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117首を落とされたから好きに生きる話
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目が覚めたら、切られたはずの首がくっついていた。
「ここは……僕の部屋だ。体が小さくなってる?」
侯爵子息のオメガには、アルファの王太子である婚約者がいた。
彼が気に入った平民オメガに嫌がらせしてたら、逆襲されてありもしない罪まで着せられ、処刑されたはずなのに。
傷ひとつない首を触っていると、メイドが朝の挨拶に来た。
「オメガ様、本日は王太子殿下に会いに行く予定では?」
「そうだっけ……やめた」
「え?」
「やめたって言ってるの。今日は部屋でゆっくりする」
日記を確認し、ちょうど王太子と平民が出会った頃だと知る。
(浮気野郎に執着したせいで、人生を棒に振るなんて馬鹿らしい。あんな男とは婚約解消して、趣味に生きよう)
元々の王太子のことは好きじゃなかったし、このまま会わずにいれば王太子は平民と結ばれるために、婚約破棄をもちかけてくるだろう。
もう王家を配慮し体面を気にする必要もないと、理想の温室作りにのめりこんだ。
季節が一つ巡った頃、王太子が平民オメガと共に、侯爵子息オメガの温室に乗り込んできた。
「おい、なぜ王宮に来ない⁉︎」
「これは王太子殿下。趣味に没頭しておりました」
「趣味だと?」
温室には溢れかえる程の花々が咲き誇り、貴重な新種もわんさか生えている。
「ああーっと大太子殿下? 今あなたが踏みそうになった花は、流行病の新薬として認められた植物でございます」
「なに?」
「後ろには触っただけで命を落とす、猛毒草が生えております。危険ですので、どうぞお引き取りを」
「待て! 私の大事なオメガを、階段から突き落としたのはお前だろう⁉︎」
「いつどこで?」
告げられた日は、他国に貴重な種をわけてもらうため旅行に出かけた時期だった。
「有り得ませんね。その日は他国にいました、国境の番人に問い合わせればわかるでしょう」
「なんだと?」
平民オメガを振り返ると、彼はびくりと肩を竦める。
「あの、でも、本当にあの人がやったと思ったんです」
「勘違いだ。そもそも動機がない」
「私が平民オメガを大切にするあまり、嫉妬したのではないのか?」
「嫉妬する理由がありません。王太子殿下、私は貴方のことを愛してはおりませんので」
「なっ?」
「婚約破棄でもなんでもなさってください。そこの方とどうぞお幸せに」
「……ふん、では好きに解消させてもらう」
王太子は平民オメガの肩を抱いて帰っていった。
入れ違いで来客があったと知らせを受け、温室へと通す。
客人である他国の王族アルファは、お忍び服のまま慣れた様子で温室へと入る。
「さっき王室の馬車とすれ違ったよ」
「ああ、ちょうど婚約解消を言い渡されたところだ」
アルファはオメガの元に歩み寄ると、熱っぽい視線で肩を寄せる。
「へえ。ではようやく俺にも、君を口説く機会が巡ってきたわけだ」
「……今は、研究したいので」
もう愛だの恋だのと、激しい感情に振り回されるのはうんざりだ。
「貴方には花の種を融通してもらったりと、いろいろ世話になりましたが。それとこれとは話が別です」
「安心しろ、恩着せがましく迫るつもりはない。正々堂々と口説き落とすから安心してくれ」
「ちっとも安心できませんが」
「ははっ、また来る」
ようやく国に帰ったと安心していたのに、数日後隣の国の王子から婚約を申し込まれたと、親から慌てて告げられる。
断ろうと会いにいったら、素晴らしい温室と研究室、それに貴重すぎる花々という餌を用意されていて。
「……全然正々堂々としていないじゃないですか」
「何を言う。君にはこれが一番効果的だろう?」
「まだ肝心な一言を聞いていないのですが」
じろりと睨みつけると、いつもは余裕たっぷりの笑みを浮かべるアルファは、赤面しながら咳払いをした。
跪いて、オメガの手をとる。
「君を愛している。結婚してくれないか」
「……しょうがない人ですね。いいですよ、もちろん研究は続けてもいいんですよね?」
「ぜひ続けてくれ、君の研究で両国の人間を豊かにしようじゃないか」
その後、平民オメガの性格の悪さと、オメガの有能さに気づいた元婚約者が引き止めにきたが、時すでに遅し。
元婚約者は素晴らしい功績を上げたオメガを失い、王から失望され王太子の座を剥奪せれた。
オメガは隣国王子アルファの手をとって、末長く幸せに、趣味の研究に没頭しながら過ごしたそうだ。
「ここは……僕の部屋だ。体が小さくなってる?」
侯爵子息のオメガには、アルファの王太子である婚約者がいた。
彼が気に入った平民オメガに嫌がらせしてたら、逆襲されてありもしない罪まで着せられ、処刑されたはずなのに。
傷ひとつない首を触っていると、メイドが朝の挨拶に来た。
「オメガ様、本日は王太子殿下に会いに行く予定では?」
「そうだっけ……やめた」
「え?」
「やめたって言ってるの。今日は部屋でゆっくりする」
日記を確認し、ちょうど王太子と平民が出会った頃だと知る。
(浮気野郎に執着したせいで、人生を棒に振るなんて馬鹿らしい。あんな男とは婚約解消して、趣味に生きよう)
元々の王太子のことは好きじゃなかったし、このまま会わずにいれば王太子は平民と結ばれるために、婚約破棄をもちかけてくるだろう。
もう王家を配慮し体面を気にする必要もないと、理想の温室作りにのめりこんだ。
季節が一つ巡った頃、王太子が平民オメガと共に、侯爵子息オメガの温室に乗り込んできた。
「おい、なぜ王宮に来ない⁉︎」
「これは王太子殿下。趣味に没頭しておりました」
「趣味だと?」
温室には溢れかえる程の花々が咲き誇り、貴重な新種もわんさか生えている。
「ああーっと大太子殿下? 今あなたが踏みそうになった花は、流行病の新薬として認められた植物でございます」
「なに?」
「後ろには触っただけで命を落とす、猛毒草が生えております。危険ですので、どうぞお引き取りを」
「待て! 私の大事なオメガを、階段から突き落としたのはお前だろう⁉︎」
「いつどこで?」
告げられた日は、他国に貴重な種をわけてもらうため旅行に出かけた時期だった。
「有り得ませんね。その日は他国にいました、国境の番人に問い合わせればわかるでしょう」
「なんだと?」
平民オメガを振り返ると、彼はびくりと肩を竦める。
「あの、でも、本当にあの人がやったと思ったんです」
「勘違いだ。そもそも動機がない」
「私が平民オメガを大切にするあまり、嫉妬したのではないのか?」
「嫉妬する理由がありません。王太子殿下、私は貴方のことを愛してはおりませんので」
「なっ?」
「婚約破棄でもなんでもなさってください。そこの方とどうぞお幸せに」
「……ふん、では好きに解消させてもらう」
王太子は平民オメガの肩を抱いて帰っていった。
入れ違いで来客があったと知らせを受け、温室へと通す。
客人である他国の王族アルファは、お忍び服のまま慣れた様子で温室へと入る。
「さっき王室の馬車とすれ違ったよ」
「ああ、ちょうど婚約解消を言い渡されたところだ」
アルファはオメガの元に歩み寄ると、熱っぽい視線で肩を寄せる。
「へえ。ではようやく俺にも、君を口説く機会が巡ってきたわけだ」
「……今は、研究したいので」
もう愛だの恋だのと、激しい感情に振り回されるのはうんざりだ。
「貴方には花の種を融通してもらったりと、いろいろ世話になりましたが。それとこれとは話が別です」
「安心しろ、恩着せがましく迫るつもりはない。正々堂々と口説き落とすから安心してくれ」
「ちっとも安心できませんが」
「ははっ、また来る」
ようやく国に帰ったと安心していたのに、数日後隣の国の王子から婚約を申し込まれたと、親から慌てて告げられる。
断ろうと会いにいったら、素晴らしい温室と研究室、それに貴重すぎる花々という餌を用意されていて。
「……全然正々堂々としていないじゃないですか」
「何を言う。君にはこれが一番効果的だろう?」
「まだ肝心な一言を聞いていないのですが」
じろりと睨みつけると、いつもは余裕たっぷりの笑みを浮かべるアルファは、赤面しながら咳払いをした。
跪いて、オメガの手をとる。
「君を愛している。結婚してくれないか」
「……しょうがない人ですね。いいですよ、もちろん研究は続けてもいいんですよね?」
「ぜひ続けてくれ、君の研究で両国の人間を豊かにしようじゃないか」
その後、平民オメガの性格の悪さと、オメガの有能さに気づいた元婚約者が引き止めにきたが、時すでに遅し。
元婚約者は素晴らしい功績を上げたオメガを失い、王から失望され王太子の座を剥奪せれた。
オメガは隣国王子アルファの手をとって、末長く幸せに、趣味の研究に没頭しながら過ごしたそうだ。
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