駅の通路で柔和なイケメンと、ばちっと目があう。番だ……!
「……行き先はどちらで?」
「反対側ですね」
「それじゃ」
「待ってください、せめて連絡先の交換を!」「俺、運命とか信じないんで。じゃあ」
彼もモサいおっさんが運命じゃ可哀想だと、せっかく気を使ったのに、追いかけてくる。
「待って、僕の運命の人!」
走って巻いた。
「どうすっかな、ここ通勤路なのに……」
しばらく一本早めの電車に乗ることにした。
ひと月は平和だったのに、気が抜けた頃に朝寝坊をし、前と同じ時間の電車に乗る羽目になった。
会いませんように。願いは天に届かなかった。
「あ」
ガッチリ腕を掴まれる。
「うわ、どうも……離してくれません?」
「連絡先、交換してください」
圧に負けて、交換することになった。
「僕、運命の番と一生仲良く過ごすのが夢だったんですよ」
「俺の方が確実に先に死ぬぞ、年齢的に」
「そんな悲しいこと言わないでくださいよ! 絶対幸せにしますから、長生きしてください!」
アルファは俺の近くで過ごすため、わざわざ仕事を変えたらしい。ドン引きだ。
「お前、絶対後悔すんぞ……」
「しませんよ」
前途ある若者の未来を奪いたくない、というかそもそも連れあいとかいらない。
わざとおっさんらしいデリカシーのなさや、人に引かれがちなお節介な部分を、全面に押し出してみたのに、アルファは幻滅する気配がない。
「飾らない姿を見せてもらえて、気を許されてるみたいで嬉しいです。貴方に心配されるのは心地いい」
「あのな、俺の顔をよく見てみろ? もう目尻に皺ができはじめてんの、わかる? オッサンは体力ないからお前の面倒見きれんよ」
「大丈夫です、僕が面倒見ますから! もちろん、夜のほうも無理がないよう調整します」
「なんの心配してんの⁉︎」
毎日のように押しかけられていたが、流石に発情期の時期は会いたくなさすぎる。
仕事が忙しいと嘘をついて、家にこもって耐えていたのに、アルファは玄関先まで来た。
「中には入りませんから。差し入れ、玄関ドアにかけておきます。貴方が辛い時に何もできないなんて、耐えられなくて来てしまいました」
「……馬鹿だな」
「すいません」
「重すぎ」
「愛が深いと言ってくださいよ」
負担にならない程度に話した後、見舞いの品を確認した。
見事に好物ばかりで、火照った顔が更に赤くなる。
「あー……駄目だろ、孤独なおっさんをこんなに甘やかしちゃ」
その日、初めて彼を思い浮かべながら慰めた。
発情期が明けたはずなのに、真っ赤に頬を染めたままのおっさんオメガが、長らく待たせていた告白の返事をするまで、あと数日。
駅の通路で柔和なイケメンと、ばちっと目があう。番だ……!
「……行き先はどちらで?」
「反対側ですね」
「それじゃ」
「待ってください、せめて連絡先の交換を!」「俺、運命とか信じないんで。じゃあ」
彼もモサいおっさんが運命じゃ可哀想だと、せっかく気を使ったのに、追いかけてくる。
「待って、僕の運命の人!」
走って巻いた。
「どうすっかな、ここ通勤路なのに……」
しばらく一本早めの電車に乗ることにした。
ひと月は平和だったのに、気が抜けた頃に朝寝坊をし、前と同じ時間の電車に乗る羽目になった。
会いませんように。願いは天に届かなかった。
「あ」
ガッチリ腕を掴まれる。
「うわ、どうも……離してくれません?」
「連絡先、交換してください」
圧に負けて、交換することになった。
「僕、運命の番と一生仲良く過ごすのが夢だったんですよ」
「俺の方が確実に先に死ぬぞ、年齢的に」
「そんな悲しいこと言わないでくださいよ! 絶対幸せにしますから、長生きしてください!」
アルファは俺の近くで過ごすため、わざわざ仕事を変えたらしい。ドン引きだ。
「お前、絶対後悔すんぞ……」
「しませんよ」
前途ある若者の未来を奪いたくない、というかそもそも連れあいとかいらない。
わざとおっさんらしいデリカシーのなさや、人に引かれがちなお節介な部分を、全面に押し出してみたのに、アルファは幻滅する気配がない。
「飾らない姿を見せてもらえて、気を許されてるみたいで嬉しいです。貴方に心配されるのは心地いい」
「あのな、俺の顔をよく見てみろ? もう目尻に皺ができはじめてんの、わかる? オッサンは体力ないからお前の面倒見きれんよ」
「大丈夫です、僕が面倒見ますから! もちろん、夜のほうも無理がないよう調整します」
「なんの心配してんの⁉︎」
毎日のように押しかけられていたが、流石に発情期の時期は会いたくなさすぎる。
仕事が忙しいと嘘をついて、家にこもって耐えていたのに、アルファは玄関先まで来た。
「中には入りませんから。差し入れ、玄関ドアにかけておきます。貴方が辛い時に何もできないなんて、耐えられなくて来てしまいました」
「……馬鹿だな」
「すいません」
「重すぎ」
「愛が深いと言ってくださいよ」
負担にならない程度に話した後、見舞いの品を確認した。
見事に好物ばかりで、火照った顔が更に赤くなる。
「あー……駄目だろ、孤独なおっさんをこんなに甘やかしちゃ」
その日、初めて彼を思い浮かべながら慰めた。
発情期が明けたはずなのに、真っ赤に頬を染めたままのおっさんオメガが、長らく待たせていた告白の返事をするまで、あと数日。
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